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諸手当 

給与の諸手当とは?手当の種類と税金の取り扱い【経営の基礎知識をわかりやすく解説】

2022.08.09

使用者は、会社のために働く社員に対して、労働の対価として給与を支払わなければなりません。給与には、さまざまな諸手当が含まれており、法律で義務付けられているものや任意で設定できるものなど、いろいろな種類や設定のルールがあります。

今回は、諸手当とはそもそもどのようなものを指すのか、どのような種類があるのかを順に解説していきます。また、手当にまつわる税金の取扱いや知っておくべきポイントについてもあわせて伝授しますので、給与制度をこれから整備していこうと考えている方はぜひ参考にしてみてください。

諸手当とは

諸手当とは、使用者が従業員に対して支払う給与の一種で、社員の能力や状況などに応じて上乗せ支給する金額の総称です。

給与のうち、支払の基本となるベースの金額を“基本給”といいます。基本給は、社員の学歴や職歴、スキルの高さ、仕事における責任の度合いなどの要素を社内の基準に照らし合わせ、総合的に判断した上で算出されるものです。諸手当は、基本給に上乗せされる金額のことで、社員が仕事をする際に必要とされる経費を支払うため、または社員の能力に見合った評価を行うため、そして仕事に対するモチベーションを高めるためなど、さまざまな理由から設定されます。

【こちらの記事も】社員の給与の決め方は?給与決定の手順とコツ【経営の基礎知識をわかりやすく解説】

諸手当の種類

諸手当と一言でいっても、その種類はさまざまです。法律で支払いが義務とされている手当もあれば、会社が任意で支払いを決めることができる手当もあります。内容別に詳細を見ていきましょう。

①法定手当

法定手当としての諸手当には、主に“残業代”が挙げられます。正式には“割増賃金”といい、残業をした場合に支払われる“時間外手当”、残業が深夜に及んだ場合に支払われる“深夜残業手当”、休日労働をした場合に支払われる“休日手当”などがあります。これらの手当は、いずれも労働基準法により定められた割増率で算出された一定額を支払うことが義務づけられています。

昨今では、長時間労働による過労問題が深刻化していることから、割増率は法改正を経て増加傾向にあります。割増賃金の支払いを怠った場合は法律違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑に処せられる可能性があるため注意しましょう。

【参考】月60時間を超える時間外労働の 割増賃金率が引き上げられます / 厚生労働省

【こちらの記事も】固定残業代は明確にすべき?みなし残業制度のメリット・デメリットと注意点

②任意手当

前述①の法定手当とは異なり、法律による明確な規定がなく、会社が状況に応じて任意設定することができる手当をいいます。主な手当の種類には次の内容が挙げられます。

■与えられる仕事に応じた手当

会社で働く社員には、すべての仕事が一律に与えられるわけではありません。役職や社員のスキルなどから総合的に判断された仕事が個々に与えられるため、仕事の量や難易度、内容はさまざまです。ここでは、仕事の内容に応じて設定する手当を紹介します。

・営業手当:営業職が必要とする経費の補てんとして支払われる手当のことで、接待費用や外回り用スーツなどにあてがわれるケースが多くみられます。
・役職手当:部長や課長など、会社で決められた役職のつく社員に支払われる手当のことです。
・インセンティブ給:売上金額や貢献度合いに応じて支払われる手当のことで、売上金額や顧客獲得件数に応じて単価を定める場合が多いです。

■社員の能力に応じた手当

社員一人ひとりが持つ能力が、どれほど会社のためになるかを金額化して支給される手当のことです。主に次の内容が挙げられます。

・資格手当:会社の発展に貢献するとみなされた資格を持つ社員に対して支払われる手当のことで、資格の難易度が上がるにつれ金額が高額に設定される場合が多くみられます。
・技術手当:特に専門職の者が活躍する職場に多くみられる手当で、高い能力を持つ者や危険な作業を行うものに上乗せされるケースが多いです。

