カムバック採用とは?メリット・デメリットや成功のポイントを解説
近年、人材採用の新たな手法として「カムバック採用」が注目を集めています。この制度は一度退職した社員を改めて雇用し、再び自社で活躍してもらうことが目的です。カムバック採用は単なる人材確保の手段ではなく、企業の成長戦略の一環として位置づけられています。他社での経験を蓄えた元社員が自社に戻ってくることで、組織力を強化できるでしょう。この記事では、カムバック採用の概念やメリット・デメリット、成功のためのポイントを解説します。
目次
カムバック採用とは
カムバック採用とは、以前に退職した社員を再び雇用する制度のことです。「出戻り採用」や「ジョブリターン制度」とも呼ばれ、近年の人材不足を背景に注目を集めています。この制度は、育児や介護、キャリアアップなどの理由で一度退職した社員に対して、再び雇用の機会を提供するものです。
株式会社プロフェッショナルバンクの調査によると、再雇用を実施したことがある企業は67%。また、再雇用における採用率の割合は、「採用率100%」が34%、「採用率50%以上」が48%であり、再雇用を実施したことのある企業において採用率が高いことがわかりました。
【参考】再雇用(アルムナイ採用)に関するアンケート調査/PR TIMES
ただし、多くの場合、カムバック採用の条件として、退職時の理由や在籍期間など一定の条件を設けています。たとえばキヤノン株式会社では、1年以上の勤続経験があることが応募の条件です。また、当たり前ですが、必ずしも再雇用を保証しなければならないわけではありません。あくまでも、一般の中途採用と同じ流れで実施しましょう。
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アルムナイ採用との違い
カムバック採用とアルムナイ採用は、どちらも退職者を再雇用する制度を指します。企業によっては、カムバック採用は結婚や出産、介護などのやむを得ない理由で退職した社員を対象としたり、当時の勤続年数など条件を提示したりすることがあるようですが、明確に定義として決められているわけではありません。一方でアルムナイとは「卒業生」や「同窓生」を意味する言葉で、基本的には過去にその企業に在籍していた社員全員が対象とされます。
「カムバック採用(アルムナイ採用)」と表現されることも多く、制度として大きな差はないといえるでしょう。
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カムバック採用のメリット
カムバック採用には、大きく以下の3つのメリットがあります。
- 即戦力の確保
- 教育コストの削減
- 新たなスキルの導入
元社員は、業務内容や社内システム、企業文化を理解しているため、企業側にとって即戦力となりえるでしょう。また、同様の職種での再雇用であれば、教育コストを大幅に削減できる点もメリットです。さらに、他社や異なる業界での経験を活かした、新しい視点や知見を得られる点も大きいでしょう。他社で得たノウハウや手法を取り入れることで、組織全体の活性化につながります。たとえば、競合他社で数年勤務した元社員を再雇用すれば、競合のノウハウや自社にない知識が手に入り、競争力アップが期待できるでしょう。
カムバック採用のデメリット
カムバック採用には、考慮すべきデメリットも存在します。
主なデメリットとしては以下の3つです。
- 既存社員のモチベーションが低下する恐れがある
- 環境の変化への適応に時間を要する場合がある
- 人間関係の構築が難しい場合がある
元社員を採用する場合、既存社員のモチベーション低下に注意が必要です。とくに、処遇の差や給与面での公平性の確保が課題となるケースも少なくありません。こうした状況が、職場の雰囲気に影響を与える可能性があります。また、企業文化や業務の流れが退職時から大きく変化している場合、適応するまでに時間がかかるケースもあるでしょう。新しいツールやシステムの習得に苦労する人は多くいます。さらに、周囲からの「出戻り」というレッテルや、以前の人間関係を気にする人も少なくありません。そのため、受け入れ体制を整備する必要があります。
カムバック採用を成功させるポイント
カムバック採用を効果的に運用するためには、いくつかの重要なポイントがあります。
選考基準や採用時の労働条件を明確にする
第一に、明確な選考基準の設定が大切です。退職時の勤続年数や離職理由、退職後の経過年数など、具体的な基準を設け、偏りのない選考を行いましょう。また、再雇用後の労働条件を明確にし、就業規則にも明記して透明性と公平性を確保することも不可欠です。労働条件を明確にすることは、応募者だけでなく、既存社員に対しても同様です。カムバック採用は中途採用のひとつの手段であり「特別扱いではない」と明確にすれば、既存社員からの不満を防げるでしょう。
退職者とコミュニケーションを行う
カムバック採用を取り入れる際は、退職者との積極的かつ継続的なコミュニケーションも重要です。たとえば、パナソニックグループでは「アルムナイコミュニティ」を設置し、退職者同士や現役社員との交流の場を提供しています。このような取り組みで「また戻ってきてほしい」というメッセージを発信し、退職した社員が「戻りたい」と思える環境づくりも、優秀な人材を確保するために効果的です。
まとめ
カムバック採用は、人材不足が深刻化する近年において、企業の採用戦略の重要な選択肢となっています。即戦力の確保や教育コストの削減といった企業側のメリットと、慣れた環境で再スタートができる求職者側のメリットを兼ね備えた制度です。一方で、既存社員との処遇のバランスや、職場環境の変化への適応、人間関係の再構築など、考慮すべき課題も存在します。これらの課題に対しては、明確な評価基準の設定や既存社員への公平性の周知や、受け入れ体制の整備が欠かせません。
また、退職しても継続的なコミュニケーションをとり、元社員が「戻りたい」と思える企業文化を作ることも重要です。カムバック採用は、デメリットを踏まえて上手に活用すれば、優秀な即戦力人材の確保につながり組織力を高められます。制度の導入に迷っている企業様や人材確保にお悩みの場合は、この機会にぜひ検討してみてください。
*David Gyung / shutterstock