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TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 遅刻や離席が多い社員…どうすれば?従業員の健康課題を整理する方法【産業医が解説】
体調不良のビジネスマン

遅刻や離席が多い社員…どうすれば?従業員の健康課題を整理する方法【産業医が解説】

2023.01.23

少人数での会社経営、今成長の最中で一人一人の社員が一生懸命業務に従事する会社様だからこそ、社員が一人でも抜けてしまうと大変。そんな状態に明日なってしまったら……要因として予測しにくい事柄に社員の健康問題が挙げられます。

『経営ノウハウの泉』では中小企業経営者向けウェビナーを開催。産業医である筆者 日下慶子が登壇し、経営者が知っておきたい“社員の健康課題と事前対策”についてご説明しました。

ここでは、その模様を4回に分けて連載していきます。本記事では第1回として、「社員の健康問題を整理する方法」について解説します。

第1回:社員の健康問題を整理する方法
第2回:健康問題対応のポイントと休職・復職の手続き
第3回:ハラスメントに関する健康問題の対応策
第4回:外国人労働者に起こりうる健康課題の対策、Q&A

【資料のダウンロードはこちらから】
※第1~4回のどの記事からでも資料DLが可能

【登壇者】

日下 慶子(くさか けいこ)
労働衛生コンサルタント
産業医

精神保健指定医
社会医学系専門医・指導医
2004年京都大学医学部卒業
アジア経済研究所開発スクール
京都大学大学院医学研究科(単位取得退学)
Parsons School of Designにて学ぶ。
専門は、公衆衛生(産業保健)、精神保健(地域精神保健、精神科救急)

よくある困りごとを分解してみる

従業員の健康というのは、全ての企業で大切なことですが、中小企業では特に大切です。まず、従業員の人数が少ないので、誰かが体調を崩して休んだら代わりの従業員が少ない、いない、ということが起こりやすいでしょう。そして、新しく採用しようと思っても、応募がない。そして、採用できても、慣れるまでに時間がかかる。そのうちに、周りの人間が疲れてしまい、退職者が続出する……。

また、中小企業で働く外国人労働者の課題についても、よく耳にするようになりました。健康診断の現場で言葉が通じなくて困る、健康診断の結果が日本語だと読めない、病院にかかるにも、言葉の壁がある、など困りごとは山積みです。外国人労働者の健康課題対策については第4回で解説しています。

実際に、現場から産業医に寄せられるご相談をいくつかご紹介いたします。

・遅刻や早退が多い従業員がいる
・ミスが多い従業員がいる
・指示や締め切りが守れない従業員がいる
・居眠りをしている従業員がいる
・体調不良で良く休む従業員がいる

このような事象が現場で起こっている時に便利な、”困りごとの分解方法”があります。困りごとの種類によって、対応方法が異なります。

事例①:遅刻や居眠りをする従業員

まずは、遅刻や居眠りをする架空の従業員の事例をもとに考えてみましょう。

Aさんは、中途採用で入社して2年目です。採用面接のときは印象が良かったのですが、いざ入社してみると、就業時間中の居眠りや離席が目立つようになりました。また、「電車の中で気分が悪くなった」などを理由に週に1回は遅刻します。ある日、休養室で昼寝をしていたので理由を訪ねてみると、「体調が悪くて……」とおっしゃっていて……。

経営者の方からすると、「まだ試用期間中だし、本採用はしないでおこう」という考えになってしまうかもしれません。ただ、”本採用見送り”には、相当の理由と適切な対応を行ったというプロセスを踏むことが必要になってきます。

問題の分解のコツ①:誰が困っているのか?

まずは、誰が困っているのか、主語を分けて考えましょう。上記のケースであれば、まず周囲の人間は、“居眠りや離席が多くて、体調が悪いと言って遅刻する新人”に困っているでしょう。また、その人の仕事のカバーをしなければならず、忙しくなっていることに困っているかもしれません。一方で、本人は“体調が悪いことに困っている”かもしれません。このように同じ現象であったとしても、主語によって困りごとの内容が変わってきますので、まずここを整理しましょう。また、困りごとの内容は、本人たちに聞いてみないと分からない部分です。勝手に推測して決めないように、丁寧なコミュニケーションをとることが大切です。

問題の分解のコツ②:「事例性」と「疾病性」に分ける

問題は”事例性”と”疾病性”の2点に大きく分けることができます。「個人の行動の問題なのか」もしくは「医学的な理由なのか」を混ぜて考えてしまうと解決が難しくなってしまうため、正しい対応策をとるには分けて考えることが重要となります。

事例性とは、現場で起きている客観的な事実のことです。例えば、遅刻が多い、居眠りをする、離席をするなどの事実です。その理由までは、ここでは問いません。疾病性とは、医学的なところ、病気の症状、治療薬の副作用、「被害妄想がある」等の周囲からみての病的感のことをいいます。

事例性に対しては、就業規則など会社のルールで対応していくべきです。疾病性に対しては、産業医など専門家の意見を聞きながら進めることが大切です。まず、Aさんがもし「体調が悪くて、朝起きられなかったり、電車のなかで気分が悪くなったりして遅刻してしまう」ということであれば、まず体調不良の原因を探り、治療する必要があります。勧めるだけですぐに受診してくれればよいのですが、なかなか受診をしない、受診結果を言いたがらない場合は、産業保健職の出番です。「必要な部分だけを会社に伝える」という約束のもとで、体調や受診の状況を確認し、必要に応じて主治医とやり取りを行います。

「体調不良でのルール違反」は許容されるのか?

体調不良だから遅刻や居眠りのようなルール違反が許容されるわけではありません。猶予期間を設けて、その間に遅刻など”事例性”の部分の改善がなければ、就業規則に則って処分する場合もあります。ルールに則って対応することで、「公正な対応をしてくれている」と周囲の従業員も含めてみんなが納得できることが大切です。

社員の健康問題を解決するには、困りごとを分解し、問題によって、誰がどのように対応することがよいかを見極めることが重要です。次回は「健康問題を対応する関係者やポイント」について解説していきます。

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*プラナ / PIXTA(ピクスタ)

【参考】『産業医はじめの一歩. 「働く人・企業」のニーズをつかむ!基本実務の考え方と現場で困らない対応』/ 川島恵美・山田洋太

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