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ビジネスモデル

10年前と変わっていないのは危険!? 「ビジネスモデルの変革」はどんな企業に必要か

2023.01.12

「ビジネスモデルの変革」と聞くとちょっと大げさな表現に聞こえてしまうかも知れません。最近はDX推進の波の影響もあり、ちょっとした変革ブームなイメージもあります。経営コンサルタントである筆者がよくいただくご相談は、「ビジネスモデルの変革とか言われてもイメージがなかなか沸かないけど、これってどうなの?」という問いです。筆者がお答えするのは、「それって日常茶飯事なことですよ」とお伝えしています。

ビジネスモデルは変え続けて行くことが大前提

大前提からいいますと、ビジネスモデルの変革が必要ない企業・事業は基本的に存在しません。そもそも事業を取り巻く環境として、顧客も市場もテクノロジーも法制度も変化し続けます。国際関係だってそうです。そんな中で稼ぎのシステムを永続的に変えずに維持することの方が至難の技です。筆者が考える限り、売り逃げ商売のような期間限定ビジネスはいくつか思い出すことができますが、それは事業の継続性を目指す企業の本来の姿ではありません。

まずは、ビジネスモデルは常に変わっていくことを前提に考え続けなければなりません。一度確立できた“稼ぎ”のモデルでしっかり利益を上げることは大切です。しかしそれが成功体験となって“変えられないジレンマ”に陥ることは最も避けるべき状況です。では、ビジネスモデルの変革はどのように検討していったらよいのでしょうか。きっかけは大きく2つに大別されると考えます。それは内部要因である“経営分析”と“外部要因の変化”です。

経営分析を継続的に行うこと

多くの経営者は、財務諸表の健全性について定期的にチェックしていると思います。しかし、筆者の経験からすると、経営分析指標を経年変化まで含めてチェックされている経営者は思ったほど多くありません。もちろん、日頃から意識している方もいらっしゃいますが、収益性分析指標や労働生産性、売掛債権回転期間といった効率性や安全性指標について概算数値レベルでも把握している方が大半とは言い難いのです。

こういった経営指標は、財務諸表から自動的に算出することができます。万事順調に事業が進んでいる感覚だとしても、体感には現れない微妙な変化や、変化の予兆を表すことも多いです。ご自身の感覚と比べて、少しでも違和感がある数字が見つかった場合(特に経年の変化に現れます)には、その背景をしっかり深掘りするようにしましょう。もちろん、納得できる理由であればそれで一安心ですし、意外な課題や注意点が見つかることも少なくありません。業務の設計に問題があったり、文化的な問題をはらんでいたりすることもあります。ここでは漏らさず適切な対応を取りましょう。リスク・課題が大きくなる前にビジネスモデルを変革する好機です。しっかりと変革の目的と目指す姿をメンバーに共有して変革推進チームを編成すべきです。

外部要因を継続的に把握する

筆者の印象としては、こちらの方が苦労されている経営者が多いです。市場、顧客、テクノロジー、法制度、国際情勢などは時代を通して変化し続けます。それこそ今現在の世界の潮流において異論はないところでしょう。経営者は事業継続に影響のある範囲の時事情報収集ネットワークを張り巡らせておく必要があります。以前筆者が執筆した以下の記事では、事業リスクの考え方とその事前仕込みで対応できるリスクヘッジについてご紹介しました。「ビジネスモデルの変革はどのようなタイミングで必要なのか」という問いについても考え方は同じです。

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外部要因による変革のきっかけは多く存在します。あくまでも例ですが、一時代前では市場が変化したことで、実店舗からWeb上での販売機会を増やすためにECサイトを立ち上げることがブームになりました。現在はさらにSNS経由での拡販展開に乗り出す企業が増えています。もちろん一過性のブームに乗っかるような形で安易に投資を行うわけにはいけませんので、一定の検証が行える仮説を立てた上で、実証実験含みで計画を立てる必要はあります。

中小企業の変革事例

ここで筆者がコンサルティングを実施したなかから、いくつか事例をご紹介しましょう。

店舗・通信販売を行っていた菓子メーカーが、マスマーケティング手法を主軸にするのをやめて、Amazonや楽天、その他の通販プラットフォームを使うことから離脱した事例です。SNSを軸にファンを増やす“ファンベースマーケティング”に手法を移行して、各SNSから自社サイトに誘導する形のマーケティングおよび販売手法に変えました。そうすることで広告費に頼ることなくファンからの口コミを活用して集客し、過去の手法と同額の実売額まで伸ばしました。また、広告費・通販サイト参加費用をまるごと削減したことで、粗利率30%超まで成長させました。

