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労働実務事例

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労基の災害補償と関係、違うのは年金制度のみ?

「労働新聞」「安全スタッフ」(2011年1月~12月掲載文)
法改正等で現在の正確な内容と異なる場合があります。

[ 質問 ]

 労災に関する保険については、労働者災害補償保険法という独立した法律があります。また、災害補償については労働基準法という独立した法律があります。両法律ともに業務内容については、大体同じような規定になっています。違うのは年金制度の有無程度に感じられますが、それ以外でも何か労災保険について、労働基準法が大きな影響を及ぼしていることがあるでしょうか。

【山梨・K社】

[ お答え ]

 災害補償事由について
 労基法の規定で、労災保険に最も大きな影響を及ぼすのは第何条かといいますと、それは第75条から第77条までと、第79条および第80条でしょう。それは、労災保険法には、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付および葬祭料については、それらの給付を行う事由が規定されていないからです。そのため労災保険法第12条の8第2項には、前項の保険給付(傷病補償年金および介護補償給付を除く)は、労基法第75条から第77条までと第79条および第80条に規定する災害補償の事由が生じた場合に、補償を受けるべき労働者もしくは遺族または葬祭を行う者に対し、その請求に基づいて行うと規定されています。
 傷病補償年金と介護補償給付が除かれているのは、労基法には第81条に打切補償についての補償事由については規定されていても、それとは補償の事由が違っている傷病補償年金については補償事由についての規定がないこと、それと介護補償給付については、そのような給付が労基法にはないからでしょう。
 以上で、補償の事由というのは、たとえば、休業補償の場合は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり、その業務上の負傷や疾病を療養するために、労働することができなくて賃金を受けない場合のことをいいます。労災保険の休業補償給付が給付されるのはそのような場合です。
 このように、労基法の災害補償と、労災保険の災害補償給付との間には非常に密接な関係があります。したがって、たとえば労災保険の給付決定に際して、都道府県労働局の職員や、全国の労基署の職員が、労災保険の給付決定を行うときに判断基準にしている厚生労働省労働基準局長の通達は、労基法の通達でもあれば、労災保険法の通達でもあるわけです。通常は労災保険法の通達であることだけが頭にありがちですが、それと同じように労基法の通達でもあるわけです。だから、労災保険を考える場合には、労基法についても考えておく必要がある場合もありますので、次にはそのことについてふれてみることにしましょう。そのことが、後半の質問については関係が深いのではないかと思います。
事業主の補償責任
 労基法第77条をみると、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり、治った場合において、その身体に障害が存するときは、使用者は、その障害の程度に応じて、平均賃金に別表第2に定める日数を乗じて得た障害補償を行わなければならないと規定されています。
 この条文は、同じ労基法の第84条第1項に、この法律に規定する災害補償の事由について、労災保険法に基づいて、この法律の災害補償に相当する給付が行われるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れるとあるので、労災保険関係が成立している事業については、何ら心配の必要はありません。
 ところが、暫定任意適用事業(小規模の農業等)であるために労災保険に加入していない事業についてはそうもいきません。もし、そのような未加入の事業で、労基法第77条により、障害補償を行うべき労働災害が発生すると、使用者は、障害補償を行わなければならないことになります。そして、それを7日以内に行わないと(労基則第47条第1項)、使用者は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑に該当するということです(労基法第119条第1号)。
 以上のように罰則があるということになりますと、使用者を有罪にするためには、「疑わしきは被告人の利益に」という法格言が活きてきます。したがって、証拠からみて、使用者の有罪ということがはっきりしないといけません。この点で腰痛や、けい腕や、精神疾患等については特に問題の生ずることがあるようです。労災保険については、障害補償給付も含めて直接罰則のある給付はありませんが、労基法により、災害補償の事由が生じた場合とあるので、その面から労基法と同一水準で厳しく判断する必要がある場合もあるのではないでしょうか。そんなことで労基法が影響を及ぼすこともあるのではないでしょうか。



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