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解雇予告手当

解雇予告手当とは?間違えやすい計算方法や手当が必要ないケースを解説

2021.12.27

経営危機による人件費の圧迫、繰り返す社員の問題行動など……会社を経営していると、やむを得ずに社員の解雇を検討しなくてはならないケースもあるでしょう。

解雇は社員の生活を左右する重大な決定事項となるため、できるだけ回避することが望ましいです。その上で、経営者としてやむを得ず解雇を行う際は、法律を遵守し、慎重に対応を進める必要があります。

解雇を検討するときの重要なポイントの一つとして“解雇予告手当”という制度があります。今回は、この“解雇予告手当”の決まりや計算方法について順を追って解説をしていきましょう。

そもそも解雇とは?

解雇予告手当について説明をする前に、まずはそもそもの定義として“解雇”とはどのようなものかについて見直してみましょう。

解雇とは、社員の同意がない状態で、使用者が一方的に雇用契約を解除し、終了させることです。つまり、社員側が退職することを了承した上で雇用契約を終了させる場合は、解雇とはいえないことになります。

解雇は大きく分けて、普通解雇・懲戒解雇・整理解雇などがあります。

普通解雇とは

普通解雇とは、このあと説明する懲戒解雇や整理解雇以外の解雇を総称して使われるケースが多いです。解雇事由としては、社員の能力不足や協調性の欠如などが挙げられます。

また、社員に不利益が多い懲戒解雇を回避して、普通解雇を事実上の懲戒処分とする場合もあります。

【こちらもチェック】能力不足を理由に解雇できるケースとは?

懲戒解雇とは

懲戒解雇は、社員が会社で勤務をするにあたり、遵守しなければならない社内ルールに反する行為をした際に、会社側が行う処分である“懲戒処分”の一つです。

懲戒処分は段階に応じて複数の設定があり、最も重たい処分が解雇となります。

【こちらもチェック】業務命令違反は懲戒解雇の事由になる?

整理解雇とは

整理解雇とは、経営危機などを理由として、会社が存続するための人員整理の一環としてやむを得ず行う解雇のことです。“リストラ”と呼ばれることもあります。複数の社員が同じタイミングで解雇されるケースが多いです。

本記事では詳しく触れませんが、過去の裁判をもとに確立された“整理解雇の4要件”が基準となることが多いです。

解雇予告手当とは?

法律では、解雇する場合は、少なくとも30日以上前から“解雇予告”をしなければならない旨が定められています。これは、解雇を言い渡された社員が今後の身の振り方を考える期間として、“30日以上”という期間が設けられているのです。

諸事情により30日以上前からの解雇予告を行わなかった場合は、“解雇予告手当”の支払が義務づけられています。つまり、即時解雇や解雇予告期間が30日に満たない場合には、解雇予告手当を支払わなければなりません。この解雇予告手当の対象となる社員は、正社員のみならず、契約社員、パート・アルバイトも対象となります。

なお、後述しますが、社員側に明らかに責任がある場合など、“解雇予告手当”の支払いなく即時解雇が可能になる場合があります。懲戒解雇ではこれに該当することもあるでしょう。

解雇予告手当の計算方法は?

解雇予告手当は、“1日あたりの平均賃金×法定の解雇予告期間に不足している日数”で算出します。

1:“1日あたりの平均賃金”を求めます
1日あたりの平均賃金は、以下の(a)と(b)の数字を洗い出し、(a)÷(b)をすることで求めます。
(a)解雇予告日の直近となる賃金締日から3ヶ月間に解雇社員へ支払った賃金の総額(所得税・保険料の控除前の金額です)
(b)解雇予告日の直近となる賃金締日から3ヶ月間の総日数(所定労働日ではなく、歴日数をカウントします)

2:“法定の解雇予告期間に不足している日数”を求めます
解雇予告は30日前に行う必要があるため、30日に満たない日数を計算します。計算式は以下になります。
・30日-解雇予告をした日から解雇を実行する日までの日数
即時解雇の場合、解雇予告をした日から解雇を実行する日までの日数はゼロになります。

3:1と2で求めた数字を下記の計算式でかけ合わすことで、解雇予告手当を計算します
計算式は以下になります。
・1で求めた金額×2で求めた日数=解雇予告手当

具体例

分かりにくい上記の2と3の計算方法について、即日解雇した場合と、解雇の10日前に予告した場合で具体例を挙げます。

・即日解雇した場合:
11月20日に即日解雇(予告なしに11月20日付けの解雇)を実施する場合は、解雇予告期間は0日となるため、解雇予告手当の金額は30日分の平均賃金となります。

・解雇の10日前に予告した場合:
11月30日に“12月10日に解雇する”と解雇予告を行う場合、法定の解雇予告期間である30日から、12月1日~12月10日までの10日分を差し引いた20日分が解雇予告期間に不足している日数となります。解雇予告手当の金額は20日分の平均賃金となります。

解雇予告手当が必要ないケースとは?

解雇予告手当は、原則として労働者の生活保障のために必要とされるものですが、中には例外として解雇予告手当の支払が義務づけられていない、次のようなケースがみられます。

1:解雇予告手当が適用されない社員

次の要件に当てはまる社員については、そもそも解雇予告制度の適用外となるため、解雇予告手当は必要ありません。

・雇用期間が1ヶ月以内の日雇い社員
・2ヶ月以内の期間で雇用契約をし、期間延長や更新処理をしていない社員
・季節的業務に携わる者として4ヶ月以内の期間で雇用契約をし、期間延長や更新処理をしていない社員
・雇用期間が14日以下である、試用期間中の社員

2:解雇予告制度が適用されないケース

次の要件に当てはまるケースの場合は、解雇予告制度が適用されず、解雇予告手当は必要ありません。

・天災事変などやむを得ない理由のため、事業が継続できない場合
・社員側に明らかに責任がある場合の解雇として、労働基準監督署長の認定を受けた場合

本ページでは“解雇予告手当”について解説しました。解雇は社員の生活に大きくかかわります。経営者としては、まずは解雇を回避することを優先し、やむを得ず行う場合には、法律を遵守した上で、慎重に対応しないといけないといけません。

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* C-geo、Pangaea、umaruchan4678、bee / PIXTA(ピクスタ)