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汚職詐欺で、茶色の封筒の金を他の実業家に贈る男性

自社は大丈夫?最近増えつつある助成金・給付金の不正受給…影響と対応策とは

2023.11.21

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で我が国の経済活動が停滞し、多くの企業が苦境に立たされるなか、政府が特例的に雇用調整助成金を給付したり、持続化給付金の給付をしたりするなどの対応が図られました。

他方で、未曾有の事態を受け、これらの助成金・給付金の要件や徴求する資料の要件が大きく緩和されたことに乗じ、本来これらの給付を受ける要件を満たしていないにもかかわらず、さも有しているかのように装い、不正に給付を受ける例もみられます。国としても、雇用調整助成金、持続化給付金の不正受給の調査には特に力を入れています。

今回は、不正受給の事例を取り上げながら不正受給をした際の影響と、申請する際に注意するポイントを解説いたします。

不正受給の事例

不正受給の例として、持続化給付金の例を見てみましょう。

持続化給付金を給付している中小企業庁は、持続化給付金の不正受給者の認定と公表を行っています。これによれば、令和3年3月15日以降、本稿執筆時の最新情報である令和5年11月9日時点で、不正受給者と認定されたのは2,078名で、不正受給総額は21億1228万1815円にのぼります。

最近でもコロナ禍での緊急雇用安定助成金を不正受給したとして逮捕された事例が報道されています。これは一例であり、国が給付しているさまざまな助成金や補助金などで不正受給はありますが、冒頭述べたとおり、コロナ禍においては雇用安定助成金、持続化給付金などの支援を届けることを優先したことから、これに乗じて特に不正給付を行う例が多く、中小企業庁、厚生労働省においても注意喚起しています。
【参考】持続化給付金の不正受給者の認定及び公表について/経済産業省
【参考】現職の鳥取県議を逮捕 コロナ助成金 約1200万円を不正受給か/NHK

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返せばOKではない?不正受給の影響

不正受給を行ってしまった場合、事業者などには以下のような責任が発生します。

1:不正受給の返還と違約金などの加算

不正受給が発覚した場合、返還しなければならないことは当然です。

さらに、延滞金や違約金をプラスして支払う必要があります。たとえば持続化給付金の場合、不正受給の日の翌日から返還の日まで、年3%の割合で算定した延滞金と、さらにこれらの合計額にその2割に相当する額を加えた額の返還を請求されることになります。

したがって、不正に受給した金額よりも多くの金額を返金しなければならなくなるのです。
【参考】雇用調整助成金(不正受給関係)/厚生労働省

2:今後の助成金などの受給資格の喪失

また、一度助成金などを不正受給してしまうと、以後数年間は受給資格を失う場合が多いです。たとえば、雇用調整助成金を不正受給した場合には不正受給日から5年間、雇用調整助成金だけでなくそれ以外の厚生労働省の助成金の受給ができなくなります。

この期間は、上記1の返還を行っていない場合にはさらに延長されることがあるとされています。
【参考】雇用調整助成金(不正受給関係)/厚生労働省

3:事業者名の公表

さらに、不正受給を行った場合は、多くの場合その事業者名、所在地、不正の概要などが公表されており、雇用調整助成金、持続化給付金などを不正に受給した事業主についても公表されています。このようなことは、企業にとって極めて大きなレピュテーションリスクといってよいでしょう。
【参考】持続化給付金、家賃支援給付金、一時支援金、月次支援金、事業復活支援金における不正受給者の公表についてにおける不正受給者の公表について/経済産業省

4:犯罪の成立

何よりも忘れてはならないのは、虚偽の書類を作成し、助成金などを不正に受給することは、私文書偽造(刑法159条)、詐欺罪(刑法246条)に該当するということです。詐欺罪が成立すると、10年以下の懲役が科される可能性があります。
【参考】
刑法(明治四十年法律第四十五号)私文書偽造等 第百五十九条/法令検索
刑法(明治四十年法律第四十五号)詐欺 第二百四十六条/法令検索

経営者が今一度見直すべきポイント

助成金などの不正受給は、経営者が意図的に行っているような悪質なケースもありますが、経営者自身が意図しないところで従業員や申請の代理人がこれを行ってしまっているようなケースもあります。経営者としては、申請前には要件を満たしており、必要な資料が偽造ではなく適切に揃っているかをしっかりと確認し、申請を行う従業員に対してもこの点を指導しておきましょう。

特に、担当する従業員に「助成金を必ずもらえるようにする」というプレッシャーをかけることは、当該従業員にとって書類の偽造など不正を行う誘引となってしまいます。

そもそも助成金などの申請に必要な資料は、法令上事業を行ううえで必要とされているものがほとんどですので、日ごろからこうした資料を適切に作成しておけば、助成金などの受給のために書類の偽造を行う必要はないはずです。したがって、常日頃から法令上作成・保存が求められる書類を適切に用意しておくことが重要でしょう。

また、たとえば雇用調整助成金では速やかに自主申告し、返金を行えば、事業主名などの公表はなされないことになっています(ただし、重大な悪質事案は除きます)。多くの助成金などでも同様の措置が取られていますので、万が一助成金などの不正受給をしていたことが発覚した場合には速やかに自主申告して返金するようにしましょう。

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*SFIO CRACHO, buritora, CrizzyStudio, Atstock Productions / shutterstock

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