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銀行 融資相談

できる経営者はどうしてる?金融機関との上手な付き合い方【事業コンサルが解説】

2022.09.29

コロナ危機はいつ収束するのやら……経営者の皆さんは終わりなき非常事態と戦っていらっしゃることと思います。“ゼロゼロ融資”と言われた実質無利子・無担保の特別融資も一区切りし、受付を終了しておりますが、経営資金繰りの厳しい戦いは今後も続きそうです。こうした背景も踏まえて、今回は金融機関との上手な付き合い方をご紹介します。

筆者はコンサルタントという立場で、事業運営中の経営者をご支援することが多い一方で、新規創業を企図する経営者を手伝うこともあります。今回は、既存の事業経営者の心得に加えて新規創業の場合についても言及します。

銀行・信用金庫・信用組合などとの基本的な付き合い方

まず、法人として主に利用する、いわゆる“メインバンク”と呼ばれる金融機関との付き合い方についてお話しします。基本的にメインバンクとしては、企業/事業が財務的に健全な経営が行われているかを見ています。もっと突き詰めて言えば、彼らの最も重大な関心事は、融資している事業資金などの貸付の返済が遅延したり、貸し倒れが起きたりしてしまわないか、ということです。もちろん、事業拡大などの計画がある場合は、追加で融資を行うことでメインバンクとしての事業成績をもっと上げられたらという思いもあります。

つまり、彼らは企業の“財務諸表”を見ているのです。ちょっと野蛮な言い方をすると、それぞれの金融機関には財務諸表の評価制度(システム化された方針やツール)が用意されており、その評点を見て企業の健全性判断をしています。組織内の議論もこの評点を前提に進められているのです。

財務諸表の見栄えだけが全てではない

だからといって、財務諸表の見栄えを良くすれば良いのかというと、それは一面的な対策に過ぎません(財務諸表をピカピカに見栄え良くする方法については、本論とはズレるため別の機会に譲ろうと思います)。もちろん、財務諸表に健全性が現れていることは良いことです。しかし、昨今のようなコロナ禍に限らず、様々な理由で経営状態がままならない状況に陥ることもありえます。また、経営判断としてリスクを伴う新規事業にチャレンジすることもときには必要です。

前述した財務諸表の評価ツールは、一定の評価には役に立ちますが、事業の本当の状態や、ましてや将来性などは見通すことはできません。

肝心なのは金融機関の仲間化

そんなときに金融機関の支援を円滑に受けるために重要なのが、ありきたりな表現ではありますが、彼らとの信頼関係です。そんなことは当たり前だと指摘されそうですが、ここでは、そのために必要な“関係性の仕込み”ついて解説します。

まず四半期、難しければ、半期ごとくらいの頻度で、銀行の担当者、可能であればその上長と面談することをおすすめします。財務諸表を突き合わせながら、事業の状況、見通しおよび計画している対応などを共有します。さらに、事業の特性や最新の状況も共有して、事業が置かれている立場を理解してもらいましょう。そのうえで、経営者として何を実行しようと考えているのかを説明します。このように継続的に理解してもらうことが何よりも大切なのです。

そうすることで資金繰りが多少悪化しようとも、金融機関側はやたらに不安がることなく、経営者側の話を親身に聞き続けてくれます。その時点で金融機関として可能な支援などを提案してくれることもあるでしょう。

先述したとおり、金融機関の担当者は、融資返済の遅延や貸し倒れに繋がりかねないような予兆には敏感です。特に心構えができてない状態での”サプライズ”を嫌います。そのために大きな状況の変化を冷静に聞いてもらえないことは少なくありません。このような状態で望まないミスコミュニケーションを生み出さないためにも、平時からの事業状況の共有および、十分な理解を促した上での“仲間化”が最も有効なのです。

仲間一人だけに依存しない

とはいえ、筆者も多くの経営者皆さんにコンサルタントとして関わっている中で、「信頼していたメインバンクに冷たくあしらわれた、裏切られた」などといった不穏なコメントを聞くこともあります。ドライな言い方ではありますが、所詮、法人同士です。利害関係があるのですから、同じ道を歩めなくなってしまうリスクを想定して対処しておくことも必要です。

