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成長段階別課題と解決策

創業期、成長期、成熟期…中小企業の成長ステージ別!よくある課題と解決方法

とあるITベンチャー企業のオーナー社長のつぶやきです。

「最近、社内に以前のような活気がない気がする……」
会社を立ち上げたのが約5年前。創業メンバーとともに、独自のミッションやビジョンを作り上げ、参画する新入社員を募ってきた。
どうにかこうにか、社員や売上げは右肩上がりで成長してきている。しかし最近は以前のように社員が一致団結して動く様子が感じられない。
「業績は上がってるのに、なぜ? どのように手を打てばいいのか……」

このような課題を感じている中小企業の経営者は少なくないのではないでしょうか?

今回は中小企業が成長していくプロセスで直面する、典型的な人と組織に関する課題とその解決策を取り上げます。「組織拡大に伴い、今までのやり方が通用しなくなってきた」、「社内がかつてのようにスピーディに動かない」などのお悩みをお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。

企業の成長ステージとは

人間が生まれてからいくつもの発達段階を経て成長するように、組織にも成長や発展の段階が存在します。

特に少数精鋭で事業運営を行っている中小企業では、急激な規模の拡大などが起こると、これまでの成功パターンが通用しなくなる事態に遭遇しがちです。

今回は人と組織課題に課題が生じやすいステージを“創業期”、“成長期”、“成熟期”、“最適期”に区切って解説します。なお、このステージはラリー・E・グレイナー氏が1979年にハーバードビジネスレビューに発表した『5段階企業成長モデル』を参考にしています。

課題解決のポイントは、今いるステージではなく“次のステージに進もうとする直前”に着目することです。実は多くの企業は、事業が次のステージに移行しようとする段階で“ひずみ”ともいえる課題のサインが潜んでいるのです。

「創業期」に発生しやすい課題と解決策

創業期(~成長期)は事業立ち上げ間もない時期です。創業5年以内、従業員は数人程度の企業が該当します。志を同じくする数名で事業を立ち上げ、徐々に組織の形を整えていく創業期に発生しがちな課題にはどのようなものがあるでしょうか。

発生しやすい課題

創業期は、システムや社内ルールが未整備である企業がほとんどです。しかし、創業メンバーが数人であれば、暗黙のうちに会社の方向性や優先順位が共有できています。明確なルールがなくとも、商品開発や市場での売り込みに全力で向かうことができるのです。

しかし、規模の拡大に伴い、少人数での経営の限界という“ひずみ”に直面します。事業規模の拡大に対応する新メンバーが増え、これまでの“暗黙知”が通用しない状況に陥るからです。

解決策

このひずみを乗り越えるには、経営者の考えの明確化と発信が必要になります。労務など法規の整備も重要ですが、ビジョンや経営ポリシーの言語化は優先順位が高いポイントです。

具体的には
・企業のホームページを整備し、ミッション・ビジョンを公開する
・採用の募集要項を埋められるほど、“求める人材像”を明確にする
・新しく参加したメンバーに企業ポリシーなどを説明する場を設ける
などを積極的に行ってください。

創業期の事業拡大に伴い、新しく参加してくれるメンバーは、事業の成長や発展に対し創業初期からのメンバーに準ずる心意気を持っているはずです。細かい業務プロセスやルールが未整備だったとしても、会社として「これだけは叶えたい」というビジョンや、「こういう進め方が自社らしい」というポリシーに共鳴が得られてさえいれば、ある程度自律的に組織は回っていくのです。

「成長期」に発生しやすい課題と解決策

成長期(~成熟期)は事業が急成長する時期です。従業員数は20名以上で、事業が軌道に乗り商品やサービスへの問い合わせが増え始めます。売上額、社員数やクライアント数など、これまで経験していない規模で事業はスケールアップしていく段階です。

