労働実務事例
[ 質問 ]
従業員が労働災害により休業し、労災保険の休業補償給付を請求したところ、給付基礎日額の60%の休業補償と、20%の休業特別支給金が支給されました。どちらも同じようなもので80%の給付でよいと思われますが、なぜ違った扱いがなされるのでしょうか。また、ボーナスも賃金総額に含めて保険料を納めていますので、ボーナス分も支給される説明があったと思うのですが、休業に対してボーナス分は支給されないのでしょうか。
神奈川・A社
[ お答え ]
労災保険の休業補償給付は、業務上災害を被った労働者が、その災害による傷病の療養のため働くことはできないために、賃金を貰えない場合に、休業中の生活費として支給されるものです。その支給要件は、①業務上の傷病の療養のため、②労働することができず、③賃金を受けられないこと――の3つで、休業の第4日目から支給されます。
休業の初日から第3日目まで(待期期間)は支給されず、この3日間は、事業主は労基法第76条に規定する休業補償を行わなければなりません(通勤災害の場合には、休業補償の義務はありません)。
なお、業務上の災害で休業が4日以上となる場合には、「労働者死傷病報告」(様式23号)を提出する必要があります。
休業特別支給金の支給要件は、休業補償給付と全く同じで、休業補償給付、休業給付(通勤災害の場合)を受ける者に支給されますが、保険給付と異なったものとされています。つまり、休業特別支給金をはじめとするもろもろの特別支給金は、保険給付とは別に社会復帰促進等事業の一環として支給されるもので、保険給付を補完する意味で設けられています。その性格は、災害補償そのものではなく、休業特別支給金にあっては療養生活援護金の色彩が濃いものということができます。他面、その支給事由、支給額等が明らかなように、保険給付と直接的な関連、密接不可分の加給金的な関係となり、保険給付と相まってこれを補う所得的効果をもつものといえます。
休業特別支給金の申請は、原則として休業補償給付(休業給付)の支給の請求と同時に行わなければなりません。
休業補償給付の額は、休業1日につき給付基礎日額の60%です。給付基礎日額は、原則として平均賃金に相当する額です。
平均賃金は、これを算定すべき事由の発生した日、つまり負傷した日以前3カ月間にその労働者に支払われた賃金の総額を、その期間は総日数で除して得た金額です。
以前3カ月とは、その日を含まず、その日の前日からさかのぼる暦日による3カ月を指します。総日数とは、暦日数を指し、実稼動日数のことではありません。
賃金締切日がある場合(実際には賃金締切日がある場合が通常)には、歴日数で計算するよりも、賃金締切日の期間によって計算する方が簡便ですので、その3カ月は、事由の発生した日の直前の賃金締切日から起算されます。
平均賃金の算定基礎となる賃金の総額から、①臨時に支払われた賃金、②3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金は除外されます。年2回支払われるボーナスは、3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金ですから、平均賃金の算定基礎から除外されます。「ボーナス分も支給される説明があった」とのことですが、これは、社会復帰促進等事業としての特別支給金のうち、ボーナス等の特別給与を算定基礎とするいわゆる「ボーナス特別支給金」のことです。
特別支給金には、①休業特別支給金、②障害特別支給金、③遺族特別支給金、④傷病特別支給金、⑤障害特別年金、⑥障害特別一時金、⑦遺族特別年金、⑧遺族特別一時金、⑨傷病特別年金の9種類があります(特別支給金規則第2条)。⑤から⑨までが特別給与を算定基礎とするボーナス特別支給金です。
特別給与とは、3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金をいい、特別給与を基礎とする特別支給金(⑤から⑨までの5種類)は、算定基礎日額または算定基礎年額を基礎として算出され、算定基礎日額は、算定基礎年額を365で除して得た額です。算定基礎年額は、負傷または発病の日以前1年間に支払われた特別給与の総額です。ただし、この総額は、給付基礎日額に365を乗じて得た額の100分の20か、150万円かいずれか低い方の額が限度とされています。
特別給与を基礎とする特別支給金は、障害特別年金、障害特別一時金、遺族特別年金、遺族特別一時金、傷病特別年金(通勤災害の場合も同様)に限られています。休業に対してはボーナス等を基礎とした特別支給金はありません。休業1日につき給付基礎日額の20%の休業特別支給金のみが支給されます。
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