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「後継社長の指示は聞きません」どう対応する?問題社員へのアプローチ方法【弁護士が解説】

2023.03.03

中小企業・ベンチャー企業で起こりがちな問題があります。たとえば、あなたの会社で隠れ残業やハラスメントは起きていませんか? 「ベンチャーだから……」「忙しいから……」を理由に見て見ぬふりをしてしまうと、後々トラブルに発展しかねません。

そこで『経営ノウハウの泉』では中小企業経営者向けウェビナーを開催。弁護士の堀田陽平先生にご登壇いただき、中小企業・ベンチャー企業に起こりがちな隠れ残業やハラスメントなどのよくある不祥事と事前対策についてセミナーで詳しく解説していただきました。

ここでは、その模様を4回に分けて連載していきます。本記事では第2回として、「後継者社長の指示を聞かない問題社員への対応策」について解説します。

第1回:従業員からの残業代請求防止策 
第2回:後継者社長の指示を聞かない問題社員への対応策 ←今回はここ
第3回:見落としがちなハラスメント対策とは 
第4回:就業規則の見直しが必要な理由と対応例【Q&A付き】

【資料動画のダウンロードはこちらから】
※第1~4回のどの記事からでも全編の動画の閲覧URL・資料DLが可能

【登壇者】

堀田 陽平 弁護士
日比谷タックス&ロー弁護士法人
2020年9月まで、経産省産業人材政策室で、兼業・副業、テレワーク等の柔軟な働き方の推進、フリーランス活躍、HRテクノロジーの普及、日本型雇用慣行の変革(人材版伊藤レポート)等の働き方に関する政策立案に従事。「働き方改革はどうすればいいのか?」という疑問に対するアドバイスや、主に企業側に対して労務、人事トラブルへのアドバイスを行っている。日経COMEMOキーオピニオンリーダーとして働き方に関する知見を発信。著書「Q&A 企業における多様な働き方と人事の法務」(新日本法規出版)など多数。

後継者社長の指示を聞かない…問題社員への対応策

問題社員へはステップを踏んで対応

事業承継があって、新しく若い社長に代わるようなことはよくあることです。しかし古株の従業員の中には「自分は前社長に長年ついてきたんだ」として、後継社長を認めず、経営がやりにくい、というようなこともよく耳にします。

このような状況を放置していると、後継者による組織の統率が取れなくなります。そういう問題のある従業員にも厳格に対応していく必要があります。しかし厳格に対処するとはいえ、そういう問題社員をすぐに解雇することは、かなり難しいものです。刑事罰に触れるような重大な罪を犯した場合でなければ、基本的に即解雇はできないと考えてください。結局、いくつかのステップを踏んでいく必要があります。

ステップ1:注意・指導の実施

注意、指導はできる限り“書面”で行ないましょう。裁判になった場合にも重要になりますし、会社としての本気度を示すことにもなります。また問題社員本人にとっても。会社が何を問題にしているかということを明示できます。

ステップ2:懲戒処分の実施(まずは軽微なものから実施する)

ステップ1でも問題が解決しない場合には、ステップ2として懲戒処分を実施します。けん責や減給といった、軽いものから徐々に実施するといいでしょう。

ステップ3:退職勧奨

問題行動にもよりますが、このステップ1とステップ2は繰り替えすことが少なくありません。そして「もう我慢ならない!」となったときでも、いきなり解雇ではなく、ステップ3の退職勧奨を行ないます。「あなたの行動が直らないのであれば、解雇せざるを得ない」ということで話し合いをします。この場合は「自己的に退社したほうが都合がいいのでは?」という提案をします。多少のお金を積むという話をしてもいいかもしれません。

ステップ4:自主退職、もしくは解雇

ステップ4として、それに合意できたら自主退職してもらうのですが、合意せずに問題行動を繰り返すのであれば、解雇という措置を執らざるを得なくなります。

問題社員への対処のポイント

問題社員への対処として、懲戒処分が1つの重要ポイントになります。

最終的に解雇することになったとしても、会社は懲戒処分をもって対応したが改善しなかったため「解雇もやむを得ない」というストーリーを作りやすいのです。もちろん、懲戒処分によって「会社は本気なのだ」と判断して問題行動が改善する例も少なくありません。なので懲戒処分は何回か繰り返したほうがいいでしょう。

そして懲戒処分を有効にするには、1)懲戒事由があること、2)具体的な懲戒処分が相当であること、この2つを満たす必要があります。そして実際に懲戒処分を行なうには、上の図の①~⑤のプロセスをしっかり経由することも重要です。この中の“③弁明の機会を付与”というプロセスで、反省して解決するというケースもよくあることです。

懲戒処分を繰り返しても解決しない場合は、退職勧奨となるのですが、ここも大きなポイントです。

解雇を実施する前に、退職勧奨を行なうほうが、解雇無効の訴訟リスクを低減できる効果があります。なお「退職勧奨は違法では?」と聞かれることもありますが、これ自体は合意退職の申し入れに過ぎないので違法ではありません。問題なのは、相手に退職の意思がないというのに、執拗に退職勧奨を行なうことです。これは不法行為にあたるし、退職の意思表示ののちに「脅迫があった」という理由で取り消されるリスクもあります。退職条件を出して、譲歩・交渉を繰り返すのはともかく、その余地がないのに勧奨を行ない続けるのは控えるべきです。なお、退職勧奨に応じるとなった場合は、必ず合意書を結んでおくべきです。その際は今後紛争しないということも明記しておけば訴訟リスクも抑えられます。

退職勧奨でもダメな場合は”解雇”となります。

解雇にあたっては紛争リスクが大きくなるので、有効性の見通しについては専門家の判断を仰ぐ必要があるでしょう。解雇は通達した段階で成立してしまうので、口に出す前に弁護士に相談するべきです。なお問題社員の解雇は、“懲戒解雇”と“普通解雇”があり得ます。普通解雇は、懲罰的な意味合いのある懲戒解雇よりも緩いと言われますが、解雇のケースによっては、懲戒解雇は無効なものの普通解雇は有効と判断されることもあるので、予備的に普通解雇を通達することも考えられます。

問題社員については、解雇にこだわらないということが重要だと思います。経営者としては、一度問題を起こした社員については「もう許さん!」と思い“解雇ありき”で話を進めがちですが、先に解説したステップを踏むことで問題行動の改善を迎えることもあります。そういった場合、「その社員とはもう仕事したくないから辞めさせたい!」と思うばかりに解雇をグイグイ進めようとしても、解雇は無理です。

そのため、問題社員について解決したいのであれば、“解雇のステップ”ではなく“問題行動解消のステップ”と考えて行動したほうが、今後の会社経営にもよいでしょう。若い後継社長からすると古株の社員とこういったトラブルになりがちですが、今後の組織運営を考えて問題を解決したほうがいいと思います。

第2回では後継者社長の指示を聞かない問題社員への対応策について解説しました。まず解雇ありきと考えるよりも、問題行動の解消を考えて対応することで、今後の会社経営を円滑に進めることができるでしょう。次回は「見落としがちなハラスメント対策」について解説します。

【資料動画のダウンロードはこちらから】

*星野スウ / PIXTA(ピクスタ)

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