労働実務事例
[ 質問 ]
夫の死亡時に、妻が受ける年金を調べています。遺族厚生年金・基礎年金、中高齢の加算、経過的加算のほかに、寡婦年金という給付を見つけました。「寡婦」とは夫が死亡した妻という意味だと思うのですが、遺族基礎年金とどういう違いがあるのでしょうか。
【熊本・A社】
[ お答え ]
寡婦年金は国民年金の独自給付で(国民年金法第49条)、自営業者等の夫を持つ妻が夫を亡くした場合に支給されるものです。厚生年金には、同様の仕組みは設けられていません。
支給要件の第1は、夫に関するものです。死亡した当時、夫の「第1号被保険者としての」保険料納付済期間と免除期間を合計した期間が25年以上ないといけません。サラリーマンとして第2号被保険者だった期間はカウントされないので、会社を退職後、短い期間第1号被保険者として保険料を納めた人等は要件を満たしません。さらに、夫が障害基礎年金の受給権者であったことがあるとき、老齢基礎年金の支給を受けていたときも、対象から除かれます。
要件の第2は、妻本人に関するものです。夫の死亡当時、夫によって生計を維持されていたことのほか、「夫との婚姻関係が10年以上継続している」ことも条件となっています。法律的にいえば、結婚生活が短くても「寡婦」である点に変わりありませんが、長期にわたって夫に生活を依存してきた妻の生活保障という観点から、国民年金では期間要件が設けられているようです。
この両要件を満たせば、妻(65歳未満である場合に限ります)は、寡婦年金の受給権を取得します。しかし、年金の支給開始は、妻が60歳未満であるときは60歳に達する月の翌月から、夫の死亡月が妻の60歳到達月より遅いときは夫の死亡月の翌月からとなります。妻本人が死亡、婚姻等失権事由(国民年金法第40条第1項)に該当しない限り、寡婦年金は65歳到達月まで継続して支給され、それ以降は妻本人の老齢基礎年金に切り替わります。
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