
BPaaSとは?BPOとSaaSのいいとこどりサービスを活用しよう
「BPaaS」というサービス、ご存知でしょうか。筆者がいま中小企業経営者におすすめしたいサービスです。まだ日本では提供されているサービスが少ないですが、今回ご紹介させていただきます。
BPaaSは、「Business Process as a Service」の略で、BPO(Business Process Outsourcing:業務プロセス単位での外部委託)とSaaS(Software as a Service:ソフトウェアとして提供される役務などのサービス)の特長を融合した、新しいサービスモデルです。
本記事では、BPaaSの基本的な概念や、BPOやSaaSとの違い、さらには今後の成長可能性について解説します。中小企業の経営者や各事業部門担当者の皆様が、業務効率化を進めるための検討ポイントもご紹介しますよ。
目次
BPaaSとは
BPaaSとは、クラウド上のアプリケーション処理を活用し、業務プロセスを請け負うサービスです。
たとえば、ある中小企業が経理業務の効率化を目指しているとします。BPaaSを活用すれば、請求書処理や決算作業をインターネット上のアプリケーションで自動化。そのアプリケーションの操作も委託先に任せることで大幅に工数を軽減し、同時に人為的なミスを大幅に減らせるでしょう。
また、BPaaSは業務全体をデジタルプラットフォームで完結できるように設計することが可能です。やり方によっては、人的判断が発生する処理にAI機能を組み込んで、さらなる効率化を目指すこともできるでしょう。そうした業者も、今後増えてくると予想されます。
BPOとの違い
BPOは業務プロセス全体、または一部を専門の外部業者に委託する形態です。委託された業務は人の手を介して遂行されるため、業務のクオリティやスピードが担当者の能力や体制に左右される場合があります。
一方でBPaaSは、業務の自動化を前提とし、アプリケーションを活用したインターネットを介して提供されるクラウドサービスです。このため、業務プロセス全体が自動化され、同時に効率化・迅速化が実現でき、安定的な処理が可能となります。
BPaaSの活用では最初に業務処理内容の定義をしっかりと定め、テスト段階で正しく処理が行われるか確認が必要です。しかしこれは、BPOでの委託時と同様。後々の省力化のための適切な投資として、納得できる作業量です。
導入コスト
BPOの初期費用には、プロジェクト設計や外部委託先との契約交渉にかかるコストが含まれます。特に大規模な委託の場合、これらの準備段階として、プロジェクト設計やアウトソーシング先の調整費用に、多額の資金と時間を要することもあるでしょう。また、請求される費用の算出根拠が作業を請け負う人数になってきます。
費用的な効果でいった場合、ものすごく乱暴な言い方をしてしまうと、専任の個人事業主に時間単位の報酬で企業に来てもらう場合と大きな違いはあまりありません。
これに対しBPaaSを活用する場合は、あくまでも利用期間単位での月額料金制を採用している場合が多く、初期コストを抑えながら利用を開始できることが大きな利点です。さらに、クラウドで展開されるサービス利用により、機能や効率性の向上などから必要な経費に対する投資対効果が今後継続的に向上することも期待できるでしょう。
運用
BPOでは、外部業者との密接な連携や調整が必要であり、進捗確認や成果物のチェックに時間が取られることがあります。また、担当者の交代が発生すると、その都度引き継ぎが求められ、業務が停滞するリスクもあるでしょう。
BPaaSでは、標準化された業務プロセスが提供されるため、担当者に依存することなく、システムを介して一貫したサービスを受けられます。また、業務の進捗状況はリアルタイムで確認でき、管理の手間も削減されるでしょう。
SaaSとの違い
SaaSは、特定の業務を支援するためのソフトウェアを提供するサービスです。たとえば、経理向けのSaaSは請求書作成や帳簿管理を支援しますが、業務全体の運用はユーザーが行う必要があります。
一方でBPaaSは、業務プロセス自体をサービスとして提供します。たとえば、請求書の処理だけでなく、送付・確認・支払い完了までを一連のプロセスとして自動化することが可能です。
導入時のコスト構造
SaaSでは、ライセンス費用やカスタマイズ費用が発生する場合があります。また、運用自体は社内で行うため、システム管理や社員のトレーニングにもコストがかかるでしょう。BPaaSでは、これらの負担を軽減しつつ、プロセス全体を包括的にサービスとして受けられるため、運用負担が少なくなります。
今後の伸びしろが大きいBPaaS
BPaaSは日本市場でも徐々に浸透しつつあり、政府のデジタル化推進政策が普及を後押ししています。中小企業向けの補助金制度を活用してBPaaSを導入し、受注管理や在庫管理を効率化した事例など、活用の幅が少しずつ広がりつつあります。このような取り組みは、業務効率を向上させるだけでなく、競争力強化にもつながるでしょう。
また、中小企業が直面する、コストや人材不足といった課題を解消する手段としても注目されています。特に、ITリテラシーが高くない企業でも導入しやすいことが特徴です。
