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【安易な押印は要注意】覚書とは?契約書と覚書の違い、使い分けを弁護士が解説

2022.07.28

ビジネスをしていると取引先から「覚書を結んでおきましょう」という提案を受けることはないでしょうか。このような提案を受けると、覚書と契約書は何が違うのか理解しないまま「何となく“契約書”より軽いものなのでは?」と考え、よくわからないままにその覚書に押印してしまっていませんか?

しかし、“覚書”というタイトルのものであっても、“契約書”と同じように当事者間に法的な拘束力を生じさせることがあります。今回は“覚書”について解説します。

覚書とは?契約書との違い

“覚書”には明確な定義があるわけではありませんが、一定の合意内容などを書き記したもので、後述するように契約に付随する様々な場面で使用されます。覚書には、契約当事者の一方だけの署名押印等がなされている場合もあれば、双方の署名押印等がなされていることもあります。他方で、“契約書”もまた、取引当事者間の合意内容が記載され、契約当事者の署名押印等がなされている書面です。

“覚書”と“契約書”は重なるところはありますが、一般的には、“覚書”の方が“契約書”よりも分量も少なく、簡易で限定的な内容が記載されていることの方が多いでしょう。

【こちらの記事も】原契約とは?場面ごとで異なる意味や現契約との違いをわかりやすく解説

覚書に法的拘束力はある?

「覚書は契約書よりも分量も少ないので、法的拘束力はないのでは」と思われるかもしれませんが、内容的に分量が少ないからといって法的拘束力も弱いというわけではありません。そもそも“契約(≠契約書)”というのは、契約当事者の意思表示が合致を指し、契約が成立する(すなわち、合意の法的拘束力が発生する)ためには、意思表示の合致だけで足り、原則として契約書を作ることは必要ではありません(諾成主義。例外的に、保証契約などは書面が必要です)。しかし、口頭だけだとその合意の内容を証明することが困難なので、取引社会では契約成立を証明するものとして“契約書”作成します。つまり、契約書は契約の内容を示す“証拠”ということになります。

双方の意思表示の内容が記載され、双方の署名押印等がある書面は、名称が“契約書”であっても“覚書”であっても、もっと言えば、書面にタイトルがない場合でも、いずれも“契約”を証明するための証拠として機能します。したがって、たとえ覚書であっても、双方の意思表示の内容が記されており、双方の署名押印等がなされているような場合には、契約書と同じように法的拘束力を持つことになります。

【こちらの記事も】自社に不利になってない?弁護士が伝えたい「契約書で確認すべき項目」6つと注意点

契約書と覚書の使い分け

上記のように、“契約書”も“覚書”もいずれも契約成立の証拠としての機能を有することになりますが、用いられる場面は若干異なります。

契約書は、取引が開始する時に“取引条件が確定した場合”に交わすものです。他方で、覚書は、“契約書に付随する書面”として作成されることが通常です。例えば契約書中に「詳細は別途協議する」というように定められている場合、別途行われた協議の内容を記す場合に使うことがあります。また、一旦交わした契約書の内容を一部変更するような場合にも、変更後の内容を覚書の形で記すこともあります。

覚書を作成する場合には、「●月●日付けの●●契約書に関し、次のように合意する」というように、その原契約との紐づけを忘れないようにしましょう。また、通常は時間的に後に締結される覚書が優先しますが、解釈を明確にするために覚書と契約書の優先関係についても明記しておくことがポイントです。例えば、「本覚書と●●契約書とで内容に齟齬・矛盾が生じた場合、●●契約書の記載が優先するものとする」といった文言が考えられます。

覚書に印紙は必要?

「覚書は、メモみたいなものなので印紙税は不要」と思われている方もいるかもしれません。しかし、印紙税法では、「“契約書”とは、契約証書、協定書、約定書その他名称のいかんを問わず、契約の成立」等を証すべき文書を指します。たとえ、“覚書”というタイトルであっても、契約の成立を証明する文書である以上は、契約書と同様に課税文書にあたりますので、印紙税が必要になります。具体的な印紙税額は以下の国税庁のサイトを参考にしてください。

【参考】印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)/ e-Gov
印紙税額の一覧表(第1号文書から第20号文書まで)/ 国税庁

覚書だからといって軽く見るのは要注意!

“覚書”と聞くと、何となく契約書ほど重要ではないメモ書き程度の書類だという認識をもってしまうかもしれません。しかし、そこに当事者間の合意内容が記載されているような場合は、契約の内容を証明する証拠としての効果を果たすことになります。覚書の締結を求められた場合でも、軽く考えるのではなく、その内容をしっかりと確認し、納得しない点があるのであれば、安易に押印すことは控えましょう。

【こちらの記事も】契約前に確認したい3つの条項とは?実際にあった中小企業の詐欺事例と対策

【参考】印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)/ e-Gov
印紙税額の一覧表(第1号文書から第20号文書まで)/ 国税庁

*takeuchi masato、emma、Claudia、heisj、タカス / PIXTA(ピクスタ)