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経営者のコミュニケーション

どうしたら社員の本音を掴める?経営者が知るべき「社員とのコミュニケーション術」3つ

2022.12.14

「会議で“積極的に意見を出してほしい”と伝えても、一方的な報告のみ」「面談で“今日は率直に話をしよう”と伝えても、暖簾に腕押し状態で社員から話が出てこない」人と人との距離感が近いゆえに、社員とのコミュニケーションに関する問題が顕在化しやすいとも言える、中小企業の職場。“コミュニケーション”という言葉には、報告・連絡・相談の徹底や、意思疎通の円滑化、あるいはチームワーク向上など、いくつかの意味がありますが、コミュニケーションを良くすることは、業務効率や生産性にも影響してきます。

今回は、中小企業において、経営者自身が社員とコミュニケーションを取る上で気を付けるべきことや工夫すべきことを3つに整理してご紹介します。

①コミュニケーション量と伝え方

まず皆さんへ問いかけたいのは「自社の社員・チームメンバーに、自身の想いを何回くらい話してきたのか?」という点です。「月一回の会議のたびに同じことを言っているから計12回」「毎週言っているから年間で50回以上」などと、それぞれの中に「これだけ伝えて来たのに」という回数があるかもしれません。

しかし、厳しい言い方をすれば、「何度言っても理解してくれない」というのは、伝える量の足りなさを自ら証明しているようなものです。そもそも「しっかり伝えれば相手は理解する」という前提を改める必要があると言えます。その内容を相手が理解して行動できるようになるまで、伝え続けるということです。コミュニケーション量に、「これくらいの回数伝えればOK」という上限はありません。一度でだめなら二度三度、いえ、何十回でも、大切だと思うことは伝え方を変化させながら伝え続ける必要があるということをまずは理解しなければなりません。

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②「言葉」の取扱い

個々の受け止め方(心の器)にあわせて、10人いたら10通りの伝え方があります。コミュニケーションの質を磨いていくには、まさに十人十色の言葉の通り、相手の心の器の広さや深さに合わせて、伝え方を工夫していくことが重要です。

また、“言葉”の取扱いに意識を傾けましょう。感情が赴くままに言葉を発する方はいないとは思いますが、自身がどのような意図でそれらの言葉を使おうとしているのかを少し立ち止まって振り返ってみることが大切です。オンライン会議で議事録代わりにレコーディングしておけば、自身の発言や姿をあとで振り返ることができます。そのような内省の積み重ねによって、自身の心の器の広さや深さが変化し、相手の言葉の受け止め方も変化するものです。

“言葉”が私たちの世界観を形づくるという考え方があります(社会構成主義)。まず世界があって、それが言葉で表現されるのではなく、言葉が先にあって、その言葉が形づくるものとして世界が形成されるという考え方です。私たちは、直接見たことのない世界について、得た情報から想像して語り合い、意味付けます。直接目にした世界を語る時には、意図して言葉を選別し、自らが世界を意味付け、表現するものです。職場においても、自身が思い描く世界は、時に囚われや思い込みを生み出します。

例えば、「あの人は、いつも落ち着きなく業務を進めている」という捉え方のもとで、その人と向き合っていれば、もしその人が何かミスをしてしまった時に、「いつも業務に集中していないからそういうミスが起きるのだ」という指摘をするかもしれません。しかし、もし、その人が業務に集中できない理由が、本人が置かれた状況(家庭の事情で悩みがあるため業務に集中できない等)に起因しているとしたらどうでしょうか。「業務に集中していないからだ」と指摘するのみだと、その本人は「こういう理由で集中できないのです」と背景や意図を話せなくなってしまい、より一人で悩みを抱え込んで孤立してしまうかもしれません。

言葉は、それらがつなぎ合わされるとき、さらに大きな威力を発揮します。つなぎ合わされた形式を“ナラティブ(語り・物語)”と呼びます。前述の社員に置き換えると、業務に集中できないという状況の背景に、何らかの事情があるとすれば、その事情にまつわるナラティブを伝えてもらうことが重要です。社長や上司等がナラティブを受け止めることで、本人の気持ちが軽くなるかもしれませんし、「何か悩みがあれば伝えて良いのだ」という心理的安全性が高まるかもしれません。

