労働実務事例
[ 質問 ]
私は、定年後、再雇用として働き始めました。在職老齢年金を受けるつもりだったのですが、雇用保険から高年齢雇用継続給付をもらったら、年金が全額ストップしてしまいました。どうして、こんなことが起きてしまったのでしょうか。
石川・Y生
[ お答え ]
60歳代前半の厚生年金被保険者が雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けると、60歳代後半の厚生年金の金額が減額調整されます。
具体的には、まず雇用継続給付を受けるか否かに関わらず、在職老齢年金の仕組みにより年金が減額調整されます(収入が少なければ、減額ゼロのケースもあります)。次に、雇用継続給付を受けると、在職老齢年金そのものがまた減額されてしまいます。
カット額は、次のとおり定められています。
原則として、60歳到達まで6カ月間に支払われた賃金総額を180で除して得た額(賃金日額)に30を乗じて、「みなし賃金月額」を算出します。
① 再雇用後の標準報酬月額が、上記みなし賃金月額の61%未満であるとき
カット額=標準報酬月額×6%
② 再雇用後の標準報酬月額が、上記みなし賃金月額の61%以上75%未満であるとき
カット額=標準報酬月額×「6%から一定割合で低減するように定める率」
一般に、「雇用継続給付の給付率の5分の2の率がカットされる」といいます。雇用継続給付の給付率が10%なら、年金のカット率は4%です。最大は、雇用継続給付の給付率15%に対し、年金のカット率6%(①のケース)です。
それでは、お尋ねのケースでなぜ年金がゼロになってしまったのでしょうか。年金のカット率6%などと聞くと、減額調整された後の在職老齢年金の6%がカットされると誤解しがちです。
たとえば、標準報酬月額26万円、過去1年間の賞与額の12分の1が8万円、満額の年金が8万円という人がいたとします。早見表などをみると、在職老齢年金はわずか1万円です。この場合、年金の停止額は1万円の6%で600円かというと、そうではありません。
在職老齢年金がいくらかに関係なく、標準報酬月額の6%(26万円×6%=1.56万円)がカットされます。在職老齢年金の額より、カット額が多い場合には加給年金額なども含めて、一切、年金は支給されません。
60歳定年により再雇用された人は、60歳代前半の老齢厚生年金の定額部分は支給されません(男女とも)。満額の年金が低いため、在職老齢年金も小額の場合、高年齢雇用継続給付を受けた結果、年金がゼロになる可能性が高くなるので、注意が必要です。
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