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「引用」での著作権上での注意点

その引用大丈夫?中小企業が気を付けるべき「著作権」を解説

2022.04.25

会社のウェブサイトやSNSに写真をアップロードしたり、社内の掲示板に他の方の作ったコラム記事をアップしたりしていませんか? 何気なくおこなっているこれらの行為ですが、実は著作権法に違反してしまっている場合があります。

そこで今回は、実は身近な権利である“著作権”について、中小企業が注意すべきことを解説します。企業のPRをする広報担当はもちろん、営業・企画など提案資料を作成する社員には特に注意喚起したいトピックです。

そもそも著作権とは?

まずは、「知的財産権や著作権とは何か」という部分のおさらいからはじめていきます。知的財産権は知的な創作活動によって、新しい価値を生み出した人に与えられる経済的な権利です。そして、著作権はその中の1つとなります。

そもそも知的財産権は、産業財産権と著作権とに分類されます。

産業財産権

産業財産権は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権で構成され、主に産業における無形の権利を守る側面で使用されます。産業財産権は、特許庁に出願し登録されないと権利として成立しません。

著作権

著作権は、経済的な側面を持ちつつも、本質的には文化的な創作物を保護の対象としています。産業財産権とは違い、創作物の誕生とともに自然発生的に権利化される特徴があります。

さらに著作権は、著作権と著作人格権に分けることができます。著作物は文化的な創造物ですので、その“財産的な価値”と“創造したことの誇り・気持ちの価値”があると考えられ、後者を保護するのが著作人格権となります。

著作物の具体例

次に、著作物とされるものを下記に列挙して確認しましょう。想像より多くのものが著作物に含まれるのがわかると思います。例えば、最近、学校教育などでも注目されているプログラミングで作成するプログラムなども、個人の考え方が反映されるため、著作権が発生します。

(1) 一般的な著作物

言語の著作物:論文、小説、脚本、詩歌、俳句、講演など
音楽の著作物:楽曲、楽曲を伴う歌詞など
舞踊、無言劇の著作物:日本舞踊、バレエ、ダンス、舞踏、パントマイムの振付など
美術の著作物:絵画、版画、彫刻、漫画、書、舞台装置など(美術工芸品も含む)
建築の著作物:芸術的な建築物など
地図、図形の著作物:地図、学術的な図面、図表、設計図、模型など
映画の著作物:劇場用映画、テレビドラマ、ネット配信動画、ビデオソフト、ゲームソフト、コマーシャルフィルムなど
写真の著作物:写真、グラビアなど
プログラムの著作物:コンピュータ・プログラムなど

(2) その他の著作物

二次的著作物:著作物(原著作物)を翻訳、編曲、変形、翻案(映画化など)し創作したもの
編集著作物:百科事典、辞書、新聞、雑誌、詩集など
データベースの著作物:編集著作物のうち、コンピュータで検索できるもの

改正が相次ぐ著作権法

著作権法は、著作物の活用方法の多様化にあわせて、年々アップデートされています。直近ですと2020年と2021年に改正が行われたのですが、今回はより身近で中小企業の実務にも関わりそうな2020年の改正のポイントを中心に確認します。

「写り込みに関する権利制限規定」とは?

2020年の改正では、冒頭に記載したSNSやウェブサイトにアップロードする写真などに関して、重要な変更が成されました。それは、『写り込みに関する権利制限規定』です。

日々大量にアップロードされる写真などの撮影物のなかには、他者の著作権侵害を目的とせず、また著作者の経済的・精神的な権利を侵さない範囲のものも多く存在します。これらの写り込みに関して適法性の範囲を拡大したのが、2020年改正の『写り込みに関する権利制限規定』となります。

「写り込みに関する権利制限規定」の改正内容は?

これまで同法では写真撮影や音声の録音、動画の録画などが、主にこの“写り込み”の対象とされていました。しかし、デジタルネットワークの普及によりこれらだけでは保護できないものが増えたため、本改正では、時代背景にあわせてスクリーンショットやネットでの生配信、CG化などを行う際の写り込みも、幅広く含める方向で明示されました。

規制が厳しくなる一方で、適法の範囲も拡げられています。著作者に生じる経済的・精神的な不利益の有無や程度に応じて、利用の柔軟性を高める方向で権利制限の対象・範囲を見直されたのです。

本改正を簡単に言い換えると「(時代に合わせて)規制の対象が広がる代わりに、適法対象も拡大されて、悪質ではない写り込みを許容する」と解釈することができます。企業活動においても、こういった原理原則を理解して、しっかり適法範囲で運用することを心掛けましょう。

実際に気を付けるべきこととは?

“写り込み”の対象が、これまでの写真、音声、動画にとどまらず、スクリーンショット、生配信も含まれるようになりました。これらを会社のウェブサイトやSNSなどで発信する場合には、“写り込んでいるもの”や“背景に入れているもの”に他者の著作物が含まれていないかを一度立ち止まって確認してみましょう。

例えば、“キャラクターのぬいぐるみ”などが背景として写り込んでいる程度であれば問題ない可能性が高い一方で、それがクローズアップされたりしていると著作権法違反となる可能性が出てきます。

このあたりの線引きは曖昧さがありますが、しっかり意識して確認をすることが重要です。

(※詳しくは文化庁のWEBページでご確認ください)

「引用」の著作権上の注意点

“引用”に係るルールは、直近で改正されたものではありません。しかし、企業活動の中では使う場面が多いので本記事でも触れておきましょう。

知識としては理解している方も多いかと思いますが、改めて以下の4つのルールを確認しておきたいと思います。引用の際に守らなければならないルールは下記の4点です。

(1)他人の著作物を引用する必然性があること
(2)鉤括弧(かぎかっこ)をつけるなど、自分の著作物と引用部分とが区別されていること
(3)自分の著作物(≓主体著作物)と引用する著作物との主従関係が明確であること
(4)出所の明示がなされていること。

特に(4)の出所明示でよくある違反として、例えば、社内資料のグラフなどで出所が明示されてないことなどありませんか? 忘れるとドキュメントのエビデンス性も弱くしてしまうばかりか、著作権違反になります。

また(2)も忘れがちです。これを忘れると、見え方としてはいわゆる“盗作”に近いものになってしまいますので、ご注意ください。

 

今回は、身近な事例から著作権に関して確認をしてみました。知的財産権は、正しく理解すれば様々な面で効率的にビジネスに活かすことができます。

最新の情報などは、特許庁や文化庁などの公的なウェブページ他、専門の弁護士さんなどがご自身のサイトでアップしてくれていたりします。自社の使い方に照らし合わせ、ぜひ積極的に活用をしてみてはいかがでしょうか。

【あなたにおすすめ】他人事だと思ってない?中小企業が「知財の権利化」をすべき理由と始め方を解説

【参考】『写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する報告書』 / 文化審議会著作権分科会

*manoimage、MediaFOTO、CORA / PIXTA(ピクスタ)