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BPaaS活用ができる分野・業務
BPaaSはどのような業務に活用できるか、わかりやすく模範になりそうなパターンを例示いたします。今後、業務の共通化またはソリューション化できそうな範囲は、順次対応分野を広げられることが予想されるでしょう。
経理業務
経理は、最も幅広く対象となることが考えられる領域です。請求書処理や経費精算の自動化などは現在も進んでいる業務ですが、台帳登録や支払処理などにおいては、担当者は「内容を確認し承認する」「データの集計結果を分析する」といった作業に集中できる環境が、早く整うことが考えられます。
人事管理
給与計算や社会保険関係の処理、有休日数の算出などは、すでに対応が始まっている分野です。採用プロセスにおいても、募集・応募管理や勤務評価支援などは、AIも活用した支援が日本でもリリースされ始めています。
カスタマーサポート
カスタマーサポート分野も、対応が進んでいます。メールやチャットボットなどを使ったオンラインQA対応などは、すでに読者の皆様も消費者側としての利用で思い当たるのではないでしょうか。
営業支援
一般にSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)といわれる領域で、社内での活用が難しいとされてきました。ノウハウを持った外部組織に委託してしまい、運用はクラウドのアプリケーションを使用、分析はAIも用いて営業活動を可視化・効率化する、という相談が、実はいま筆者に最も多い案件なのです。
具体的には、「過去に社内のエース営業が成功した案件のデータをクラウド上で管理する→新人が顧客要件を入力すると、追加で確認すべき質問項目やその後のアクションガイドが続けて送信される→対応内容と結果を入力すると、さらなる分析や後続のアクションをアドバイスする→同時に上司には進捗が要約されたレポートが届く」といった具合です。
これは、クラウドサービスでは実現しにくく、BPOだと多くの人力を必要とするので対応負荷も金額も膨大になることが予想されます。BPaaSならではの、初めてROI(投資利益率)が現実的な着地になるよい例です。
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BPaaS活用を成功させるためには
全てではありませんが、BPaaS活用の際に成功のポイントとなる点です。ご参考にしてください。
継続的な改善に努める
BPaaS導入後も、定期的に業務プロセスを見直し、最適化を図ることが重要です。削減できた工数を新たな業務プロセスを検討・設計にあてることがベストでしょう。テクノロジーやツールは日々進化しており、最初はROIに見合わないソリューションも、日進月歩の技術進化の中ではあっという間に廉価になることがしばしばです。
また、BPaaS環境により業務を俯瞰的に見渡すことができると、効率化できるポイントが見えてくることも少なくありません。特に他業務との連携部分などに目が届くようになると、抜本的改革が視野に入ることもあります。全社的効率化や生産性向上の機会を野心的に目指していきましょう。
得られるデータを活用し、社内にEBPM的行動を促す
単に効率化を実現するだけでは、事業の発展に限界があります。大事なのは、デジタル化で得たデータをさらなる業務改善へのインプットにすること、また、新たな施策を打ち出すための有用な資料とすることです。全社的に意識できるよう、社員に促しましょう。
BPaaS導入時のポイント・注意点
BPaaSは便利な一方で、導入時には気づきにくい注意点もありますのでご紹介しておきます。
セキュリティ対策を確認する
クラウドベースのサービスであるため、セキュリティ対策が万全であるかを事前に確認しましょう。これはクラウドではないBPOの際にも同じく注意が必要です。サービスの運用方法を確認しておかないと、思わぬタイミングで社外秘のデータや個人情報保護に関わるようなデータが、自社の検知できないところで漏洩してしまう恐れがあります。
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特定企業に依存しないようにする
特定のBPaaS企業で導入が成功すると、同じ企業と継続して広くお付き合いしてしまいたくなってしまうものです。しかし、各企業で得意とする領域やソリューションは異なります。また、新しい技術が突然廉価で利用できるようになることもあるでしょう。
常に自社に最適なサービス・企業を調査し続けることに加え、現在取引のある企業についてもサービスのアップデート情報を発注側から問い合わせるくらいの習慣があったほうが、先方も緊張感をもってサービス開発に取り組んでくれるはずです。
まとめ
BPaaSはBPOとSaaSの利点を融合した新しいサービスモデルとして、中小企業の業務効率化を大きく支援します。これを活用することで日常業務の負担を軽減し、より戦略的な活動に集中できるようになるでしょう。また、今後の進歩は加速度的に進んでいくと筆者は考えます。
自社の進化・変革にフレキシブルに対応できる体制を整えるため、BPaaSを積極的に活用してみませんか。
*出典:NDAB Creativity / shutterstock