
「残業時間を減らすように」と指示するだけはNG!サービス残業の根本的な解決策
「残業を指示していないのに、社員が残って働いているらしい……」そんな社員の働き方について小耳にはさんだことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。例え、社員が自主的に残業をしていたとしても、それを何もせずに放置していると会社は残業を黙認していることとなり、思わぬ労使トラブルに繋がることがあります。最近はコロナ禍の影響もあって在宅勤務やフレックスタイム制など、労働時間の管理が難しい制度を採用している会社が増えているので、注意が必要です。
「サービス残業」が起こる理由
“サービス残業”という言葉に法的な定義はありませんが、一般的には時間外労働をしているのにも関わらず、会社が時間外労働により発生する賃金を支払わずに結果として無給で働いていることを言います。
サービス残業が起こる理由は、主に2つあります。1つ目は会社が“労働時間”の定義を正しく理解していない場合です。労働基準法の“労働時間”とは、厚生労働省策定の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の中で「使用者の指揮命令下に置かれている時間のこと」とされています。使用者の指揮命令下に置かれている時間、つまり会社からの業務指示等を受ける可能性があって、労働から完全に離れていない時間は労働時間に該当することになるのです。また、会社の指示や命令によらない場合でも、時間外労働をしていることを黙認していたり、所定労働時間内に終了させることが困難なほど業務量が多い場合等は、“黙示の指揮命令”をしていたと判断され、割増賃金の支払い義務が発生します。
また、残業だけはなく、休憩時間もサービス労働になっている可能性があります。「決められた休憩時間が取れていない」「休憩時間も顧客対応をせざるを得ないのでなかなか休めない」といった現場の声はよく聞きます。休憩は、労働基準法の中で6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上を労働時間の途中で与えなくてはなりませんし、その時間は自由利用できる状態でなければ労働時間とされてしまう可能性があります。飲食業や小売業など店舗で勤務するような業務の場合は、このようなトラブルに繋がる可能性が高く、特に注意すべきです。
2つ目は、社員が申請をしないで残業を行い、結果的にサービス残業が発生している場合です。働き方改革による法改正により時間外労働に対する法規制が厳しくなり、以前に比べて会社の時間外労働に対する遵法意識も高まってきたように感じます。それ自体は良いことなのですが、36協定や法律に抵触する時間外労働が発生しないようにと、業務過多・生産性の低さなどの根本的な問題を解決しないまま、ただ「残業時間を減らすように」と指示している会社も多いようです。その結果、社員が正しい時間外労働を申告しづらい雰囲気を作り、とりあえずタイムカードを打刻してからサービス残業をするといったことが増えている実態が存在します。タイムカード上では、時間外労働が少ないように見えていても、実態としてはサービス残業が増えているといった会社も少なくありません。
サービス残業により起こり得る労務問題
サービス残業が発生していれば、当然その時間分の賃金が未払いになります。行政による調査や本人の申告によりサービス残業が発覚した場合は、最大3年間の時効の範囲内で支払わなくてはなりません。また、そのような事態にまで発展しなかったとしても、そもそも長時間労働は業務効率の低下を招きますし、サービス残業をしているとなれば、社員のモチベーションも低下して採用や定着への悪影響につながります。また、SNS等によって拡散されれば企業イメージの低下にもつながる恐れもありますので、サービス残業が発生しない環境を作ることが重要です。
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サービス残業が発生しない会社を作るには
サービス残業をなくしていく方法は、各社の状況によって異なります。生産性、効率性をあげて残業そのものを減らす会社もあれば、労働時間の管理や申請方法が課題となる会社もあります。自社の課題に応じて適切な取り組みを始めていきましょう。
まずは勤怠管理を見直し、現状を把握しましょう。サービス残業の裏にどういった課題があるのかを把握することが重要です。前述の通り、タイムカード等の記録では一見、時間外労働が少ないように見えても、社員にヒアリングをしてみるとタイムカードには記録されていない残業をしていることがあります。まずは正しい労働時間管理を行うために、タイムカードで確認するだけでなく、社員へのヒアリング、PCのログイン履歴を確認するなどをして、現状を把握しましょう。勤怠管理システムを導入していない会社はこれを機に導入することをおすすめします。
サービス残業が発覚した場合は、当事者にヒアリングを行い、原因を把握しましょう。時間外労働が申請しにくい雰囲気があったことから意図的にサービス残業をしていた場合は、会社として根本的な解決に向けて動き出すべきです。
業務量が物理的に多いという場合には、業務内容や業務フローを整理し、不要な手続き・対応や効率の悪いやり取りがないか洗い出してみることをおすすめします。また、職場環境の改善は生産性改善に有効です。整理整頓ができているだけでも作業効率が大きく改善されます。デスクやキャビネットを整理したりレイアウトを変更したりするだけでも効果があるでしょうし、ペーパーレスを徹底すれば書類が減って書類を探すこともなくなります。整理整頓を習慣化するために、フリーアドレスを導入するのもおすすめです。
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サービス残業をなくすためには、本当の労働時間を把握することが不可欠です。まずは、現状を把握し、サービス残業の原因や解決策を考えていきましょう。
*mits、Luce、freeangle、kai / PIXTA(ピクスタ)
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