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眠たい社員

「仕事に集中していない」要因は会社にあり?問題社員を生み出す環境を考えてみる

2022.12.26

産業医である筆者のもとには「社員の問題で困っているんです!」という経営者や人事の方からのご相談があります。しかし、その要因がすべて社員の問題ではないのかもしれません。本記事では医学的な観点と環境の問題に分け、社員が仕事に集中していない要因や対策について解説します。

社員の問題はなぜ起きているのか

筆者に寄せられる相談には以下のようなものがあります。

・ 仕事中に居眠りをしている
・ 離席して長時間帰ってこない(トイレなのか、タバコなのか、どこで何をしているかもわからない)
・ 在宅ワークのため何をしているかわからない
・ 机に座ってはいるが、ぼんやりとしていて作業が進んでいない
・ 一生懸命仕事をしているがミスが多いため仕事を任せられない

このように、現場で起こっている業務上の問題を”事例性(じれいせい)”といいます。産業医の役割の一つは、この事例性に医学的な理由があるかどうかを評価することです。この医学的な理由のことを、“疾病性(しっぺいせい)”と言います。何か問題が起こっている時、事例性と疾病性に分けて整理をすることがとても大事です。例えば、仕事中の居眠りは、睡眠リズムの障害や過眠症、ナルコレプシー(十分に眠ったにも関わらず日中に強い眠気に襲われ眠ってしまう)など、睡眠の病気によるものかもしれません。もしくは、ゲームやインターネットに夢中になって、睡眠時間が削られている場合もあるでしょう。治療して改善できる疾病であれば受診を促しましょう。社員の問題が起きている時には、医学的な理由があるのかどうか、ぜひ産業医に相談してみてください。医学の専門家が話を聞くことで病気の影響や程度といった医学的な理由を検討することができます。

【こちらの記事も】問題社員はどう対処すればいい?トラブル回避法と過去の事例を一挙紹介

問題の原因が医学的な理由でない場合

次に原因が、疾病性ではなさそうな場合は、職場環境が問題かもしれません。職場環境について検討するとき、①作業環境管理、②作業管理、③健康管理の『労働衛生の3管理』に整理できます。

①作業環境管理

作業環境管理とは、職場環境の有害な因子を把握し良好な状態で働けるようにすることです。例えば、暑すぎる、寒すぎる、机の上が暗い、周りの音がうるさい、という状況では集中して作業を行うことが難しいでしょう。このような、職場環境の条件を定めた法律が、『事務所衛生基準規則』です。最近変更になった基準がありますので、確認しておきましょう。

例えば、照度に関しては、オフィス全体は明るい場合でも机上やパーテーションなどで区切られているといった要因で実際に作業を行う面(手元)が暗い場合は基準を満たしていない可能性があります。また、感染対策としても重要な換気ですが、二酸化炭素濃度を測る機械を置くことも重要です。季節によって気温や湿度との兼ね合い、空調設備が適切かどうかに関わってきます。まずは定期的に測定を行い、改善点がないか確認してみましょう。

【参考】ご存知ですか?職場における労働衛生基準が変わりました / 厚生労働省

②作業管理

作業管理とは、有害要因のばく露や作業負荷を軽減するような作業方法の管理です。例えば、周りの音がうるさいという問題がある場合、音自体を静かにできないかを考えることです。作業環境の管理で解決できれば一番良いのですが、どうしても難しい場合もあります。その際には、耳栓やイヤーマフラーを用いて、騒音による健康被害や、集中力の低下が起こらないように工夫することも作業管理の一つです。また、客観的には騒がしい環境でなくても、聴覚が敏感で人の話し声があるだけでも、集中することが難しい方は一定数いらっしゃいます。このような場合にも、耳栓やイヤーマフラーの利用を許可することで、集中力が保ちやすくなるでしょう。もちろん、耳栓やイヤーマフラーなどが仕事中に使えるかは仕事の内容によります。例えば、接客業の場合はお客様の声を聞き逃すことができないため難しいでしょう。その場合には、静かな環境でできる業務への転換が可能かどうかの検討が行われることもあります。

③健康管理

健康管理とは、労働者個人の健康の状態を健康診断で直接チェックし、異常の早期発見、その進行や増悪を防止することです。加えて、元の健康状態に回復するための医学的及び労務管理的な措置をすることも含まれます。例えば、視力の低下が原因でミスが多い場合、適切な視力の矯正を行うことでミスが減らせるかもしれません。また、冒頭に述べたように居眠りの原因が睡眠障害であった場合にも、治療により改善することが多いです。

【こちらの記事も】そろそろ検討すべき?オフィス改装の重要性やメリットを解説【初めてのオフィス改装】

さらにポジティブな職場環境を目指して

上記で説明したアプローチは、マイナスをゼロに近づける種類のものです。しかし最近では問題ではないものをさらにプラスにするアプローチも増えています。例えば、リフレッシュスペースとしてトレーニングマシンをオフィスに備えたり、仮眠スペースを作成し昼寝を推奨したりしている会社もあります。眠気に関しては、疾病性があれば、適切な治療が必要となります。しかし病気でなくてもバイオリズム(人が持つ身体、知性、感情の周期)による眠気を感じている方は多いものです。バイオリズムの影響で、起床から約8時間後に眠気が起こりやすいこともその一つです。この場合、仮眠スペースがあれば10~15分程度の仮眠をとり、リフレッシュや、集中力をあげることができます。また、トレーニングマシンで軽く体を動かすことで眠気を紛らわせるという方法もあります。在宅勤務を許可する会社は増えていますが、オフィスのほうが集中できるし、同僚に会えるのでよいという方も多くいるため、テレワークでは実現が難しい自然な雑談が生まれるような工夫が大切です。職場の問題だけに着目するのではなく、心地よい職場環境とは何かという視点を持つことが今後さらに重要になってくるでしょう。

まとめ

今回はオフィスの環境に注目し、働く人の問題を分析して解決する方法、より良く働くためにできる環境の工夫について取り上げました。オフィスに工夫があることで、テレワークが可能な場合でも出勤したい人が増え、オフィスでのコミュニケーションが増えるという相乗効果も生まれます。集中しやすい出社したくなるオフィスについてぜひ検討してみてください。

【参考】事例性 / 厚生労働省
【参考】労働衛生の3管理 / 厚生労働省
【参考】ご存知ですか?職場における労働衛生基準が変わりました / 厚生労働省

*metamorworks, yoshan, C-geo, YUJI / PIXTA(ピクスタ)

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