コミュニケーションをしっかりとるということは、言葉を活発にやりとりすることではなく、言葉の背景・根底にある意図や文脈を理解し合うことでもあります。そのためには、まずは言葉を丁寧に取り扱う必要があるのです。

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③「対話」的なコミュニケーション

コミュニケーションとは、目に見える言葉や文字だけではなく、意図・背景や想い、あるいは暗黙知や文脈といった目には見えないものも含めて、やりとりがなされて成立するものである点を理解する必要があります。そのためには、“対話”的なコミュニケーション力を習得することが重要です。

コミュニケーション活性化を目的とした場は、会議や食事・飲み会、あるいは対話のワークショップなど、さまざまありますが、顔を合わせて活発に意思疎通を図るという目に見える部分だけに囚われて場をつくると、一時的にはコミュニケーションが活性化したとしても、持続しなかったり、表面的なもので終わってしまうことがあります。例えば、飲み会をして、その場では仲良くにぎやかに自社の組織の理念や方向性を共有できたけれども、翌日また日常に戻ったら、そのような未来思考の話を共有する機会がなく、せっかく高まったモチベーションがすぐに低下してしまった、といったケースです。

私たちは、社員それぞれの背景・根底にある文脈や暗黙知といった表には見えない部分に意識を傾け、それらを深掘りしながら正しく理解しようと働きかけたり、さらなる視点や視野を示して動機づけたりするようなコミュニケーションを意識する必要があります。

「飲みに行けば本音を話せる」といった自身の囚われや過去の成功体験を一度手放し、もっと洗練された対話の要素を取り入れたコミュニケーションの仕方を身に付けていかねばなりません。これは、一朝一夕でできるものではなく、例えば、カフェのような雰囲気で4~5人のグループごとに自由に対話を行う“ワールドカフェ”等のワークショップや、1on1面談などの対話の場を定期的に持つことで、対話的なコミュニケーションを習得し、習慣づけることができます。また、自身の日々の言動を振り返り、言語化していく習慣も重要です。忙しい日々の中でも、社内ブログやSNS投稿、日記を付けるなどの時間をつくりだし、内省していくことで、対話的なコミュニケーション力を根づかせることができるでしょう。

 

組織というのは、複雑性の最たるものです。3人の社員がいたら、相互のコミュニケーションでつながる線は3本で済みますが、10人の組織ともなると45本まで膨れ上がります。会話・対話といった直接的なコミュニケーションを活性化させるだけではなく、つながりの線が自然と増えて行くような職場のデザインを意識することも重要です。

Humanyze社の社長兼CEOベン・ウェイバーは著書において、職場におけるコミュニケーションに関する調査で、社員同士のつながりの線がどのような場所・時間で増えているかをたどったところ、「ウォーターサーバーの前が一番多くつながりが増えた」という結果が出たとしています。業務中、ちょっとコーヒーを飲もうとウォーターサーバーに行った時に、他のメンバーとの接点が生まれてちょっとした会話がなされる。その積み重ねが、つながりの線を自然と増やしていったということです。

皆さんの職場でも、机を並べている者同士あるいは机を固めたシマでのコミュニケーションを活性化することだけを大切にするのではなく、立ち話だけれど何気ない会話ができるようなスペースをあえて創り出してみると良いでしょう。それは、ウォーターサーバーの置き場所かもしれませんし、おみやげや休憩用のおかしBOXを置く場所かもしれません。あるいは、ランチをとる休憩スペースを工夫できるかもしれません。目には見えないつながりの線を想像しながら、職場環境をデザインしていくという視点も重要です。

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【参考】ベン・ウェイバー(2014)『職場の人間科学: ビッグデータで考える「理想の働き方」』

*foly、ふじよ、mits、maroke / PIXTA(ピクスタ)

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