発生しやすい課題

成長期は急激に規模拡大が進むため、一部の社員に負荷のしわ寄せがおこることが多いです。

いわゆる花形選手のようなメンバーが、属人的に事業を推進していく状態です。また、マネジメント不足も成長期には顕著な課題となります。少ないマネジメントで多くのメンバーを抱える事態になるでしょう。

しかし属人的な経営は、一歩間違えると不安定な状態に陥りがちです。業務の大半を担っていた社員が休んだだけで、他の社員は何をどう進めていいかわからず、途方に暮れることになります。場合によっては花形選手が他社に引き抜かれ、クライアントの離反につながることも。このように、事業存続にインパクトを与えるダメージになりかねません。

解決策

このひずみを乗り越えるには、社内のルール化や体系化など体制強化を行う必要があります。

しかし、急拡大する現場で、走りながらルール整備をするのは容易ではありません。事業成長に伴い予算に余力があれば、外部のパートナーを短期で雇い、ルール整備やナレッジマネジメントのアウトソーシングをすることも視野にいれましょう。

具体的には
・営業・開発などのセクションごとに業務の標準マニュアルを作成する
・人事制度ハンドブックや運用マニュアルを作成し、社員の育成体制を構築する
・社内のイントラネットや掲示板に遵守すべき法規ルールを公開する
などを積極的に行ってください。

同様に、既存メンバーからマネジメントを育成するパワーがない場合は、外部からマネジメント経験者を採用することも一手段です。ただしこの場合も、内部でマネジメント育成ができる体制を整えることも並行して行ってください。

「成熟期」に発生しやすい課題と解決策

成熟期(~最適期)は事業が安定する時期です。商品やサービスのバリエーションが増え、広告費の比重が高くなりやすいです。全国展開や海外展開も始まり、株式上場などを検討する企業が該当します。一通り会社としてのルールやシステムが整備され、既存事業は盤石な経営基盤として機能しはじめた段階の課題とはどのようなものでしょうか。

発生しやすい課題

成熟期は、社員の行動は体系化され、賃金や評価など決まった制度に則って組織運営が行えます。事業が安定したからこそ、経営としては既存事業以外の新規ビジネスを狙うことも多いでしょう。

しかしルール化が行き過ぎてしまい、社員の行動や発想が小粒になり、新しいビジネスの種が見つからないジレンマに陥るケースがあります。また組織の体系化が進んだことで、組織をまたいだ案件などの意思決定や実行スピードが落ちることもあります。

解決策

このひずみを乗り越えるには、経営者からの強いメッセージと象徴的な制度改定が必要となります。

具体的には
・新規事業開発を後押しするような“新事業コンテスト”を開催する
・人事評価制度に“独創性”、“発想・アイデア”など推奨したい項目を追加する
・新規事業推進のプロジェクトメンバーを挙手制で社内から募集する
などを積極的に行ってください。

また、組織間連携が上手くいってない場合は、経営層のみのワークショップなどを行い、次の会社の発展のために経営陣が一枚岩になることも重要です。

このステージの解決策の実施には時間がかかることが多いですが、最終的には一人ひとりの自律した行動が期待できるようになります。そうすることで、いわゆる“ティール組織”と呼ばれる“階層的な指示命令系統はなく、組織目的の実現のためメンバー全員が独自のルールや仕組みを工夫する組織”に近づいていくでしょう。

まとめ

“ひずみ”というとネガティブな印象を抱くかもしれませんが、これは人間でいうところの“成長痛”のようなものです。事業が同じステージに留まっている限りは、“ひずみ”も起こらないからです。

人間の成長痛は放置しておいても時間と共に解消されていきますが、組織の成長痛は放置しておくと徐々に悪化していきます。

今回ご紹介したように、次のステージに移行しようとしている段階に目を向けることが、早期解決の秘訣です。“ひずみ”を見かけたら、次の成長への“兆し”と思い、前向きに対処するようにしてください。

【参考】
『Evolution and Revolution as Organizations Grow』 /  Harvard Business Reviews

* metamorworks / PIXTA(ピクスタ)