しごくシンプルですが、製麺会社が受発注の仕組みを変革したことでコスト削減を行った事例もあります。飲食店と製麺会社の受発注やりとりはFAX、メール、電話(留守電)が主だったため、留守電が聞き取れなかったり、FAXが擦れて読めなかったりすることから、飲食店からの発注内容が正しく伝わりきらず、再出荷や過剰出荷が発生していました。そこで、自動の受発注システムを導入するのではなく、飲食店が手持ちのスマホから『LINE』で発注し、『LINE WORKS』で受注する形にしたところ、自社での発注再確認や再発送などの労力削減と、歩留まり低減によるコスト削減を一気に行うことができました。

本来迎えるべきだった日本のDX

以下の記事では、“人と機械(デジタル)の役割再配置”の必要性について解説しました。これこそがまさに、テクノロジーの進化(外部要因)を把握することをきっかけにビジネスモデルを変革する代表格と言えるでしょう。人ではなくてもできる業務をコストや正確性を比較し、機械に引き渡していく。そして人はもっと付加価値を生み出す仕事に従事する。これがDXの本質です。

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今は国家レベルでもDXが大いに推奨されています。本来であれば、現状の深刻な経済的・産業的課題に直面してから大号令的に行うのはなく、経営者や業界団体がテクノロジーの進化について新しい知識を積極的に取り入れる機会を継続的に持ち、より強いビジネスモデルのあり方を新しいテクノロジーを使って継続的に導きだすようなアプローチであってほしかったところです。

うまくいかなくなってからでは変革は間に合わない

ビジネスにおいても同様の傾向が見られています。「うちはこれまでこのやり方でうまくいっているんだ」という判断から「新しいテクノロジーを敢えて取り入れる必要はない」という結論に至ってしまう傾向が全体的に多く見られるのです。しかしながら、「“うまくいったビジネスモデル”を一度構築できた企業・組織だからこそ、これからも変貌し続ける市場環境やテクノロジーにもしっかりキャッチアップしてビジネスモデルの変化・成長を続けていっていただきたい」と切に願っています。手前味噌になってしまいますが、そのためにも我々のようなコンサルタントを最大限に活用していただけたらと考えます。

繰り返しになりますが、ビジネスモデルの変革は事業がうまくいかなくなってからでは間に合いません。うまく行っているときこそが変革の好機です。ビジネスに不調を感じてから変革を考えるのは、故障が発覚した自動車で走行しながら補修作業を行うようなものです。ビジネスモデルの変革は本業が安定していて組織に余裕があるときこそに検討を始めるべきです。

「危機感」か、「過去の成功」か

多くの経営者と話していると大きく2つの考えに大別される印象があります。まず、現状の危機感をひしひしと感じられており、「どのように変革をすべきか、そのためには何が必要か」という切実な問いをもっている方。そしてもう一方は、過去の成功体験が強く印象に残っていることで「変える必要は無い」と過去の勝利の法則を頑なに守っていらっしゃる方です。先述した通りビジネスの環境は日進月歩です。昨今のテクノロジーの進化スピードは「スマホか、ガラケーか」などといったレベルの議論では全く追いつけないほど、日々新しいテクノロジーが生み出されています。「ガラケーユーザーのことも考えて」などと目先の議論に引っ張られて、テクノロジー導入の議論を滞留させてしまっているような状況では、日本のビジネス環境はあっという間に今まで以上に世界に太刀打ちできなくなってしまいます。

細かい変革を継続させる必要性

インターネットの登場のように、1つのテクノロジーの登場が一気にビジネスのゲームルール自体を変えてしまうこともあります。そして実はもっと恐ろしいのは、日々の細かい技術革新の導入が、気づいたときには大幅な変化を起こしてしまっていることです。このときに後手に回ってしまっていることに気づいても追いつくには大変な苦労を伴います。思い出すならば「“Made in Japan”が高品質の代名詞となった時代にはこうした細かい変革を根気強く続けることが日本産業界の強みだったはずなのに」です。元々日本の経済力の強さの源泉となったコツコツと積み重ねる品質向上のようなアプローチで我々自身のビジネスモデルも向上させていく、そういった思考変容が必要となってきていると考えます。

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*metamorworks、CORA / PIXTA(ピクスタ)

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