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TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 複雑化した有給休暇管理…管理のポイントと効率化のコツを解説!
有給休暇の管理

複雑化した有給休暇管理…管理のポイントと効率化のコツを解説!

社員の有給休暇の管理に苦労されている会社も多いのではないでしょうか?

2019年に労働基準法が改正され、年次有給休暇の管理方法が変わりました。コロナ禍の影響もあり、多様な働き方が推奨される世の中になっています。

その影響で有給休暇の取得が複雑化し、誰がどれだけ有給休暇を取得したのか管理するのに多大な工数がかかる課題が発生しているのです。

そこで本記事では、有休休暇の取得が複雑化する世の中において、効果的な管理方法について解説します。

なぜ有給休暇の管理が必要か

2019年から年次有給休暇の取得が義務化

2019年に労働基準法が改正され、社員に対し年間5日以上の年次有給休暇を取得させることが企業に義務づけられました。違反した企業には最高で30万円の罰金刑が科される可能性があります。

このような改正が実施された背景には、日本の労働者の年次有給休暇の取得率が極端に低かった点が挙げられます。

厚生労働省による『平成31年就労条件総合調査』によると、2019年時点の年次有給休暇の取得率は平均で51.5%となっており、半数程度しか取得できていなかったのです。

法律で付与が義務づけられているのに取得が進んでいない状態を鑑みて、法改正をして5日間の取得を義務化するに至りました。ただし、5日はあくまでも最低限の義務であり、労働者がより多くの年次有給休暇を取得できるような環境が望ましいです。

【もっと詳しく】年5日の年次有給休暇の取得義務とは?

時間単位や半日単位の取得での複雑化

有給休暇には種類があり、1時間単位で取れる有休休暇(時間単位有給)や半日単位で取れる有休休暇(半日有給)があります。また、これらの有給休暇の取得には以下のようなルールが定められています。

  • 年5日間は必ず社員に有給を取得させる義務がある
  • 時間単位有給は年5日間を上限として取得できる
  • 年5日間の有給取得義務の中に時間単位有給を含めてはならない。つまり時間単位有給とは別に1日単位の有給を5日分取らないといけない。
  • 半日有給は時間単位有給には含まれない。

このようにかなり複雑でややこしいルールとなっています。また、他にも子の看護休暇・介護休暇や計画年休といったルールとの兼ね合いもあります。

このように複雑なルールを運用するには通常の管理の仕方では煩雑です。したがって、効率的な管理方法を導入する必要があるのです。

【よくある質問】有給休暇や半日単位、時間単位で取得することはできますか?

年次有給休暇管理簿の作成義務化

2019年に改正された労働基準法では年次有給休暇管理簿の作成義務も規定されました。年次有給休暇管理簿とは年次有給休暇が10日以上付与された社員の有休取得状況を記録した帳簿です。

年次有給休暇管理簿には「基準日(有給が付与された日)」「基準日から1年間で取得した有給の日数」「取得した年月日」を記載しなければなりません。また、年次有給休暇管理簿は3年間保存する義務があります。

【総務の森サイトの無料書式】
年次有給休暇取得計画表
有給休暇管理表(取得累計あり)

有給休暇管理のコツ

ではどのように年次有給休暇を管理すれば良いのでしょうか。主に以下の3つが考えられます。

1:有給を取りやすい職場環境を作る

社員同士が牽制し合って有給が取りづらい空気になってしまうと、社員への個別の注意喚起などを頻繁にしなければならず、手間がかかります。普段から有給を取りやすい職場環境を作るのが重要です。

そのためには、例えば以下のような対策が考えられます。

  • 有給の取得は悪ではなく、むしろ推奨されると社員を啓発する。
  • 人手を増やす。
  • ノウハウの共有やマニュアルの整備により、属人的な仕事を無くす。

2:基準日を統一させる

基準日を統一するには?

有給の管理の煩雑さを低減させるには、基準日の統一が効果的です。基準日とは有給が付与される日です。

労働基準法では年次有給休暇は以下のタイミングで付与されます。

  • 雇い入れの日から6か月経過している
  • その期間の全労働日の8割以上出勤している

つまり、このルールで有給を付与すると、人によって基準日がバラバラになってしまいます。そこで、全社員の基準日をあえて一律で同じ日になるように有給を付与すれば管理を簡略化できます。このように基準日を統一することを“斉一的付与”と言います。

基準日統一の注意点とは?

注意しなければならないのは、“斉一的付与”を行ったとしても、社員にとって労働基準法で定められたルール(上記)より不利な扱いになってしまうと労働基準法違反となる可能性があることです。

例えば、全社員の基準日を4月1日にするとします。すると4月1日に入社したAさんは入社時に10日間の有給がもらえます。本来のルールであれば10月1日に10日間付与されるところを前倒して4月1日に付与しているので、Aさんにとって有利な条件となり、違法にはなりません。

ところが、4月1日のみを基準日とすると5月1日に入社したBさんは翌年の4月1日まで11ヶ月間にわたって有給が付与されません。本来は11月1日に10日間付与しなければなりません。これはBさんにとって不利な条件となるため、違法の可能性が出てきます。

法律を遵守するための対策は?

これを防ぐために対策を講じなければなりません。例えば以下のような手段が考えられます。

  • 年に1回の基準日に加えて入社日にも10日間付与する。
  • 基準日を年に2回にし、入社時期によってどちらかの基準日を適用する。

また、斉一的付与を実施する際にも本来の労働基準法のルールである「その期間の全労働日の8割以上出勤している」は守らなければなりません。

つまり、本来なら10月1日に付与されるところを前倒して4月1日に付与した場合、4月1日から10月1日までは全期間出勤したものとみなして出勤率を算定します(厚生労働省通達平成6年1月4日基発第一号による)。

3:勤怠管理システムを導入する

有給を効率的に管理するには勤怠管理システムの導入が効果的です。勤怠管理システムとは社員の勤怠状況を効率的に管理できるように作られたITツールです。

勤怠管理システムには主に以下の機能が付属しています。

  • 出勤退勤の打刻
  • シフトや勤務時間の管理
  • 年次有給休暇の管理
  • 休暇取得状況の管理
  • スケジュール管理
  • 集計・レポート機能

つまり、このシステムを使えば出勤率の集計、有給の付与や取得、申請のワークフローまで自動化や効率化ができるのです。サービスによっては年次有給休暇管理簿を出力してくれる製品もあり、作成の手間を省けます。

【こちらの記事も】デジタル化で業務効率を目指す「3つのクラウドサービス」

複雑化した年次有給休暇を工夫して管理しよう

年次有給休暇は社員のリフレッシュのための大事な制度であり、法律で細かくルールが規定されています。

複雑なルールに基づいて効率的に管理するには、できるだけ統一的な運用方法が取れるように工夫したり、ITツールを使って効率化したりするなどの対策が必要です。

また、法律で細かくルールが規定されたのは日本企業の有給取得率があまり高くなかったからであり、社員が年次有給休暇を取りやすい環境を作るのも重要です。工夫して効率よく管理していきましょう。

【こちらの記事も】「有給休暇」正しく理解できてる?取得義務の解説&よくある誤解と正解まとめ

【参考】
平成31年就労条件総合調査』 / 厚生労働省

*SoutaBank、hide、EKAKI、jyugem、kikuo / PIXTA(ピクスタ)