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TOP > 記事一覧 > 総務・法務 > 災害対策はここからスタート!災害時に備えて中小企業が策定すべき「事業継続力強化計画」とは?【チェックリスト付き】
事業継続力強化計画

災害対策はここからスタート!災害時に備えて中小企業が策定すべき「事業継続力強化計画」とは?【チェックリスト付き】

2021.12.20

皆さんの会社では、災害対策を行っていますか? 「中小企業には必要ない」と思っていたり、必要性は感じつつも「何から手を付けていいか分からない……」と感じたりしている方も多いのではないでしょうか?

災害時に事業が滞ってしまえば、売上を失うだけでなく、信頼もなくしてしまうとことになりかねません。大規模災害は、“必ず起こる”という前提で対策に取り組むことが必要です。

本記事では、災害時に困らないための“事業継続”という考え方をもとに、中小企業の災害リスクと取り組むべき対策をご紹介します。中小企業にメリットがある認証制度や保証制度も紹介するので、ぜひ参考としてみてください。

災害時に困らないため事業継続とは?

“事業継続”とは、災害等があった場合でも事業を継続することです。事業継続“力”という言葉で使われることもあり、事業継続を実現することができる企業組織力のことを指します。内閣府の『防災情報のページ』では、事業継続の取り組みについて、下記のように説明しています。

企業は、災害や事故で被害を受けても、取引先等の利害関係者から、重要な業務が中断しないこと、中断しても可能な限り短い期間で再開することが望まれています。

“事業継続力”を強化することは、重要業務中断に伴う顧客の他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下などから企業を守る経営レベルの戦略的課題と位置づけられるため、企業にとって重要です。

自社の「事業継続」の取り組みをチェックしてみましょう!

あなたの会社は事業継続の取り組みをどれだけ対応しているのでしょうか? まずは、下記のチェックリストでいくつ対応できているかみてみましょう。

□事業所が立地する場所のハザードマップを見たことがある
□災害による事業への影響を考えたことがある
□役員や従業員の緊急連絡先を整備している
□災害発生時の避難経路や避難場所を社員全員が把握している
□緊急時の設備や機器の停止手順を決めている
□災害直後に連絡する関係者(取引先、金融機関等)を整理している
□被災後の資金繰りに備えて、損害保険・共済への加入や、緊急時の融資制度の活用などを検討している
□災害時の人員確保について、他社との連携などを検討している
□地震や水災害に対して、物理的な対応を検討している
□顧客情報や帳簿等、重要情報についてバックアップを作成している
□年に1回、災害に備えた訓練を実施し、積極的に取り組んでいる
□経営陣が事業継続に向けた取り組みにコミットし、積極的に取り組んでいる
□雇用保険に加入している
□加入している損害保険や共済について、対応する災害の種類や補償対象となる資産の範囲、休業に対する補償などを把握している
(出典:事業継続力強化計画認定制度リーフレットより抜粋)

結果はいかがだったでしょうか? 健康診断と同じで、“現時点の立ち位置を知る”ことが最も重要。どのような点に備えがあり、どこを補うべきかを明確にするためのチェック表となります。災害対策に万全はありませんが、最終的にすべての項目にチェックできる事が目指すべき姿です。

新型コロナウイルス感染症も災害のひとつ

企業を取り巻くリスクには、災害・事故、法務、社会・財務・製品開発・内部不正等などの種類があります。中でも自然災害は、全ての企業が直面する可能性があります。

2011年東日本大震災以降、大規模水害等が頻発。そこで、災害発生時、できるだけ早期に回復する経営マネジメント戦略である事業継続の取組みが一層注目されています。

また昨今では、新型コロナウイルス感染症を含む“感染症”も、“事業継続”の観点から災害と考えられ、中小企業庁『事業継続力強化計画策定の手引き(令和3年8月2日版)』にも対策を講じることが必要と明記されています。

災害が企業に及ぼす影響とは?

では、災害が企業に及ぼす影響にはどのようなものがあるのでしょうか?

