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育休の欠員をカバーする

育休の欠員をどうカバーする?社員の負担を減らすための対策と復職者への対応

2021.11.24

ワーク・ライフ・バランスや働き方改革が推奨される中、出産や育児をしながら働くことを選択する女性が増加しています。昨今では、男性が育児休業を取得することが推奨されていることもあり、育児休業の取得する社員はさらに増加していくでしょう。

しかし、企業規模の小さい中小企業では、社員一人ひとりが抱える比重が大きいこともあり、育児休業中の社員が欠けた部分の仕事をどのようにこなしていくか、という問題もあるのではないでしょうか?

今回は、社員が育児休業を取得することで企業にはどのような影響が生じるか、また育児休業制度による欠員が生じている職場の負担をどのように軽減するか、さらに育児休業から復職した社員への対応内容についても、あわせて解説をしていきましょう。

育休制度による会社の影響とは?

育児休業とは、男女問わず、子育てをしながら働く社員が取得することのできる休業のことです。

2021年に育児・介護休業法という法律が改正され、男性の育児休業取得を促進するための制度や、育児休業の分割制度の導入など、より多くの社員が育児休業を取得しやすいような環境づくりが行われています。

【こちらの記事も】改正育休法で「男性の育休制度」はどう変わる?

育児休業制度による会社へのメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット1:保険料負担を免れる

育児休業中の社員に関する保険料負担を免れることができます。まず、月々の給料については、ノーワークノーペイの原則により、支払う義務はありません。そのため、給料額に応じて算出される雇用保険料や労災保険料も発生しないことになります。さらに、社会保険料についても、手続きを行うことで免除対象となります。つまり、会社側では育児休業中の社員の生活保障を行う必要がなく、育児休業を取得した雇用保険に加入している社員は、国から支給される育児休業給付を受けながら生活をすることになります。社会保険料免除について知りたい方はこちら

メリット2:人材の長期育成ができる

育児休業を取得する社員が増加することで、出産や育児を理由に退職する社員が減少し、長期的に社員をキャリアアップさせる体制を整えることができます。仕事のスキルは一朝一夕に身につくものではなく、日々の経験が大きな影響を及ぼします。育児休業を経て働き続ける社員が増加することで、長期にわたり社員のキャリア形成を行うことが可能になり、会社全体のステップアップへとつながるでしょう。

デメリット1:欠員により社員に負担がかかる

社員が育児休業を取得すると、当然ながらその社員は欠員となり、残った社員の負担がかかります。自身が行う業務に加え、数ヶ月から数年に及び欠員となる社員がこなしていた業務も行わなければならず、日々の仕事状況に影響があることが予想されます。

デメリット2:組織の体制に影響が出る

メンバー同士で補える業務もありますが、管理職など、組織の管理体制において重要なポジションの社員が育児休業を取得する場合もあります。そうなると、指揮命令を行う立場の者がいなくなることから、業務に影響がある可能性があるでしょう。

育休制度での欠員による社員の負担を減らすためには?

欠員社員をカバーする周囲の社員の負担を軽減するためには、どうすればよいのでしょうか?

1:業務の軽量化・効率化をする

社員が育児休業を取得する前の段階で現在の職場状況を把握し、体制を整える必要があります。まず、育児休業を希望する社員の業務内容をひと通り洗い出すことが必要です。業務の内容をすべて列挙してもらい、それを種別ごとに分類した上で業務のボリュームを算出します。

ここで重要なことは、種別ごとに分類した業務内容を重要性や頻度順に並べ替えることです。この作業を行うことで、他の社員に割り当てる重要性の高い業務を見つけることが容易になります。さらに、重要性が低い業務については、本当に必要な業務かどうかを検討した上で、必要に応じて削減や業務そのものを無くしてしまうという選択をすることができます。

会社側もこの機会を面倒ごととは捉えず、必要のない業務をなくしたり、業務の効率化を行ったりするよいタイミングだと考えましょう。業務効率化について詳しく知りたい方はこちら

2:助成金を活用して代替要員を確保する

育休を取得する社員の業務量が多い場合は、周囲の社員で業務をカバーし続けることで、残業がかさみ、最終的には心身に支障をきたす危険性があります。そこで、育休で欠員する期間、別の社員を雇用する方法も考えられます。激務により社員のモチベーションが下がり、業務の進捗に影響が生じる場合もあることから、残された社員でのカバーが難しいと判断したら、新たに社員を補充することも検討しましょう。

