登録

会員登録いただけると、

  • メールマガジンの受け取り
  • 相談の広場への投稿 等

会員限定のサービスが利用できます

登録(無料)を続ける
TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 今、中小企業にも女性活躍推進が求められている!進め方から助成金まで解説
今、中小企業にも女性活躍推進が求められている!進め方から助成金まで解説

今、中小企業にも女性活躍推進が求められている!進め方から助成金まで解説

企業規模にかかわらずキーワードとなっている“女性活躍推進”。『女性活躍推進法』(正式名称『女性の職業生活における活躍の推進に関する法律』)の改正により、2022年4月から、常時雇用する従業員が101人以上の企業には、一般事業主行動計画の策定と労働局への届出、及び、自社の女性活躍に関する情報公表が義務付けられることとなりました。

2021年6月時点では従業員が301人以上の企業が義務の対象ですが、その対象範囲が大きく広がったことにより、中小企業にとっても女性活躍推進にかかる取り組みは看過することができないものとなっています。

そこで本記事では、具体的にどのような取り組みが“女性活躍推進”の観点から求められているのかを整理します。

まずはここから!女性活躍推進法の概要

『女性活躍推進法』は、女性が職業生活においてその希望に応じて十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備することを目的として、2015年8月に制定されました。同法に基づき、事業主は、(1)自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析、(2)状況把握・課題分析を踏まえた行動計画の策定・届出・公表、(3)女性の活躍に関する情報の公表を行うことされています。冒頭で記載した通り、同法の改正により、2022年4月以降、従業員数100人以下の企業は努力義務、101人以上の企業は義務の対象です。

【もっと詳しく】努力義務とは?

また、行動計画の届出を行い、さらに女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良な企業は、申請により厚生労働大臣の認定(『えるぼし認定』)を受けることができます。

認定を受けた企業は、厚生労働大臣が定める認定マーク『えるぼし』を商品などに付すことができます。なお、上記改正に伴い、取り組みの実施状況が特に優良な企業に対し、現行の『えるぼし認定』よりも水準の高い『プラチナえるぼし』認定が創設されています。

どのような数値を把握・公表するのか?

では、どのような項目をもとに自社の女性の活躍に関する状況を把握すれば良いのでしょうか。次の4項目が状況把握の必須項目となっています。

(1)採用した労働者に占める女性労働者の割合(女性採用比率)
(2)男女の平均継続勤務年数の差異(勤続年数男女差)
(3)労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況(労働時間の状況)
(4)管理職に占める女性労働者の割合(女性管理職比率)

また、女性の活躍に関する情報については、次の(1)と(2)の区分から、それぞれ1項目以上選択肢、2項目以上を公表することとされています。

(1)女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
・採用した労働者に占める女性労働者の割合
・男女別の採用における競争倍率
・労働者に占める女性労働者の割合
・係長級にある者に占める女性労働者の割合
・管理職に占める女性労働者の割合
・役員に占める女性労働者の割合
・男女別の職種又は雇用形態の転換実績
・男女別の再雇用又は中途採用の実績

(2)職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備
・男女の平均継続勤務年数の差異
・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
・男女別の育児休業取得率
・労働者の一月あたりの平均残業時間
・雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間
・有給休暇取得率
・雇用管理区分ごとの有給休暇取得率

なお、状況把握の必須項目につき、女性の活躍推進に関する状況が優良な事業主に認定される『えるぼし』の認定基準は次の通りです(著者により一部簡略化)。自社の課題分析のご参考にしてください。

(1)女性採用比率
・男女別の採用における競争倍率が同程度であること(直近3事業年度の平均した“採用における女性の競争倍率 ×0.8”が、直近3事業年度の平均した“採用における男性の競争倍率”よりも雇用管理区分ごとにそれぞれ低いこと)
または
・直近の事業年度において、正社員に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値*1(平均値が4割を超える場合は4割)以上であること。

(2)勤続年数男女差
・直近の事業年度において、次の(i)と(ii)どちらかに該当すること。
(i)女性労働者の平均継続勤務年数÷男性労働者の平均継続勤務年数が雇用管理区分ごとにそれぞれ7割以上であること
(ii)女性労働者の継続雇用割合÷男性労働者の継続雇用割合が雇用管理区分ごとにそれぞれ8割以上であること
※上記を算出することができない場合は、以下でも可
・直近の事業年度において、正社員の女性労働者の平均継続勤務年数が産業ごとの平均値*1以上であること

(3)労働時間の状況
・雇用管理区分ごとの労働者の法定時間外労働及び法定休日労働時間の合計時間数の平均が、直近の事業年度の各月ごとにすべて45時間未満であること

(4)女性管理職比率
・直近の事業年度において、管理職に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値*1以上であること
または
・直近3事業年度の平均した1つ下位の職階から課長級に昇進した女性労働者の割合÷直近3事業年度の平均した1つ下位の職階から課長級に昇進した男性労働者の割合が8割以上であること。

一般事業主行動計画はどのように策定・届出するのか?

一般事業主行動計画には、(a)計画期間、(b)数値目標、(c)取組内容、(d)取組の実施時期を記載します。策定した行動計画は、社内の全ての従業員に周知するとともに、厚生労働省が運営する『女性の活躍推進企業データベース』*2や自社のホームページなどに掲載する方法で外部に公表します。

加えて、管轄の都道府県労働局に届出を行います。策定にあたっては、『一般事業主行動計画策定支援マニュアル』*3も参考にされると良いでしょう。

助成金やアドバイザー制度を上手に活用して女性活躍推進策を

政府が力を入れている女性活躍推進策の実施にあたっては、中小企業を対象としてさまざまな助成金やアドバイザー制度が設けられています。記事末尾に関連リンクをまとめているので、あわせてご参考にしてください。

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)

行動計画に盛り込んだ取組内容を実施(=“取組目標”を達成)し、3年以内に数値目標を達成した場合に支給。
・支給額:47.5万円(60万円)1事業主1回限り
・対象事業主:常時雇用する労働者が300人以下の事業主

女性活躍推進アドバイザーによる個別企業訪問支援&電話・メール相談

専任の女性活躍推進アドバイザーが、女性活躍に関する状況の把握や課題の分析、女性活躍推進法に基づく“一般事業主行動計画”の策定と届出まで一貫して支援。

・対象事業主:常時雇用する労働者数300人以下の中小企業

(東京都内の事業者が対象)女性の活躍推進助成金

トイレ、更衣室等、女性の新規採用・職域拡大を目的とした設備等の整備を支援するため、費用の一部を助成。

・支給額:最大500万円(助成対象経費の2/3)
・対象事業主:常時雇用する労働者が2名以上300名以下で、都内に本社または事業所を置く中小企業等

義務化の対象であることに加えて、女性が働きやすい職場作りは、人手不足の解消や生産性向上の大きな一手です。助成金等を上手に活用して、自社の基盤を整える契機としてみてはいかがでしょうか。

【参考】
*1 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく認定制度に係る基準における「平均値」について(2020年5月29日) – 厚生労働省
*2 女性の活躍推進データベース – 厚生労働省
*3 一般事業主行動計画策定支援マニュアル – 三菱UFJリサーチ&コンサルティング
両立支援等助成金(女性活躍加速化コース) – 厚生労働省
女性活躍推進アドバイザーによる個別企業訪問支援&電話・メール相談 – 厚生労働省
女性の活躍推進助成金 – 東京しごと財団

* EKAKI / PIXTA(ピクスタ)