企業活動が停止した場合の影響の具体例

中小企業強靭化研究会が発表したデータによると、事業継続計画(BCP)未策定で事前対策のない企業は、事業継続計画(BCP)策定済みの企業と比較して、復旧に3倍の日数を要しています。

災害への準備が不十分な場合、企業活動が停止し、最悪の状況では、倒産する可能性もあります。具体的な営業の例としては下記のようなことが挙げられます。

・お客様に商品やサービスを提供できない
・取引先に商品・部品等を供給できない
・機会損失による売上・利益の減少
・社会的信用の失墜、株価下落
・従業員に賃金を払えない 等

事例:災害被害を受け取引先を失った企業

イメージしやすいように、災害被害を受け、取引先を失った企業のエピソードをご紹介しましょう。

中部地方のある自動車メーカー下請企業では、自動車部品を製造し親会社に納品しており、売上の多くを占めていました。そんななか、2018年大きな台風被害を受け、工場が水没。操業停止しなければならない状況になりました。

被災したことを聞いた親会社から「いつ復旧できますか?」 と問われ、下請企業の社長は「そんなの分かりません! 」と答えてしまいました。親会社では急な欠品を見据え、「すぐに代替え部品工場を日本問わず世界中から探せ 」との指示がでてしまうことを知らずに……。

半年後に下請け会社の社長が「やっと操業再開のメドがたちました!」と親会社に連絡したところ、「あ、おたくもういいよ。他で手当てできたから。せめて、3週間以内に納品出来ますとか言ってもらえればね……」とあっさり見切りをつけられてしまいました。

社長は「被災しても、部品供給できる体制を整えるべきだった……」と後悔しても後の祭り。

災害時に事業継続できる会社を作ろう

社内で事業継続に取り組む際の進め方

社内で災害時に困らないため“事業継続”に取り組むには、漠然と進めるのではなく、“何のために対策を行うのか”、“どのようなリスクを想定するべきなのか”などを明確にすることがポイントです。具体的には、下記のような進め方で行うとよいでしょう。

(1)目的の明確化
・いざというときに慌てないよう、被災時に何を目標とするのかあらかじめ想定

(2)リスク認識、被害想定
・ハザードマップを確認しリスクを確認
・事業への影響を想定

(3)発生時の初動対応手順
・人命の安全確保(従業員の避難、安否確認)
・非常時の緊急体制の構築
・取引先や関係団体への被害状況の共有方法等の確認

(4)取引先・他社との協力体制
・経営トップによる推進
・災害時の社内体制の構築

(5)実効性の担保
・年に1回以上、計画の有効性を確認する訓練を実施
・自らの経営環境の変化に応じた計画の見直し

事業継続のための具体的な事前対策

“事業継続”のための具体的な事前対策として、下記の点を実行していきましょう。

(1)人員確保
・業務内容、作業手順のマニュアル化
・他社との連携による非常時の相互応援体制の構築

(2)建物・設備の保護
・地震に備えた機器の固定
・配電盤等の重要設備の高所設置
・停電に備えた自家発電設備の導入

(3)資金繰り対策
・被災した際に融資を受けることができる窓口を確認
・休業時に利益補償をする保険への加入
・建物や機械設備だけでなく、在庫や原材料などを対象とする保険・共済への加入

(4)情報保護
・契約書や顧客情報など、重要な情報を複製化
・クラウドサーバーを活用した情報の保管

(5)取引先・他社との連携
・地域企業との非常時応援体制の整備
・取引先や、同業組合等での連携

ここまで事業継続に取り組む際の進め方や事前対策について紹介しましたが、実際にはどこから手を付けてよいか分からないという企業もあると思います。そんな場合は、このあと説明する『事業継続力強化計画』から取り組むことをおすすめします。

中小企業におすすめの事業継続力強化計画とは?

事業継続計画(BCP)とは?

事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)とは、企業が災害時に事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能にすることを目的に、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。 災害は、自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合を想定しています。

これを計画しておくことで、災害後も事業を継続し、市場の信頼を得ることに、さらには事業の拡大を目指すことにつながります。

中小企業におすすめの事業継続力強化計画とは?