両立支援等助成金』の育児休業等支援コースでは、育休の円滑な取得・職場復帰のため取組みを行った企業に向けて、代替要員確保時の支援を行っています。金額は対象者一人当たり47.5万円、生産性要件を満たした場合は60万円です。このような支援もうまく活用することをおすすめします。

3:両立支援プランナーへの無料相談を活用する

厚生労働省では、社員が出産や育児を理由に離職することなく、継続して働き続けられるよう、取組みを行いたいと考えている企業に向けて支援を行っています。中小企業における育休復帰のノウハウを持つ、社会保険労務士・中小企業診断士などの“仕事と家庭の両立支援プランナー”が訪問し、無料でアドバイスを行います。また、厚生労働省が定めるマニュアルをもとに、『育休復帰支援プラン』の策定も支援します。

育休の取りやすい体制を整えたい、でも何から手を付けていいのかわからない……そんなお悩みがある会社は、“仕事と家庭の両立支援プランナー”に相談(無料)してみるとよいでしょう。

4:負荷がかかる社員のケアを忘れない

家庭と仕事の両立に励む社員がいる一方で、独身や子供をもたない社員には、欠員の負担のしわ寄せがきやすいことを忘れてはいけません。特定の社員への負荷が大きくなると、「独身は損している」といった不満や、育休を取得する社員へのマタニティーハラスメント(マタハラ)につながる恐れもあります。面談時ではこの視点から業務量についてヒアリングをしたり、頑張りを評価等に反映したりと、メンタルや待遇面で配慮するようにしましょう。

復職する社員の取り扱いの注意点

育児休業を取得する社員は、これまでの仕事生活とは全く異なる環境に置かれながら生活をしている状況になります。したがって、復職する際にはさまざまな不安を抱えたり、復職後も育児休業取得前のようなペースで業務をこなすことができず、悩んだりするケースが考えられるでしょう。このような状況を防ぎ、復職した社員が安心して働くことができるようにするためにも、以下の点を心がけましょう。

1:育休中の社員とコミュニケーションをとる

会社側は社員が育児休業を取得している時期から、積極的にコミュニケーションを取っておくことが重要です。定期的に会社の状況や社内異動や入社・退社情報などを知らせることで、社員は自分が忘れられていないということを実感することができるでしょう。

また、育児休業を取得中に、今後のスキルアップのために何らかの資格を取得したいという考えを持つ社員も中にはみられます。このような場合に対応するため、教育プログラムの紹介やOA機器を貸し出す制度を組み込む方法も有効となるはずです。昨今ではコロナ禍の影響もあり、在宅でさまざまなスキルアップをするための取組みが実施されていますので、会社の業態や規模に応じて、最新のスキルアッププログラムを調べておくとよいでしょう。

2:復職前に希望の働き方をヒアリングする

実際に社員の復帰が迫って来た時期には、復帰後の働き方について事前に話し合う必要があります。意見の相違がないよう、メールやSNSではなく、直接・オンラインによる面談を実施し、互いの顔が見えるような状況で話し合うことでトラブルを防ぐことができるでしょう。

育児休業前とは社員が抱える状況が変わっていることもあるため、会社側では今後実際に職場復帰をした際に希望する働き方をヒアリングし、社員が無理なく業務を進めることができるような配慮を行う必要があります。

復職前とは部署を異動させた方が良いのか、業務内容はどうするか、短時間勤務の希望や残業を希望しない旨の申し出があるか否かを、一つずつ丁寧に確認していきましょう。

3:復職後の労働条件や働き方に注意する

育児休業から復帰した社員を本人の意思に反して降格させたり、給料額を減らしたりすることは労働条件の不利益変更とみなされ、トラブルにつながる恐れがあります。また、3歳に満たない子供をもつ社員が要望した場合、会社は所定労働時間を超えて労働させてはいけないと育児・介護休業法で定められていますので、希望があれば対応が必要です。復帰後の社員に認められている権利についても把握しておくことで、復職後の社員が安心して働けるようにしましょう。

まとめ

社員が安心して育児休業を取得し、復帰できるような環境を整えるためには、会社が常日頃から社内の業務内容を把握し、常に効率化を考えた業務フローを整えておく必要があります。特に社員の残業が常態化している職場の場合、欠員が一人生じただけで周囲の社員にはかなりのダメージが与えられる危険性があります。社員一人ひとりの業務内容が適正かどうかを見直し、職場のモチベーションが低下しないような対応策が求められるでしょう。

【参考】
両立支援等助成金』/ 厚生労働省

* kouta、nonpii、takeuchi masato、takeuchi masato / PIXTA(ピクスタ)