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最低賃金引上げ

実務対応や助成金は?2021年度の「最低賃金引上げ」を徹底解説

2021.09.06

2021年7月14日に最低賃金の引上げが発表されました。ニュースでも報道されたので、ご存じの方も多いでしょう。会社を経営する立場であれば、このニュースを受けて「自社も賃金を引き上げる必要があるのか?」「今後のさらなる賃上げが続くのだろうか……」など悩みがつきないことかと思います。

本記事では、2021年10月頃から適用が予定される最低賃金引上げをテーマに、中小企業への影響や実務対応について解説します。賃金引上げに関わる助成金についても紹介しますので、参考にしてみてください。

※最終更新:2021年9月

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2021年度の最低賃金の引き上げ

厚生労働大臣の諮問機関である中央最低賃金審議会の小委員会で、2021年度の最低賃金の目安を全国平均で時給902円から930円へ引き上げることを決定しました。引き上げ幅は3.1%です。2002年度から最低賃金を時給で示すようになって以降、今回の全国平均28円という引き上げ額は過去最大になります。

実際の最低賃金は、この目安に基づいて各都道府県がそれぞれ決めることになります。10月頃に新しい最低賃金が適用されます。

日本商工会議所は、地域別最低賃金改定に対する下記のコメントを提言しています(一部抜粋)。

最低賃金は全ての企業に一律に強制力をもって適用されることから、長引くコロナ禍により飲食業や宿泊業を中心に極めて厳しい業況の企業が多い今年度については、なお事業の存続と雇用の維持を最優先にすべき状況であることを踏まえ、「現行水準を維持」することを強く主張してきた。

東京で4回目となる緊急事態宣言が発出されるなど、先が見通せない経済情勢の中、昭和53年度の目安制度開始以降で最高額となる大幅な引上げとなったことは極めて残念であり、到底納得できるものではない。中小企業・小規模事業者の窮状、とりわけ困窮している飲食業や宿泊業などの事業者の実態や痛みを理解していない結論と言わざるを得ない。多くの経営者の心が折れ、廃業が更に増加し、雇用に深刻な影響が出ることを強く懸念する。

なお、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大が経済に大きな影響を与えたとして、同委員会はそれまでの水準に据え置く方針を示し、各都道府県に判断を委ねていました。審議会が目安を示さなかったのは、リーマンショック後の2009年度以来11年ぶり。各都道府県が実情を踏まえて議論した結果、40県が1円から3円の引き上げ、これにより、昨年の全国の加重平均は時給902円と前年度より1円上昇しました。

知っておきたい!世界の最低賃金の傾向

ここで、世界の他の国と最低賃金を比較してみましょう。『OECD』*(経済協力開発機構)が発表した2020年のデータでは、世界の最低賃金ランキングは、下記と通りとなっています。

1位 オーストラリア(12.9ドル)
2位 ルクセンブルグ(12.6ドル)
3位 フランス(12.2ドル)
4位 ドイツ(12.0ドル)
5位 ニュージーランド(11.8ドル)
6位 オランダ(11.3ドル)
7位 ベルギー(11.2ドル)
8位 イギリス(11.1ドル)
9位 カナダ(10.5ドル)
10位 アイルランド(10.3ドル)

日本は14位で8.2ドルで、12位の韓国8.9ドルより低い統計となっています。世界的にみると最低賃金が高くない日本ですが、国際的に最低賃金は上昇する傾向にあり、今後、日本の最低賃金もさらに上昇していくことが考えられます。

なお、この統計の『実質最低賃金』とは、その国の景気と連動したものです。各国の賃金額を物価指数で割った値で、その国ならではの値打ちを表しており、日本の最低賃金法の最低賃金とは異なります。インドや中国は含まれてはいません。

*『OECD』とは、ヨーロッパ諸国を中心に、日本やアメリカが加入している国際機関です。

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賃金引き上げで影響を受ける業種

では、どのような企業が影響を受けやすいのでしょうか? 中小企業は、少なからず影響を受けると考えられます。過去の調査から影響を受けやすい業種をみてみましょう。たとえば、2020年に発表された愛知労働局の調査により、最低賃金が下回っていた業種や雇用形態が公開されています。

同局が県内の事業所509カ所に対して行った発表監督・指導調査では、21.0%に当たる107事業所で最低賃金を下回る最低賃金法違反があったとされています。業種は、食品や衣類販売など卸小売業が25.0%と最も多く、旅館など宿泊業・飲食サービス業22.9%、製造業20.8%クリーニングや理美容業の生活関連サービス業、娯楽業11.2%と続いています。雇用形態別で最低賃金を下回っていたのは、パートが78.3%、アルバイトが20.7%で雇用調整のしわ寄せを受けやすい非正規雇用の社員が大多数といえます。

この調査から、パートやアルバイトなどの非正規雇用が多いとされる、サービス分野においては最低賃金を下回る傾向があり、今回の最低賃金引上げにおいても影響を受けやすいといえるでしょう。上記で挙げた業種に関わらず、非正規雇用を行っている企業では特に、従業員の賃金が、今回の賃金引上げで新たに適用される最低賃金を下回らないか注意したいところです。

