
出戻りさせてはいけない退職者の特徴とは?再雇用のメリット・デメリットを解説
近年、多くの業界が人手不足に苦しんでいます。それに伴って人材獲得の競争も激化しており、希望通りの人材がうまく採用できないことも多くなっています。
そこで、人手不足や人材のミスマッチ解消の一手として、退職者の再雇用が注目されています。しかし、一度退職した社員を再び採用することはメリットもデメリットもあるのです。この記事では、出戻り社員の雇用について詳しく解説します。
目次
出戻り社員とは?
出戻り社員とは、一度退職した会社に再び雇用される、あるいは自ら希望して再就職する社員のことを指します。
社員が一度離れた企業に戻る理由はさまざまあり、新たな職場での適応困難、キャリアアップできる機会の欠如、元の職場への愛着などが考えられます。
また、企業側から見ても経験豊富で業務に精通した元社員を再雇用することにはメリットがあります。かつては終身雇用の考え方が主流だったため、“退職”という行為にネガティブなイメージがあり、一度退職したら再就職できないケースが多くありましたが、近年では価値観の変化や人手不足の加速から、一度退職した社員が再び自社に戻ってきてくれることを歓迎する企業も増えています。
ただし、出戻り社員の雇用にはデメリットも存在するため、よく理解した上で制度を導入する必要があるでしょう。
出戻り社員制度のメリット
出戻り社員には、業務知識の保有、企業カルチャーへの適応性、採用コストの削減といった明確なメリットが存在します。それぞれのメリットを詳しく解説しましょう。
1.育成コストを抑えられる
出戻り社員の大きなメリットの一つは、自社の業務に最初からある程度慣れていることです。
以前の雇用期間中に得たスキルを活かし、新しい自社業務も比較的早く順応します。以前と業務内容がほとんど変わらなければ、即戦力としてすぐに稼働できるかもしれません。そのため、社員を育成するランニングコストを低減することができます。タイトなスケジュールのプロジェクトが進行している場合や、特定のスキルセットを持つメンバーが急遽必要となった場合にも役立つでしょう。
2.企業の風土・カルチャーに馴染みやすい
一度その企業で働いた経験がある出戻り社員は、企業特有の風土やカルチャーにすぐ馴染みます。
また、社内のルールやマナー、コミュニケーションスタイルを理解しているため、他の社員との摩擦も発生しづらいです。このような理由から、新たに雇用する社員よりもスムーズに業務を開始できるといえます。
出戻り社員のデメリット
出戻り社員の採用にはデメリットもあります。メリットとデメリットを理解した上で制度を導入しましょう。
1.採用制度の整備が必要
出戻り社員を採用する際には、適切な“出戻り社員採用制度”の整備が必要となります。職位や給与、待遇などをそのまま復元するのか、新たな職位や給与を設定するのか、明確な方針が求められます。
また、退職後に経験を積んで戻ってきた場合、その経験をどう評価するのかも問題です。これらを適切に管理しないと、現在いる社員との間に不公平感を生む可能性があります。
したがって、出戻り社員を迎え入れるための具体的なルールや制度を事前に整備し、公平性を保つことが重要となるでしょう。
2.既存社員から不満が出る
出戻り社員の採用には、既存社員からの不満が出ることもあります。とくに多いのが、出戻り社員が以前のポジションにそのまま収まったため、昇進や昇格のチャンスのある社員が、出戻り社員にそのポジションを奪われると感じるケースです。他にも、出戻り社員の退職理由が別の社員とのあつれきであった場合、その人間関係上の問題が再燃してしまう可能性もあります。
これらの問題を避けるためには、“なぜ退職したのか”をしっかり調査した上で、人選を行う必要があります。また、出戻り社員採用制度の意義や理由を既存社員に説明し、納得を得てから導入する必要もあるでしょう。
出戻り社員を雇用する際に注意するべき点
再雇用を行う際には、退職者の特性や選考方法に注意が必要です。適切な判断が企業の未来を左右します。
再雇用してはいけない退職者の特徴
再雇用制度をしっかりと構築し社内整備を行えば、出戻り社員にはメリットしかないように感じるかもしれません。しかし、再雇用を検討する際には、退職者の特徴を把握しておくべきです。
- 業務に対する情熱やモチベーションが低い
- 以前の雇用期間中の業績が低い
- 問題行動を起こしていた
など、再雇用する際には退職者の過去のパフォーマンスや行動を詳細に確認しましょう。
再雇用してはいけない社員のフィルタリング方法
再雇用を検討する際のフィルタリング方法としては、退職理由と再就職を希望する理由を詳細に確認することが重要です。
退職理由を把握する
退職理由が個人業績の低下やコンプライアンス上の不祥事であった場合、再雇用は適切ではないでしょう。また、在籍時に接点があった社員がいれば、現場でどのような人物だったかヒアリングを行うのも必要です。もし、周囲にネガティブな影響を与えるような存在だった場合、再雇用は避けるべきでしょう。
再就職を希望する理由を把握する
再雇用前には必ず面接を行い、現在のスキルセットや意欲、企業に対する理解度を再評価しましょう。「新しい会社でうまくいかなかったから再就職しよう」という理由で、出戻りを希望する社員も少なからずいます。そのような社員をフィルタリングするためにも、以前の会社でどのような成果を出し、どのようなスキルが身についたのかを面接で聞くようにしておきましょう。
また、出戻り社員が以前と同じ役割に就くのか、それとも新しい役割に就くのかを検討し、その適性を評価することも必要です。これらを通じて、企業のニーズに最も適した出戻り社員を選ぶことができるでしょう。
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再雇用制度を取り入れている企業事例
サイボウズの事例
サイボウズ株式会社には、『育自分休暇制度』という特別な制度があります。退職する社員がこの制度を使うと、最長6年間、いつでも同社への再就職ができるという制度です。
この制度の狙いは、サイボウズを離れる人々に「いつでもチームに戻ることができる」という安心感を与え、彼らの自由なキャリア形成を助けることにあります。同時に社外で新たなスキルを得た社員を復帰させて、組織力を高めるのも目的の一つです。
退職時にあらかじめ復帰の権利を与えておけば、復帰意欲の高い退職者だとすぐにわかるため、復帰のプロセスをさらに短縮できます。画期的な制度といえるでしょう。
スープストックトーキョーの事例
株式会社スープストックトーキョーは、退職者向けに『バーチャル社員証』を発行し、退職者と自社との緩やかなつながりを維持する『バーチャル社員制度』を実施。自社の最新情報の共有、イベントへの参加、食事優待などの特典を提供し、社員と退職者の価値観を共有しながら絆を深めます。これにより、再就職する出戻り社員も増えているようです。
人手不足が加速する現代においては、退職者とも関係を持ち続け、価値観の共有を続けることが、良質な人材の母集団を形成するひとつの鍵といえるでしょう。
【参考】バーチャル社員制度 / 株式会社スープストックトーキョー
まとめ
人手不足が加速する現代にあって、出戻り社員の採用は大きなメリットがあります。しかし、デメリットもあるため、再雇用を行うには考慮する点がいくつかあります。
とくに、既存社員に理解してもらうこと、不適格な出戻り社員をフィルタリングすることは制度の運用において必須ともいえるでしょう。成功している企業事例を参考にし、良好に出戻り社員を活用できるような制度を構築していきましょう。
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