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従業員と会社を守る「企業防災」とは?まず取り組むべきファーストステップ

2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」。まさか元日に大きな地震が起こるとは思っていなかった人も多いのではないでしょうか。

2000年以降に起きた「震度7」以上の主な地震を振り返ると、2004年新潟県中越地震、2011年東日本大震災、2016年熊本地震、2018年北海道胆振東部地震などが挙げられますが、ここに挙げた以外にも毎年全国のどこかで地震が発生しています。

また、現在「首都直下地震」と「南海トラフ地震」の発生が懸念されていて、南関東の地域でマグニチュード7の地震が発生する確率は30年以内に70%と考えられています。そして、東海から西南日本広域の南海トラフ沿いの地域でマグニチュード8~9クラスの地震が発生する確率は70~80%といわれています。

地震や災害はいつ起こるかわからないからこそ事前の備えが必要となります。特に、経営者の方は社員と会社を守る「安全配慮義務」や事業を早期復興させるための「BCP(事業継続計画)」などを考慮しておくべきでしょう。とはいえ、何から準備したらいいかわからないという声をよく聞きます。

今回は企業で備えておくべき基本的な対策として「企業防災」についてご紹介します。

【参考】
日本付近で発生した主な被害地震(平成8年以降)/ 気象庁
国土交通白書 2020 第2節 地球環境・自然災害に関する予測/国土交通省

災害が起きた場合の企業のリスクと対応事項とは

まずは、自分の住む地域やオフィスがある地域で地震や災害が発生した場合を考えてみてください。

災害が発生した場合にまず経営者がすべきこととして、一つ目に「従業員の安全を確保し命を守る」こと、二つ目に事業活動を継続、復旧させて会社を守る「BCP」があげられます。

1.「従業員の安全を確保し命を守ること」

たとえば、社内で勤務中に震度7クラスの地震が発生したとします。

棚が倒れてきたり、天井から電気が落下してきたり、建物が倒壊することも考えられます。そこに従業員が巻き込まれてしまったら、けがをするほか最悪の場合亡くなってしまうこともあるかもしれません。従業員の命を守ることは経営者の役割の一つです。

勤務中の地震によって従業員がけがをしたり亡くなったりした場合、安全配慮義務違反*などに基づき損害賠償責任を負う可能性も考えられます。

災害から従業員の命を守るためには、災害が発生する前に取り組んでおかなければなりません。

*労働契約法第5条「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものする」
【参考】「労働契約法第5条」/厚生労働省

2.「事業継続」情報漏洩にも注意

従業員の命を守ったうえで、会社や事業を継続させるためにも、災害が起きた場合どのようなリスクがあるのか把握しておく必要があります。

災害が起きた際に企業が受けるリスクには次のようなことが考えられます。

  • 地震による建物や設備の損壊、機器等の故障
  • サーバーなどの機器の損壊や水没によるデータ消失、情報漏洩
  • 建物からの出火や薬品の流出、看板の落下により周囲への二次被害のおそれ
  • 電気や水道などのインフラが止まり営業困難になる
  • 従業員や取引先が被災したことにより人員不足や取引に時間がかかる

上記のようにさまざまなリスクが想定されます。災害の規模が大きいほど復旧にも時間がかかることも考え、BCPの作成を事前にしておきましょう。

【こちらもおすすめ】企業が策定すべき「事業継続力強化計画」とは?【チェックリスト付き】

災害が起きる前にしておきたい対策

ここからは「企業防災」として災害が発生する前にどのようなことに取り組めばよいのかご紹介します。内容を参考にしてできることから着手してみましょう。

ハザードマップ等で被害想定の確認

自治体から出されているハザードマップを確認し、周辺の災害のリスクをチェックしてください。ハザードマップでは、浸水想定、土砂災害警戒区域、津波・高潮、地震のリスク、避難所の場所などを確認することができます。あらかじめ会社周辺のことを把握しておくことが防災の第一歩です。

あわせて社内の避難経路も確認しておきましょう。エレベーターが止まった際に、非常階段に出られるようになっているか、通路に段ボールなどの荷物が積まれていないか確認し、万が一の際の妨げにならないようにしておきましょう。

従業員の安全確保方法を確立

ここでは、「①安否確認」「②備蓄」「③災害対応マニュアル」について紹介します。

①安否確認

「安否確認」の方法は決まっていますか?

電話や社内チャット、メールのほか安否確認システムを導入する方法もあります。災害時にスムーズに安否確認ができるように連絡手段を把握しておきましょう。

緊急時に誰が、誰に連絡をするのか、一斉メールやチャットを誰が送るのかまで決めておかないと災害時に安否確認に時間がかかってしまいます。

「緊急連絡網があるものの、実際に使ったことがなくて、連絡がとれるのかわからない」という声をよく聞きます。安否確認の方法を決めたら、実際に活用してみましょう。

②備蓄

続いて、従業員の人数分の「備蓄」です。

3日分を目安に、アルファ化米や乾パンなど長期保存ができて簡単な調理で食べられる「食料」と「水」の備蓄をしておきましょう。水の備蓄は基準として一日あたり「一人につき3リットル」とされています。

また携帯トイレの備蓄も必要です。今回の能登半島地震でも水道が止まってトイレが使えないという声が多く聞かれました。企業においても携帯トイレを備蓄しておくことをおすすめします。

見落としがちなのが賞味期限です。準備したからといって安心せず定期的に確認をして、期限が切れないようにしておきましょう。

加えて医療品や救急セットなども準備しておいてください。

③災害対応マニュアルの作成

「災害対応マニュアル」を作成し、従業員で共有しておきましょう。

災害発生時に指揮をとるリーダーを決めておき、平時に防災訓練をするなど災害時を想定して備えておきましょう。

また台風などの豪雨災害、大規模な地震発生時に、出勤するべきか迷うことがあると思います。たとえば、台風や大雨の場合「大雨特別警報」が発令されたら出勤しない、また地震の場合「震度6以上」は自宅待機するなど、具体的に決めておくと従業員の混乱も防げるでしょう。

「事業継続」するうえで事前にできる対策

まずは社屋の耐震化、社内什器の耐震対策

社屋の建物は「耐震基準」を満たしているでしょうか。耐震基準を満たしていない場合、大きな揺れで建物が倒壊する可能性もあります。耐震基準を確認しておきましょう。

そのうえで、社内の什器の転倒防止対策です。書類棚、ロッカー、デスクなど、普段使っているものが地震の際には倒れて凶器となるのです。固定をするなどして対策をしておく必要があります。

特に出入口や避難経路となるところには、倒れやすいものを置かないようにして通路を確保しておきましょう。

情報漏洩やデータの消失を防ぐ

自然災害の地震で機器の破損、水害や火災でデータの消失が起こることも考えられます。

データが消失する前にバックアップしておくことが効果的です。ただ、同じ場所でバックアップをしていては、同時にデータが消失してしまいますので、ほかの場所や営業所、拠点などにバックアップをしておくことが手段の一つです。

【こちらもおすすめ】備えの周知を促進する防災用品の「分散配置」とは

最後に

ここまで読んでいただいて、「災害対応できていなかった」と思われた方もいるかもしれません。最初にお伝えしたとおり、日本は毎年どこかで災害が発生しています。

明日は自分の地域で災害が発生するかもしれません。いざという時に備えておくことが「防災」です。防災意識が高まっている今こそ、自分たちにできる備えをすすめていきましょう。

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*metamorworks, photobyphotoboy, imtmphoto / shutterstock, 毛並良好 / PIXTA(ピクスタ)