どうしたらいい?賃金引上げ対応手順

実際に、賃金引上げを行う手順を説明します。まず、どの最低賃金が適用されるかを確認する必要があります。最低賃金には、都道府県ごとにすべての労働者および使用者に適用される“地域別最低賃金”と都道府県ごとに特定の産業に従事する労働者および使用者に適用される“特定最低賃金”があります。“地域別最低賃金”と“特定最低賃金”が同時に適用される場合には、高い方の最低賃金額以上の賃金を支払いしなければなりません。

また、最低賃金の対象とならない賃金も定めてられています。下記の賃金は、最低賃金には算入せずに計算する必要があるので、注意しましょう。

・結婚手当など臨時に支払われる賃金
・賞与など1か月を超えるごとに支払われる賃金
・時間外、休日、深夜割増賃金など
・精皆勤手当、通勤手当、家族手当など

適用される最低賃金を確認したら、従業員の時間給がそれ以上であることを確認します。時間給は下記の方法でチェックできます。時間給で支払っている場合は分かりやすいですが、日給や月給で支払っている場合は時間給を割り出す必要があります。

・時間給≧最低賃金額
・日給÷1日の平均所定労働時間=時間額≧最低賃金額
・月給÷1か月の平均所定労働日数=時間額≧最低賃金額

分かりやすいように、例を挙げておきましょう。例えば、基本給160,000円で交通費8,000円の従業員が、月の所定労働時間168時間で勤務していたとします。この従業員に適用される最低賃金は、大阪府最低賃金の964円(2021年8月現時点)だとします。

基本給のみ対象になりますので、計算すると時間給は952円(160,000円÷168時間=952円)となります。この時間給は、大阪府の最低賃金の964円を下回るため見直しが必要、ということになります。

今回の賃金引上げは、10月に改定が予想されているので、現状の従業員の賃金が最低賃金額を下回る場合には、それまでに賃金を引き上げるようにしましょう。

賃金引上げに関わる「業務改善助成金」とは?

賃金引上げに関わる企業への助成金として『業務改善助成金』があります。

『業務改善助成金』とは、生産性を向上させ、事業内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを計る中小企業・小規模事業者を支援する厚生労働省の助成金です。令和3年8月1日から特例的な要件の緩和・拡充措置が行われています。

支給対象は、労働者数が100人以下、および、事業場内最低賃金と地域最低賃金の差額が30円以内をみたす事業所となります。生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上の引上げた場合、その設備投資(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)などにかかった費用の一部を助成します。

下記の表の通り、5つのコース区分があります。引き上げ額に応じて、20円以上・30円以上・45円以上・60円以上・90円以上のコースがあり、引き上げる労働者数に応じて、20万円から最大600万円までの受給になります。

 

生産性向上に資する設備・機器の導入例

生産性向上のための設備投資として、厚生労働省では以下のような導入例を紹介しています。

・POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
・リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
・顧客・在庫・帳簿管理システムの導入による業務の効率化
・専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上

厚生労働省が公開している『業務改善助成金のご案内その1<概要編>』(下記の動画)では、助成金の概要から活用事例までが分かりやすく紹介されているので、ぜひ参考にしてみてください。

申請の流れ

実際の申請の流れは、下記の通りです。

(1)事業改善計画と賃金引上げ計画を記載した『助成金交付申請書』の提出
(2)計画の認定がされ、労働局から『交付決定書』を受領
(3)生産性向上に関する機器などの導入を行い業務改善を行う
(4)事業内最低賃金を一定額以上に引き上げる
(5)『事業実績報告書』を提出する

設備の納品や経費の支出などの設備投資等は、必ず交付決定書を受け取ってから行うようにしましょう。受領前に行うと助成金が受け取れません。

手続きの流れについては、厚生労働省が公開している『業務改善助成金のご案内その2 <手続き編>』(下記の動画)で詳しく説明されています。こちらもぜひ参考にしてみてください。

本記事では、2021年10月頃から適用が予定される最低賃金引き上げをテーマに、中小企業への影響や実務対応について解説しました。まずは、自社の従業員に適用される最低賃金を確認し、最低賃金引き上げ後も、現状の賃金で問題ないか確認してみましょう。

そして、長期的にみると、今後も最低賃金が引き上げられていくことが予想されます。これをふまえて検討すべき課題は、次の2つです。“自社で賃上げするとしたら、どのような規模でいつするのか”、“生産性向上のためにどのような設備をいつ導入するのか”。2021年年8月1日から『業務改善助成金』にて、特例的な要件の緩和・拡充措置が行われました。生産性を向上させて、雇用環境を改善するためにも『業務改善助成金』を検討してみてはいかがでしょうか。

【参考】
最低賃金の履行確保に係る監督指導結果』/厚生労働省愛知労働局
Real minimum wages』 / OECD(経済協力開発機構)
業務改善助成金について』 / 厚生労働省

* makaron* / PIXTA(ピクスタ)

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