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運転資金 ファクタリング

運転資金の不足は、「ファクタリング」を検討すべし【中小企業・資金繰り110番】第1回

2020.12.05

企業経営をしている中では、いつも順風満帆にいくとは限りません。ある日突然、資金繰りがたち行かなくなる、そんな事態に見舞われたら、あなたはどうしますか?

本シリーズ『中小企業・資金繰り110番』では、筆者が実際に体験した事例を元に、資金繰りに関する経営危機において役立つ知識と方法を毎回説明していきます。

第1回は、入金の遅れによる資金ショートを回避するのに使える「ファクタリング」の利点と注意点についてです。

事例【運転資金の不足】予定した入金が遅れて支払いができない!

食品工場を営む株式会社A社は、父親が創業して40年の老舗であり、10年前から息子K氏が事業を引き継いでいます。引き継いだ直後は、父の長年培った取引先との関係性も良好であり、売上を維持していたものの、若年層の食生活の変化もあり、近年は売上が低迷している状況です。

そのような状況の中、今月20日に主要販売先のW社から25日入金予定の売掛金600万円について、支払期限を延長して欲しいとの連絡が来ました。今月の売掛金の入金予定は、25日はW社に対しての600万円以外に1,200万円、30日に800万円となっています。

A社は近年の売上低迷の影響により、仕入代金の大半を売掛金の入金をもって支払うようになっています。預金残高は減少傾向で400万円となっており、W社以外からの売掛金1,200万円の入金を合わせても、今月28日が支払予定となっている仕入代金2,000万円に対して資金不足の状態となっています。

W社売掛金600万円の支払いがなければ、25日の仕入代金2,000万円の決済ができません。金融機関からの借入は既に多額になっているため、金融機関から不足資金を借入できる可能性は低くなっています。また、入金期限延長の通知が仕入代金決済日の5日前で時間的な制約があります。

運転資金を捻出する2つの方法

K氏はこの苦境を乗り切るために、2つの方法を思いつきました。これらを実施した場合、それぞれどのような結果となるでしょうか。筆者の経験をもとに、仮定してみます。

① 仕入先に仕入代金の支払い猶予を依頼して取引先からの入金を待つ

K氏は、各仕入先に事情を話し、代金の支払期限を猶予してくれるように頼みました。父の代から取引が続く取引先が多く、長年の関係性から支払期限の延長には渋々了承してくれました。その後、W社から売掛金が入金し、その資金をもって各仕入先への支払いをすることができました。

不払いを避けることはできましたが、今回の件で主要仕入先の当社に対する与信が低下し、取引量が制限されることになりました。食品材料の仕入量及び生産量が減少し、結果として、それ以降の売上高が伸び悩むこととなりました。

② ファクタリングを利用して売掛金を現金化する

K氏は、仕入代金の入金のために資金調達を考えました。金融機関からの借入は、時間的な制限があり与信枠が少ないことから、その他の方法を模索したところ、『ファクタリング』という手法をあることを知りました。30日入金予定の売掛金の一部をファクタリング会社に売却し、仕入代金の決済に充当することができました。

このファクタリングでは「2社間ファクタリング」を利用し、A 社とファクタリング会社で完結する取引となったため、ファクタリング対象となった売掛債権の相手先にも知られずに普段通りの取引を進められています。

資金不足だけでなく今後のリスクを考慮する

2つの方法はどちらも結果的に仕入代金の支払いを完了しています。しかし、①では対外的にA社の資金繰り事情を知られてしまう方法であり、②では内部だけで処理できた方法となっています。

① は、仕入先に事情を話すことで支払期限の延長を受諾してもらっているのですが、自社の資金繰り事情を取引先に明かすことによる影響として、取引与信枠(※1)の引き下げにつながる可能性があります。必要な量の材料を調達できないことにより、受注に対応できず機会損失(※2)が生じるおそれがあるため、この方法にはリスクが伴います。

② は、仕入先に自社の内情を知られずに期限内で決済できています。ファクタリングを実施することによって早期に現金化できるものの、5%~20%程度の手数料が掛かること、また、翌月の支払資金を今月の支払いに充てていることになるため、翌月の資金繰りが悪化する可能性があることに留意してください。

ファクタリングとは

ファクタリングとは、会社が有する売掛金をファクタリング会社に売却することにより、入金期日よりも早期に現金化できる資金調達方法です。ファクタリングは売掛先の信用力を審査の対象とするため、自社の信用力に不安がある場合に有用です。ファクタリングの種類には、2社間と3社間のものがあります。

2社間ファクタリングは、売掛金の保有会社とファクタリング会社で取引が完結します。売掛金をファクタリング会社に売却後、売掛金が期日に入金されたときにファクタリング会社に代金を支払います。2社間で取引を行うので、売掛先には知られずに現金化することができ、3社間に比べて早期に調達できるのが特徴です。

一方、3社間ファクタリングは、売掛金保有会社とファクタリング会社と売掛先で取引を行います。売掛先の同意が必要となるため、2社間と比べて調達に時間が掛かりますが、ファクタリング会社のリスクが軽減するため、通常は手数料が低く設定されます。

資金繰りのポイント

自社の資金繰りを検討する場合、業種や借入状況によっても異なりますが、まずは月商の1ヶ月分以上の現預金を保有しているかどうかを目安とすることができます。

売上による収入で1ヶ月分の支出を賄うことができているとすると、仮に売掛金の全額が支払われなかったとしても、1ヶ月の時間的余裕を作ることができます。

今回の事例においても、月商に相当する2,600万円の預金残高があれば、手持ちの預金で支払いが可能でした。中小企業においては、節税対策に躍起になり、必要資金まで消費してしまっていることも少なくありません。

預金残高と月商を比較する方法は、単純ですがすぐに確認できるため、財務の健全性の定期的な確認方法として有用な指標だと考えています。資金繰りの詳細な検討方法につきましては、別の機会に紹介したいと思います。

※1 取引金額の上限のこと。
※2 本来得られるはずの利益を得られなかったことによる損失。

*Graphs / PIXTA(ピクスタ)