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変化を恐れる古参社員とどう付き合い、後継社長としてどう振る舞うか?【後継社長の悩み】

2022.10.05

2代目以降の経営者に対し「事業を引き継いだ際に問題となったこと」を調査した『企業経営の継続に関するアンケート調査(2016年11月(株)東京商工リサーチ)』によると、「右腕になる人材が不在」「引継ぎまでの準備期間不足」「役員・従業員からの支持や理解」という回答が上位を占めています。

この回答にもあるように、後継社長は“人材に関する悩み”が多かれ少なかれあるのではないでしょうか。今回はその中でも特に難しい“古参社員との関わり方”に焦点を当てて、後継社長としてどう付き合い、振舞えばよいかみていきます。

後継社長の多くが悩む「古参社員との関係性」

先代の時代に入社した古参社員との関係性に悩む後継社長は少なくありません。後継社長として「新しい方法を取り入れて会社を成長・発展させていきたい」と改革をしようとしても、古参社員が簡単には認めず変化を拒むことがあります。古参社員は自身よりも経験や業務知識がある上、会社の中核となる役割を担っていることが多いでしょう。そのため、強引に進めようとしても彼らの協力を得なければ改革が頓挫してしまい、後継社長の思い通りにいかなくなるのです。

実は筆者も社員40名ほどの家業において、後継者として10年以上の経験を積んできました。「もっと会社を変えていきたい」と思い、新しいことに数多く挑戦してきました。しかし、古参社員からの理解が得られず取り組みが思うように進まないことがよくあり、「どうしたらもっと納得して動いてくれるのだろう」と悩まなかった日はありません。

例えば、在庫管理システムを導入してアナログ的な商品管理方法を変えていこうとしたことがありました。これを実現するには、入荷時の検品方法、在庫の出荷方法等、全社的に過去のやり方を大きく変えなければなりません。そのため、各現場の主導役となる古参社員の協力を仰ぎながら進めていきました。しかし、表立った反対があったわけではありませんが、なかなか新しいシステムの活用が進まず「今までのやり方の方が早いし楽だ」ということで、結局定着できませんでした。

このようなことが日常的にあり、悩みは尽きなかったわけですが、今振り返ると古参社員というよりは自身の後継者としての関わり方や振る舞い方に問題があったと感じます。そこでここからは、古参社員と付き合うポイントや後継者としての振る舞い方のコツについてみていきましょう。

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古参社員とうまく付き合うポイント

筆者の後継者としての経験も踏まえて、古参社員とうまく付き合うために押さえておきたいポイントを解説していきます。

その1:古参社員も不安であることを理解する

古参社員は“後継社長からどのように扱われるか不安”に感じていることを理解しましょう。後継社長が行う新しい取り組みが進んでいくと、自らがやっている業務そのものが変わってしまい、先代時代のように重宝されなくなるのではと思うこともあるでしょう。新しい取り組みの方針に大枠は賛同できる一方で、このような不安が付きまとっているということをまず理解することが重要です。

その2:これまでのやり方を尊重する

先代社長の時代から長年行ってきたやり方を抜本的に変えたいこともあるでしょう。その際、過去のやり方を完全に否定するのではなく、これまでのやり方を尊重しながら新しい視点を取り入れていくというスタンスが重要です。数十年やってきたやり方を完全に否定されてしまっては、古参社員として変革には賛成であっても、心から賛同することが難しいのではないでしょうか。過去のやり方について良い部分、改善できる部分を検証しながら、新しい方法を取り入れて変えていくという進め方が良いでしょう。

その3:古参社員に積極的に相談する

後継社長として引き継いだ後、経営に関して様々な意思決定を行っていくはずです。その際に、古参社員に積極的に相談をすることが重要です。古参社員は長年に渡る経験を有しているはずで、純粋に意見やアドバイスをもらうことが有益になるでしょう。また、古参社員からすれば、後継社長から相談を受けることで自らが尊重され、向き合ってくれていると感じるはずです。このような関りを続けることで、後継社長の方針や取り組みにも賛同してもらいやすくなるでしょう。

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後継社長としてどのように振る舞うべきか?

その1:一人ひとりに関心を持ってコミュニケーションをとる

古参社員一人ひとりに後継社長側から関心を持ってコミュニケーションを図りましょう。古参社員は後継社長がどう考え、それによって自らの先行きに影響が出ないか不安に思っています。後継社長としての考えをしっかりと伝えた上で、古参社員にはどうして欲しいのか、何を期待しているのかということを丁寧に説明していけば、後継社長の方針の意図が伝わりやすくなるでしょう。

その2:早く実績を作ろうと焦らない

後継社長として早く実績を上げていきたいと焦る気持ちがあるかもしれません。そんな時に、自分の方針に対して認めてくれない古参社員がいると、もどかしくなり相手を責めたくなることもあるでしょう。しかし、“急がば回れ”という気持ちで、改革には時間がかかるものと認識し取り組むことが重要です。

その3:古参社員といえども伝えるべきことは伝える

自身よりも経験豊富な古参社員には後継社長としても遠慮してしまうことがあるでしょう。しかし、最終的な責任があるのは経営者であり、方針を伝えたにも関わらず賛同しないのであれば問題です。そのような場合は、はっきりと方針に従わないと困ることを伝えましょう。その時に古参社員に期待していることも伝えると、相手も受け入れやすくなるでしょう。

古参社員との関わりを改善したある後継社長の話

後継社長としてのふるまい方を変えたことで、古参社員との関係性が改善され物事がうまく進むようになったある建設業を紹介します。社員15名の建設業を39歳で引き継いだ後継社長の話です。

すでに10年以上の経験があるものの、現場での業務は古参社員から教えてもらってきたこともあり、どのように古参社員と関わっていけばよいか就任直後から悩んでいました。また、資金繰り的に楽な状態ではなく、将来へ向けて何らかの変革をしていく必要がありましたが、方針が古参社員になかなか伝わらず非常に焦っていました。

そこで、「まずは古参社員と向き合おう」と始めたことが毎月の経営会議です。開始当初は古参社員も身構えており、全然意見が出ませんでしたが、後継社長も焦らず「コミュニケーションを図るだけ」と割り切って回を重ねていくと、少しずつ古参社員からも意見がでるようになってきました。

後継社長として古参社員の考え方をより理解することができ、それを踏まえ自身の方針を丁寧に説明することで、段々と理解を得ることができるようになっていきました。まだ道半ばですが、後継社長として古参社員とうまく関わりながら変革へ向けた取り組みを継続しています。

 

今回は古参社員との付き合い方のポイントや後継社長としての振る舞い方についてみてきました。もし現在、古参社員との関係性に悩みがある方はぜひ参考に、日々の考え方や行動に取り入れていただければ幸いです。

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【参考】
『企業経営の継続に関するアンケート調査』 / 中小企業庁委託(2016年11月、株式会社東京商工リサーチ)
事業の承継 第2章』/ 中小企業庁

*Ushico、studio-sonic、kouta / PIXTA(ピクスタ)