■社員の状況に応じた手当

社員の仕事能力や役職などに関係なく、社員を取り巻く状況に応じて必要とされる金額を支給する手当のことです。

・地域手当:異なる地域の社員が混在する職場で設定されるケースが多く、地域ごとに生じる物価の差などの理由から、社員の生活内容に差が生じるのを防ぐために、補てんとして支払われる手当です。
・住宅手当:賃貸物件に住む社員向けに家賃の補てん、持家の社員向けにローン支払いの補てんをするために支給される手当をいいます。
・家族手当:扶養家族に応じて支払われる手当のことで、社員が安心して生活できるように設定されるものです。
・テレワーク(在宅勤務)手当:在宅で勤務している社員に対して、通信費や光熱費など在宅勤務に必要な費用を補助するために支給される手当です。
・インフレ手当:物価上昇に伴う生活費の増加に対応し、社員の生活への不安を払しょくする目的で支給される手当をいいます。

■実費支払に応じた手当

社員が仕事をする際に支払っている実費を弁償するための手当のことです。

・マイカー手当:車通勤の社員に対し、距離に応じてかかるガソリン代を社内基準に応じて算出し、支払われる手当です。
・通勤手当:公共交通機関の実費や定期券の現物支給、または実費でかかったガソリン代を補てんする手当のことです。

手当の税金の扱い

これらの手当は内容に応じて税金の取扱いが異なります。具体的には、住民税や所得税など、税金の課税対象となる手当と、課税対象とならない手当があることを覚えておきましょう。

①課税対象である手当

課税対象となる手当は、主に次の通りです。

■法定手当:割増賃金
■任意手当:役職手当・資格手当・住宅手当・家族手当

②課税対象ではない手当

課税対象とならない手当は、次の内容が挙げられます。

■法定限度(法律で通勤手段別に定められた基準)以下の通勤手当
■4,000円以下の宿直手当・日直手当
■通常必要とされる範囲内での出張手当・転勤手当
■教育研修費や講習費などの学資金(役員や使用者親族への支払時を除く)

【参考】通勤手当の非課税限度額の引上げについて / 国税庁

諸手当支給時の注意点

諸手当を新たに設定する場合は、就業規則や賃金規定などでルール化する必要があります。手当の詳細や計算方法などを項目別に記し、内容に変更が生じた場合も随時内容をアップデートしなければなりません。諸手当は賃金の一部であり、受け取る社員の生活を左右する重要な存在です。支払う手当内容を定めた際には、きちんと社内ルールとして明確にする対応を取りましょう。

【もっと詳しく】【よくある間違いも】就業規則の変更が必要となるケースと進め方チェックリスト

また、諸手当の扱いで問題になる点は、賞与や退職金などの一時金を算出する際に基準とする賃金に諸手当を含めるかどうかです。賞与や退職金は任意支払であるため、諸手当を含めた計算にするか否かは会社の判断に任されますが、一般的には基本給のみで算出するパターンが多くみられます。基本給のみで計算する方法を取る場合、諸手当を含めて計算をするよりも賞与や退職金の金額を削減することができるためです。ただし、これまでは諸手当を含めた金額で計算をしていたところを「今後は基本給のみで計算する」というルールに変更する方法を取った場合、不利益変更と扱われる危険性があるため注意が必要です。

まとめ

諸手当の金額については、各企業の経営状態や業種、規模などに応じて異なるのが通例です。手当の金額が高すぎると経営を圧迫することになり、低すぎる場合は社員のモチベーション低下につながる可能性があります。適切な金額を算出するため、社内状況の洗い出しとともに入念な検討を重ね、必要に応じて税理士や社会保険労務士などの専門家へ相談をするとよいでしょう。

【こちらの記事も】昇給の種類とは?中小企業が実施すべき「給与制度」の作り方

【参考】月60時間を超える時間外労働の 割増賃金率が引き上げられます / 厚生労働省
通勤手当の非課税限度額の引上げについて / 国税庁
『サイボウズ、インフレ特別手当を支給』/ サイボウズ株式会社(PR TIMES)

*Gugu / PIXTA(ピクスタ)