有力なメインバンク一社だけに依存してすべてを任せていると、関係性が良好な間は心配事も起こりませんが、なにかのきっかけで融通がききにくくなった場合に相談できる相手がいなくなってしまいます。そういった事態を防ぐためにも、相手を複数持っていることが大切です。

上品な言い方ではありませんが、”メインバンクにするかもしれない”金融機関との付き合いをある程度持っておくことをおすすめします。メインバンク以外とも付き合いがあることで、医療のセカンドオピニオンのように情報収集や意見交換などに有効に活用できます。あくまでも事業運営として無理のない範囲で押さえておきたいところです。

【こちらの記事も】融資を受けるには、どうすれば?金融機関が「融資を避ける」中小企業の特徴と解決策

最強の金融機関?「信用保証協会」

金融機関の”仲間化”についてお話してきましたが、筆者がおすすめしたいのは「信用保証協会」です。

経営者の皆さんは融資を受ける際に“協会保証付き”という融資条件をお聞きになられたことがあると思います。もしかしたら深くは理解していない方もいらっしゃるかもしれません。「信用保証協会」とは、大雑把に言うと、金融機関自身が融資の可否判断ができないときに後ろ盾となって債務保証をしてくれる公的機関です。

【参考】信用保証協会について / 中小企業庁

一度、事業の説明や経営相談という形で「信用保証協会」とつながっておくことをおすすめします。敷居が高いイメージはありますが、決してそんなことはありません。はじめて相談する場合は「融資について検討していて、窓口とする金融機関を決めきれていないので、まずは大局的な視点で相談に来ました」と伝えれば快く対応してくれるはずです。

実は銀行などの市中金融機関では、金融機関担当者自身が事業健全性や事業将来性などを見識や目利き力で判断できないことを理由に、財務諸表評価がマイナスとなってしまうケースが多数見受けられます。そんなときに、事業に対する強い診断力/洞察力を持っている「信用保証協会」が、後ろ盾となって債務保証を担ってくれるのです。

「信用保証協会」から事業に対する理解を得られ、かつ高い評価をもらえれば、地場金融機関へ推薦や斡旋をお願いすることが可能ですし、継続的な信頼関係を構築できれば、長い目で後ろ盾になってもらうこともできるのです。

最後に新規創業時の融資相談について

非常にハードルが高いのは、特に後ろ盾もなく新規に創業する場合の事業資金の融資を相談するケースです。ほとんどのケースでは“前例主義”に則って、「この地域では新規創業の場合はこれくらいの金額が常識です」と事業の特徴や新規性には全く興味も持たれず一蹴されてしまいます。

このときに独力で状況を打破できる手は筆者の心得るところで2つあります。1つは前の項でご紹介した「信用保証協会」を味方にするパターン。地元の有力金融機関に相談に行く前にまず「信用保証協会」に相談することが、新規創業の鉄則ではないかとまで筆者は考えています。

そしてもう1つは、融資相談者当人のみに判断させないことです。可能な限り丁寧かつ説得力を持って事業の可能性や自身の事業戦略を説明し、上長を引っ張り出すことです。より深い事業への造詣や市場の洞察などで、「この経営者は本当に熱心に勉強し、綿密な計画を立てている」と担当者を得心させることができれば、決裁権限を持った上長を議論に招いてくれます。これに「また同じことを説明するのか」と懲りたりせずに熱意を持って理解を促しましょう。

現時点では金融機関側からするとなんの実績もない新規のお客様なので、判断は前例主義に則ってしまったり、慎重になってしまったりしてもやむを得ません。そういった観点では、「信用保証協会」の方が、事業の中身や経営者の資質、熱意に耳を傾けてくれる傾向があるのではと筆者は考えます。

【こちらの記事も】起業を成功させる!起業時や起業直後に利用できる補助金・助成金を一覧で紹介します

 

経営者皆様も資金繰りには常に腐心されていることと思います。必要な金融機関と上手に信頼関係を構築・維持し、事業の発展につなげてください。

【こちらの記事も】融資と出資の違いは?メリット・デメリット、押さえておくべき落とし穴も【経営の基礎知識をわかりやすく解説】

【参考】信用保証協会について / 中小企業庁 

*sawada、アン・デオール、Luce、zon / PIXTA(ピクスタ)