
残業時間マイナス20時間も。エンジニア主体の働き方改革!株式会社ムーブ代表取締役社長・西坂大介氏にインタビュー
時代の最先端をひた走る経営者にインタビューし、その成功の秘訣を探る本連載「成功を掴んだターニングポイント」。
今回は、株式会社ムーブ 代表取締役社長 西坂大介氏にお話を伺いました。
株式会社ムーブはオープンソースを用いて、安定したWebシステムの構築・開発・保守、ならびにコンサルティングを行っています。システム開発では要件定義からはじまる一連の開発工程すべてを自社内で対応しています。また、自社サービスの開発・運用やシステムコンサルティング、プロジェクト支援などの事業も展開しています。
今回は、株式会社ムーブの直近のオフィス移転から今後の展望に関して、経営の本質に直結する“問い”を投げかけてみました。
株式会社ムーブ
代表取締役社長
西坂 大介
名古屋大学大学院を卒業後、日本IBMに入社。その後、株式会社ライブドアの前身の有限会社オン・ザ・エッヂに入社し、ライブドアショックを経験。2006年6月にムーブを設立。好きな動物はネコ、座右の銘は「為せば成るかも」。現在も経営者でありながら、現役のPM兼プログラマとして業務にあたる。
無駄なモノを削ぎ落した集中できる環境作り

出典:経営ノウハウの泉
――今回のオフィス移転の背景を教えてください
西坂大介(以下、西坂):移転のきっかけは、社員数の増加です。これからの成長を見据えて、広めのオフィスを選びました。また、以前の事務所にはトイレが一つしかなく、男女別のトイレを整備する必要がありました。以前は男性社員が大半であったため、特に気にしていなかったというのが正直なところですが、女性社員が増えてきたことで急務となりました。
――オフィスデザインにおいてのこだわりを教えてください
西坂:私は、とにかくオフィスに“不要なモノは置きたくない”というこだわりがあります。エンジニア的な思考かもしれませんが、オフィスは仕事をする場所として捉えており、効率を重視して最低限のものだけを配置しました。
エンジニアは複数のモニターを使用することもあるので、個人のデスクは大きめに設計しました。また、リラックスした環境で集中して作業ができるように、蛍光灯をダウンライトにして音楽をかけています。
――エンジニアの方はそういう思考の方も多いですよね
西坂:はい。広報の女性社員とは意見が合いませんでしたが(笑)。

出典:経営ノウハウの泉
西坂:あとは、営業用のWeb会議ブースを設置しました。弊社ではエンジニアのヒューマンスキル向上のために、自らオンラインでクライアントとやり取りすることもありますが、エンジニアたちは会議ブースを使わずに自席で行っています。エンジニアは、モニターなどがある仕事のしやすい自席から動きたがりませんね(笑)。
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辿り着いた“残業ゼロ”という働き方

出典:経営ノウハウの泉
――今までで印象に残っているターニングポイントを教えてください
西坂:創業前に勤めていた会社で、受託開発事業を撤退するという方針変更があり、当時、受託事業のマネージャーだった私はお役御免となりました。案件を引き継いで独立しましたが、その案件のサービスが終了することになり、困っていたところに元同僚が入社してくれて、再び受託事業をスタートできました。エンジニア2~3人で開発に集中していましたが、営業を採用するという方針に変更してからは、もともと技術力を高く評価をいただいていたこともあり、事業が一気に成長しました。
弊社では、“濃く働き、自分らしく生きる”をモットーに掲げ、“残業ゼロ”を目指していますが、システム会社には突発的なお客さまからの問い合わせがあるため、完全な残業ゼロは実現困難です。そこで、就業規則上の勤務時間は9時~18時ですが、普段は17時に退社し、空いた1時間を突発的なトラブルに割り当てるようにしています。そのため、月20日営業日なら残業時間はマイナス20時間になる可能性もあります。
知らないこと、出来ないことは恥ずかしいことではない

出典:経営ノウハウの泉
――採用時に重視していることを教えてください
西坂:柔軟性と協調性を重視しています。組織の中で相手を敬う気持ちが大切だと考えています。
ただし、ヒューマンスキルに関しては、最初から高い必要はありません。業務を通して徐々に高めていけばと考えているため、成長の見込みがある方を育てていくことに重きをおいています。
――成長の見込みとはどのようなところで判断していますか?
西坂:例えば、「Web開発をやりたい」という方がいますが、GitHub(ソフトウェア開発のバージョン管理プラットフォーム)のアカウントも持っていないと、難しいと思います。現代ではこのようなツールは簡単に利用できますからね。どの仕事でも最終的には自ら努力する姿勢が重要です。
また、業務で不明点があったときは、どんどん質問をするように指導をしています。質問をせずに何時間も時間を無駄にする方が罪なことです。無駄な時間を過ごすのであれば、さっさと聞いて解決し、知識はあとから高めていけば何の問題もありません。
――働き方はどうですか?
西坂:勤務は週4日出社・1日テレワークのハイブリットか、フルテレワークかを月毎に社員が自ら選択します。また、交通費とは別に出社手当を支給しています。
コロナ禍でリモート手当が普及しましたが、私自身、現役のPM(プロジェクトマネージャー)として働くなかで、出社するメンバーの方が大変だと感じました。ただ、コロナ禍のテレワークを通して、1日リモートワークにするだけで体が休まるということも分かりましたので、水曜日をリモートワークの日に設定しています。
過剰な売上目標より、社員が幸せに過ごせるような環境を

出典:経営ノウハウの泉
――今後の展望を教えてください
西坂:社員が17時には退勤して、プライベートを大事にしながら働き続けることが出来る会社であり続けたいと考えています。
私自身はハードワーカーで、前職では多忙を極めて平日は週に一度しか帰宅できませんでした。ところが、創業当初は仕事がないので早く帰宅し、家族とご飯を食べていると、「あれ?これが普通なんじゃないか」と気が付きました。
過剰な売り上げ目標に追われるよりも、社員が幸せに過ごせるような環境を提供し、適度な仕事量で技術力を高め、弊社から優れたエンジニアが育つよう努めていきたいと考えています。
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かつての経験から、5億円の売上を上げても社員に還元される額が少なく、そのことに心苦しさを感じていたと話します。経営者として今では、頑張った社員に対してしっかりと還元できることに喜びを感じており、社員の成長を支援することに全力を注いでいます。自身も現役エンジニアとして最新技術に精通し、社員から支持されているのも納得です。エンジニア目線でのオフィス環境作りや組織作りが非常に印象的でした。
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