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給与水準 モデル賃金

その給与、適切?給与体系を可視化する「モデル賃金」の作り方

2022.08.24

働き方改革の動きに伴い、同一労働同一賃金の制度がスタートしました。これは、簡単に言ってしまえば、同じような働き方をしている人には同じような待遇をすることを義務づけるものです。同一労働同一賃金を踏まえて、会社の給与体系は適正に制度設計されているでしょうか? また、その運用は適切になされているでしょうか?

今回は、自社の給与体系を可視化し、見直すための1つの方法でもあるモデル賃金について解説していきます。

モデル賃金を作成するメリット

モデル賃金とは、入社した社員がどのように昇給や昇格を経て、いつどのくらいの賃金水準となるのかという標準的なデータをまとめたものです。

モデル賃金を作成するメリットは、企業にも社員にもあります。企業側のメリットは、将来の人件費の予測を立てることができるため、社員の採用計画や予算の把握など、企業の経営戦略を立てていく上で重要な情報となります。社員側から見ても、勤続年数がどのくらいで将来どこまで賃金が上がっていくのかという展望を知ることができ、モチベーションアップにつながる可能性があります。

モデル賃金を公開するメリット

モデル賃金を社員に公開するメリットは、“透明性”や“公平性”を得られることです。モデル賃金を作成することで、標準的な賃金額が分かるようになります。その標準的な金額から乖離している場合は、その理由があるはずです。お手盛りのような形での賃金額の決定は、正当な理由のない乖離として防ぐことができます。社員からの質問も出てくるでしょう。そのようなやり取りを経て、より明確で公平な賃金制度になっていくことが期待できます。

一方で、不満材料に繋がったり不公平感を生んだりと、社員の不信感を醸成することもあり得ます。公開するかどうかは会社と社員との関係性や組織風土等を慎重に見極めて検討する必要があるでしょう。

モデル賃金の作り方

さて、少し話を戻してモデル賃金の作り方を解説します。冒頭に記載した通り、モデル賃金とは、社員の年齢、職種、勤続年数などをもとに、どのくらいの賃金水準になるかを示すデータです。

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①給与体系の把握、賃金テーブルの作成

モデル賃金を作成する上でまずすべきことは、社内の給与体系をしっかり把握することです。例えば、

・基本給:毎年の人事評価によって昇給・降給がされる。
・勤続給:勤続年数に応じて、毎年2,000円ずつ上がっていく。
・役職給:就いている役職に対して、定められた額が支給される。
・扶養手当:扶養家族がいる場合に支給される。

といったように、どのような支給項目があり、それらがどのようなルールで支給されているのかを把握します。実際に整理してみると、「この手当は何のために支給されているのか分からない」といったことがよくあります。同一労働同一賃金の観点からも良くないので、モデル賃金を作成しないとしても定期的な見直しは行うべきでしょう。

また、これら各種手当の賃金テーブルを作成しておくと、より明確な運用が可能となります。

【こちらの記事も】給与の諸手当とは?手当の種類と税金の取り扱い【経営の基礎知識をわかりやすく解説】

そして賃金テーブルを作成していきます。全体的な昇給イメージから各手当に振り分けていくと良いでしょう。

例えば、新卒22歳で月20万円、42歳で月40万円の給与にしたいという場合は、概ね毎年1万円の昇給が必要です。この1万円を基本給や勤続給、各種手当にどのくらい振っていくとバランスが取れるかを試しながら作っていくようなイメージです。

最近では、完全な年功序列型の賃金テーブルは少なくなってきています。上記の例でいうと、勤続給にはあまり割り振らず、能力給などの割振りを大きくするテーブルが増えています。

②キャリアアップモデルの検討及び等級表の作成

続いて、社員のキャリアアップを想定する必要があります。例えば、標準的に勤続3年ほどで主任になる、勤続10年ほどで係長になる、勤続20年ほどで課長になるなど、標準的なキャリアについて検討します。

この際に、どのような基準をクリアしたら、役職が上がっていくかという基準表を作成することも必要になるでしょう。

【こちらの記事も】昇給の種類とは?中小企業が実施すべき「給与制度」の作り方

③モデル賃金の作成

①、②で定めた給与体系をもとに表やグラフでモデル賃金を作成します。表だけでなく、プロット図などグラフに落とし込むことで視覚的にも確認しやすくなります。

④モデル賃金のシミュレーション

モデル賃金作成後は、妥当性のあるものとなっているかを確認します(一定の役職以上の社員のみ著しく給与が高くなっていないか等)。

また、モデル賃金作成時にはあまり意識されない点ですが、実際の給与には残業代が絡んできます。標準的な残業時間で残業代を計上したら、残業が発生しない管理監督者よりも残業代が支給される一般職の社員の賃金額の方が高くなってしまうといった逆転現象が発生する可能性があります。給与体系を全体的に点検するよう注意しましょう。

まずは給与体系の点検から始めましょう

モデル賃金は作成していないという会社も多いです。しかし、安心して働ける職場にする、長期的な雇用を狙う等作成するによるメリットがあることは先述の通りです。

会社で給与規程を定めてはいるものの、運用がしっかりできていないケースは実に多いです(給与規程に載っていない手当が支給されているなど)。実際にモデル賃金を作成してみると、その歪みや矛盾に気づける場合もあります。思わぬ労使間トラブルを招かないためにも、まずは第一歩として、給与体系の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。

【こちらの記事も】社員の給与の決め方は?給与決定の手順とコツ【経営の基礎知識をわかりやすく解説】

*tadamichi、NewStella、マツ / PIXTA(ピクスタ)

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