登録

会員登録いただけると、

  • メールマガジンの受け取り
  • 相談の広場への投稿 等

会員限定のサービスが利用できます

登録(無料)を続ける
TOP > 記事一覧 > 経営・財務 > 売上と経費のバランスを分析するために知っておきたい損益分岐点売上高とは?
Asian,Business,People,Talking,In,Office,Lounge

売上と経費のバランスを分析するために知っておきたい損益分岐点売上高とは?

2024.04.17

前回のコラムでは売上と経費をテーマに、押さえておくべき利益の種類や考え方について書きました。ポイントを整理すると以下の3点の内容です。

  • 売上原価管理を行うことが粗利の増額、売上の向上につながっていく
  • 愚直に毎月、販売先毎や商品毎の粗利を検証していくことが大切である
  • 戦略的経費(3K)の効果的な配分の見極めと各経費一つひとつの見直しを検討する

今回は少し踏み込んで、売上と経費のバランスを見直すために大切な考え方である「損益分岐点売上高」や「限界利益」について説明します。

何から手を付けてよいのか迷っていらっしゃる経営者の方々は、まずはこの考え方を理解して、適切な改善策を講じていきましょう。

是非、最後までお読みください。

損益分岐点売上高を把握しよう

「損益分岐点売上高」という言葉を耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。これは「営業黒字と営業赤字の境目となる売上高」という意味をもっています。

「現在の経費で、最低でも売り上げなければならない水準がいくらか?」が分からなければ、ただやみくもに経営しているということになってしまいます。

具体的な財務実態把握の1歩目は「損益分岐点売上高」を調べるということになると筆者は考えます。

損益分岐点と変動費・固定費の関係

損益分岐点と限界利益の前にまず、理解しないといけない言葉があります。それは変動費と固定費です。

変動費は、売上高に応じて変動する費用です。たとえば、原材料費などはその最たる例です。一方、固定費は売上が上がろうが下がろうが問答無用でかかる費用のことをいいます。人件費・家賃・広告費などが挙げられます。計算式は以下のようになります。

売上高-変動費=限界利益

言い換えれば、売上からどうしようもなく発生してしまう変動費を引いたものが理論上考え得る利益の限界値ということです。

費用構造的に考えると、企業のコストがすべて変動費であれば極論、ノーリスクです。しかし、現実にはそんなことはなくどうしても固定費がかかってしまいます。つまり、費用面での企業のリスクは固定費の存在といえるでしょう。

【こちらもおすすめ】【経営者必見】財務格付制度の判定ポイントを徹底解説

損益分岐点売上高とは

ここから、損益分岐点売上高について説明します。

損益分岐点売上高とは、利益も損失も発生しない売上高のことです。たとえば、変動費率が40%(つまり限界利益率が60%)のケースで考えてみましょう。

売上高が変化しても、常に売上高の60%が限界利益となり、その60%の限界利益で固定費をまかなうことができれば利益が生み出され、固定費をまかなうことができなければ損失が発生することになります。

もし60%の限界利益で固定費をちょうどまかなうことができれば、利益も損失も発生せず、そのような状態の売上高が損益分岐点売上高となります。

まとめると、以下の計算式で損益分岐点を求めることができます。

損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率

目標営業利益を達成するための売上高

さらにもう一段階踏み込んで損益分岐点売上高について説明します。

損益分岐点売上高の考え方を利用すれば、営業利益の目標値を達成するために必要な売上高を算出することができます。目標営業利益を達成するための売上高の計算式は次のようになります。

目標利益を達成するための売上高=(固定費+目標営業利益)÷限界利益率

固定費に目標営業利益額を加えて限界利益率で割ると、目標利益を達成するための売上高を把握することができます。

自社の目標値を決めるのは経営者や経営幹部だと思います。この一連の考え方は最低でも理解したうえで、目標設定の協議に臨まなければならないといえるでしょう。

【こちらもおすすめ】中小零細企業にマッチする!根拠ある戦略・戦術をつくるクロスSWOT分析の手法

まとめ

最後に、経費削減と売上増加に関する注意点を述べます。筆者が今まで執筆したコラムで度々お伝えしてきた内容ではありますが、2点重要であると考えます。

  • 売上に直結する戦略的な経費となる広告費や交際費、交通費などの固定費を下げることで、利益率が向上しても絶対的な利益額が確保できなければ資金繰りが大変になることがある
  • 売上を伸ばすことにひたすら終始して、資金回収までの立て替え期間が伸び、仕入金額と回収額のズレが拡大することで、資金繰りが悪化する可能性があることを理解する

何をお伝えしたいのかといいますと、「経費削減と売上増加の努力は必要であるが、最優先で考えなければならないのは“資金繰り”である」という中小企業経営における原理原則です。この点は肝に銘じておきましょう。

上記の2点をふまえたうえでの経費削減と売上増加への施策を打ち出していっていただきたいと考えています。

※売上と経費のバランス・損益分岐点を計算できるチェックシートを作成しました。ぜひ、活用してみてください。

【ダウンロードはこちら】Excel(エクセル)で売上と経費のバランス・損益分岐点をチェックする

*takayuki, Prathankarnpap, Chay_Tee, fizkes, metamorworks / shutterstock

【エクセル版チェックシートも】はじめてのオフィス移転お役立ちマニュアル