【無料テンプレート付き】身元保証書の作成方法をわかりやすく解説。民法改正による変更点とは?
就職や転職の際に求められることがある身元保証書。これは雇用主が従業員の信頼性を確認するための重要な書類です。しかし、その内容や作成方法、法的な位置づけについては、多くの人が不安を抱えています。本記事では、身元保証書の基本的な知識から最新の法改正の影響まで、詳しく解説。就職活動中の方や人事担当者の方にとって、必須の情報となるでしょう。
身元保証書とは
身元保証書は、労働者が会社に入社する際に提出する書類の一つです。この書類は、労働者が会社に損害を与えた場合に、身元保証人がその損害を賠償することを約束するもの。通常だと、身元保証人は労働者の親族や知人が務めます。身元保証書の提出は、法的には義務ではありませんが、会社が労働者を信頼し、安心して雇用するための一つの手段です。
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身元保証人は誰を選ぶべき?
身元保証人は「保証の責任を負う能力があり、かつ労働者と信頼関係のある人」を選ぶことが一般的です。具体的には以下のような人が選ばれます。
- 両親
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 親戚
- 信頼関係のある友人や知人
労働者自身が選ぶことが一般的ですが、身元保証人としてふさわしくないケースもあるため、事前におおまかな範囲でどのような人が適任か規定している会社も多いでしょう。身元保証人としてふさわしくないとされるのは、たとえば以下のようなケースです。
- 未成年者
- 認知症などで意思の確認が難しい方
- 経済的に安定していないなど保証の責任を負うのが難しい方
- 労働者との関係が薄すぎる第三者
身元保証人には労働者との信頼関係があり、経済的に安定している人を選ぶことが重要です。
身元保証会社はありなのか?
身元保証会社は、個人の代わりに身元保証人となるサービスを提供する企業です。身元保証人になってくれる人がいない場合には、労働者がそのようなサービスの利用を希望する場合があります。しかし、身元保証会社の利用にはメリットだけでなくデメリットやリスクがあるため、事前にこれを許可するか慎重に検討し、ルールを決めておく必要があるでしょう。
身元保証会社のメリットとしては、身元保証人の候補がいない労働者でも保証されることが挙げられます。
一方で、デメリットとしては身元保証会社の信頼性の問題が挙げられるでしょう。身元保証会社は公的な資格などが必要ないため、中には保証能力に乏しい企業や、コンプライアンス上の問題を抱えた企業もあります。また、身元保証会社の契約の法的な有効性や責任の範囲についても考えなければなりません。身元保証会社の利用を許可するかどうかは、これらの点を十分に考慮し、慎重に判断することが重要です。
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民法改正の変更点とは
2020年4月に施行された民法改正により、身元保証制度に重要な変更が加えられました。最も注目すべき点は、身元保証人の責任に上限を設ける必要ができたことです。改正前は保証額が無制限でしたが、改正以降は上限額(限度額)が記載されていない契約については無効となってしまいます。これにより、身元保証人の負担が軽減され、より安心して保証人になることができるように。また、保証期間も3年以内、別途定めるとしても最長5年に限定されるようになり、長期にわたり責任を負うリスクが軽減されました。
【参考】就職時の身元保証人とは?/暮らしの法律Q&A
これらの変更により、身元保証制度がより公平で透明性の高いものになったと言えます。責任の範囲が明確化されたほうがトラブルになる可能性が低くなるため、企業側にもメリットがある改正と言えるでしょう。上限額については「給与の〇ヶ月分」とすることが多く、金額にすると100万~1,000万円ほどになるよう設定されることが一般的です。
身元保証書の作成方法と記載項目
身元保証書には、法的に決まったフォーマットはありません。ただし、一般的によく記載されるいくつかの重要な項目があります。WordやExcelなどを使って、それらの記載項目をビジネス文書の形式でフォーマット化しましょう。
各項目の詳細については、以降のセクションで詳しく説明していきます。
表題や宛名、日付欄
まず表題や宛名、日付欄を書きましょう。表題には「身元保証書」と明記し、文書の性質を明確にします。宛名は通常、自社の会社名と代表者の役職、氏名を記載します。日付欄は身元保証人が記入した日付を書きますが、書く場所がわかりやすいようにフォーマットだけは整えておきましょう。これらの情報は文書の上部に配置され、一目で文書の種類や対象、記入時期がわかるようにします。
労働者本人の署名欄
身元保証書には、労働者本人の署名欄が設けられています。この欄には、労働者が自筆で氏名を記入し、押印することが一般的です。署名欄を設けることで、労働者本人が身元保証書の内容を理解し、同意していることを示すことができます。また、この署名は労働者の意思確認の証拠としても機能します。労働者本人の署名欄には、氏名だけでなく、住所や生年月日などの個人情報を記入する場合もあります。
身元保証の表明文
身元保証の表明文は、保証人が労働者の身元を保証する意思を明確に示す重要な部分です。通常、「私は上記の者が貴社の就業規則その他諸規定を遵守することを保証します」といった文言が使われます。「上記の者」とは労働者のことです。また、保証人が負う責任の範囲や期間についても明記されることがあります。たとえば、「上記の者が貴社に損害を与えた場合、その賠償の責任を負います」といった文言です。
具体的な文言をいちいち保証人が書くことは現実的ではないため、あらかじめ企業のほうで文章を決めて記載しておきましょう。
身元保証人の署名欄
身元保証人の署名欄には、保証人の氏名、住所、生年月日、電話番号などの基本情報を記入する欄が設けられています。また、保証人の印鑑を押す欄も必要です。印鑑は認印でもかまいません。これらの情報は、身元保証人の特定と連絡先の確認、そして保証の法的効力を確保するために重要です。
まとめ
身元保証書は雇用契約において重要な書類ですが、民法改正により保証人の責任が制限されました。身元保証人の選定には慎重を期し、信頼できる人物を選ぶことが大切です。記載項目には表題、宛名、日付、労働者本人の署名、保証の表明文、保証人の署名などが含まれます。雇用主と従業員の双方が内容を十分に理解し、適切に作成することが重要です。身元保証会社の利用も選択肢の一つですが、メリットとデメリットを慎重に検討する必要があります。
* Orathai Mayoeh / shutterstock