中小企業はいざという時に自分で自分を守り抜く覚悟が必要です。中小企業の災害事前対策を促進するために、中小企業庁が行っている支援が『事業継続力強化計画』の認定制度です。

『事業継続力強化計画』の認定制度とは、中小企業が策定した事業継続計画(BCP)を経済産業大臣が認定する制度です。認定を受けた中小企業は、税制措置や金融支援、補助金の加点などのさまざまなメリットがあります。

何から手を付けていいのか分からないという企業では、前述の“災害時に事業継続できる会社を作ろう”の内容を参考に、『事業継続力強化計画』の申請様式の記入していく形で対策を進めるとよいでしょう。

実際に作成する際は、『事業継続力強化計画策定の手引き』も参考にしてみてください。また、『事業継続力強化計画』認定申請書様式はこちらのページからダウンロードできます。

※事業継続力強化計画の認定制度は自社の災害に対するリスクを検証し、それに対するハード面の対策(耐震・水害・停電等防災設備投資、損害保険の補償内容の充実)等、物理的な金銭、資金、保証対策を構築するものです。

事業継続力強化計画認定のメリット3つ

認定を受けた中小企業は、防災・減災設備に対する税制優遇、低利融資、補助金の優先採択など、さまざまな支援を受けることができます。具体的には次の通りです。

1:補助金審査で加点
例えば、ものづくり補助金の申請をする場合は、審査で加点されます。

2:税制措置
認定計画に従って取得した一定の設備等について、取得価額の20%の特別償却を受けることができます。『事業継続力強化計画』の認定を受けた後に、対象設備を取得する必要があります。

3:金融支援
日本政策金融公庫の低利融資、信用保証の別枠など、計画の取組に関する資金調達について支援を受けることができます。

事業継続力強化計画は継続的な運用が必要

『事業継続力強化計画』は、策定だけでなく、定着化へ向けた継続的な取組みが重要です。具体的には下記のサイクルになります。

(1)経営者が方針を立て、(2)計画を立案し、(3)日常業務として実施・運用し、(4)従業員の教育・訓練を行い、(5)結果を点検・是正し、(6)経営層が見直すことを繰り返すことです。

つまり、上記の計画の運用、見直しまでのマネジメントシステムを構築することが必要です。

迅速な資金調達のための災害時発動型予約保証とは?

事業継続計画(BCP)を策定するメリットのーつに災害時発動型予約保証があります。災害時発動型予約保証とは、事業継続計画(BCP)を策定している中小企業・小規模事業者を対象に、将来の災害に対する事前の備えとして、保証の予約ができる制度です。

事前に予約しておくことで、災害が発生した場合に事業継続に必要な資金を迅速に調達することが可能となります。新型コロナウイルス感染症のような“災害”にも対応している心強い制度です。

補償制度の内容は各都道府県の信用保証協会によって異なりますが、予約自体は無料でできるので、事業継続計画(BCP)を策定する場合はぜひ検討することをおすすめします。

また、これらの信用保証協会では、事業継続計画(BCP)策定にかかわる活動における、専門家派遣の謝金や旅費、研修費用、資料や書籍購入、講習会参加費の補助をしていますので、積極的に活用しましょう。

筆者の会社での事業継続の取り組み

大規模災害は、“必ず起こる”という前提で対策に取り組むことが必要です。そして、実際の場面で使えるようにするためには、定期的な点検や訓練を行い、不具合な点を継続的に改善することが大切です。いまや災害対策は中小企業においても重要課題になってきています。

筆者の会社は10人規模事業ですが、『事業継続力強化計画』の認定を受けることができました。専門家派遣を活用し、まずは事業継続力強化計画の認定、一般事業継続計画(BCP)の策定、感染症事業継続計画(BCP)の策定、認定後は災害時発動型予約補償『そなえ』の保証枠の予約を行い、先般は防災訓練も実施しました。

取り組み当初は緊急連絡網の共有や、避難経路図もない等課題は盛りだくさんでした。しかし、災害時にかかる設備修繕費用の確認や、発電機の設置、社員カードの作成、スキル表の作成等、課題を一つ一つクリアしていっているところです。また、連携に協力いただける各企業様に協定の締結を順次行っているところです。

最初から100点満点の災害対策を目指すと、課題の多さを前にして途方に暮れてしまいますが、まずは身近なところや、できるところの対策からはじめ、少しずつでも継続的に活動しましょう。課題から目をそらさず、第一歩を踏み出すことが大切ですし、全社員でのアウトプットが非常事態における事業継続力の向上に繋がると思います。

【参考】
事業継続力強化計画認定制度リーフレット』 / 中小企業庁
事業継続力強化計画策定の手引き(令和3年8月2日版)』 / 中小企業庁
事業継続力強化計画』 / 中小企業庁
中小企業強靱化研究会中間取りまとめ』 / 第3回中小企業強靱化研究会 

*CORA、shuu、Fast&Slow、Graphs、NOV、stoatphoto / PIXTA(ピクスタ)