リファラル採用とは?近年注目の理由やメリット、デメリットを解説
近年、採用の手法として“リファラル採用”が注目を集めています。従来の採用方法に代わる新たな選択肢として多くの企業がこの手法を取り入れていますが、リファラル採用にはメリットやデメリット、押さえるべきポイントがあるので、導入前にしっかりと把握しておかなければなりません。本記事では、リファラル採用について詳しく解説します。
目次
リファラル採用とは
リファラル採用とは、自社で働く社員が自身の友人や知人の中から人材を紹介し、雇用するという採用方法です。紹介者は応募者のスキルや人となりを知っており、また自社のことについても知っているため、自社によくマッチする人材を紹介できます。
この方法は、企業が広告や人材紹介会社(エージェント)などを通じて採用する従来の方法と比べてコストを抑えることが可能であり、紹介者の個人的なネットワークを活用することで、企業が直接アプローチできない潜在的な人材層にもアクセスできるというメリットがあります。
なぜ近年、リファラル採用が注目されているのか
リファラル採用が注目されている理由には、人手不足による採用競争の激化と、定着率の問題が挙げられます。
日本の労働市場は少子高齢化による人口減少と、有効求人倍率の上昇で採用競争が激化しています。求職者を待つだけではなく、企業から積極的に優秀な人材を探す必要があり、この状況がリファラル採用の重要性を高めているのです。
また、新型コロナウイルスの影響で働く人々の価値観が変わりました。リモートワークが一般的な働き方として定着し、より働きやすい環境を求めて転職を希望する人が増えています。そのため、企業は社員の長期キャリア形成を促すためにも、企業文化や目標に共感する人材を採用する必要があります。リファラル採用では、応募者が紹介者である友人や知人から企業の内情を事前に聞くことが多いため、文化や価値観がマッチングしやすく、結果的に社員の離職率を下げる効果も期待できます。
リファラル採用のメリット
リファラル採用には、多くのメリットがあります。
1. 採用コストの削減
従来の採用活動では、求人広告の掲載費用、採用エージェントへの手数料、面接や選考のための人件費など、さまざまなコストが発生します。マイナビが2023年3月に発表した調査結果によると、中途採用1人あたりのコストは、職種にもよりますが高いところだと求人広告費だけで82.4万円ほどにもなるようです。
リファラル採用なら、社員が自身のネットワークから候補者を紹介するため、求人広告などのコストを大幅に削減できるというメリットがあります。もちろん紹介者となる社員の人件費やインセンティブは必要ですが、通常の中途採用よりは低コストで採用できる場合が多いようです。
【参考】職種ごとの採用者1人あたりの求人広告費/マイナビ 中途採⽤状況調査2023年版
2. 入社後のミスマッチ防止と定着率向上
リファラル採用は、既存の社員が自社のよさを理解したうえで、マッチングする応募者を紹介する制度です。よって、入社後のミスマッチが発生しにくいといったメリットがあります。
紹介者が勤務環境や職務内容を正確に伝えることで、応募者が事前に職場環境を理解し、自分に合った職場かどうかを判断することができます。紹介者は現場で働く社員であり、応募者とも信頼関係があると考えられます。現場に根ざした率直な情報共有により、正確で解像度の高い職場情報を応募者に伝えることができるのです。
これにより、期待と現実のギャップが減少し、離職率の低下につながると考えられます。また、紹介者が新入社員のメンター的存在となることで、定着を促進する効果も期待できます。
3. 潜在層にもアプローチが可能
既存の社員が自身のネットワークを通じて新たな人材を紹介するリファラル採用は、具体的な転職活動をしていない潜在的な人材層にもアプローチできます。
求人広告などを掲載して応募を待つスタイルの採用活動では、積極的に転職活動を行っている求職者にしか接触できません。総務省の労働力調査(2022年)によると“転職等希望者”は968万人いることがわかっています。しかし、そのうちの“求職者”は341万人にすぎず、残りの628万人は転職活動をしていない“非求職者”です。「転職希望だが、まだ活動はしていない」という膨大な潜在層に対して、紹介者の人脈という手段でアプローチできるリファラル採用は人手不足の時代には非常に有効な手法といえるでしょう。
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【参考】労働力調査 詳細集計 全都道府県 結果原表 全国/総務省、労働力調査 用語の解説/総務省
リファラル採用のデメリット
リファラル採用には、紹介者の感情への影響、社員の均一化、採用期間の長期化などの潜在的なリスクが存在します。
1. 採用結果によっては紹介者の感情に影響する
リファラル採用は、紹介者が自身の信用を担保として推薦します。応募者が採用プロセスで不採用になってしまった、入社後にすぐに離職してしまったといった場合、紹介者のメンツが丸つぶれになってしまう可能性があります。
紹介者がその結果に納得しているならよいでしょう。しかし、せっかく紹介したのに不採用になってしまっては、あまりよい気分ではないかもしれません。応募者もショックを受けているはずであり、双方の関係に亀裂が入ってしまう可能性もあります。そうなると、紹介者の会社に対する帰属意識や忠誠心にも影響しかねません。
リファラル採用を実施する際には、不採用もあり得ることを事前に説明しておくなど配慮が必要となるでしょう。
2. 同質な社員ばかりが集まってしまう可能性がある
既存の社員が自分と同じような価値観やスキルを持つ人を紹介する傾向があり、新たな視点やアイデアをもたらす多様性が失われる可能性があります。また、同じバックグラウンドを持つ人々が多いと、企業文化が硬直化して変革が難しくなることも挙げられます。とくに新市場への進出やビジネスモデルの変革など、柔軟性が求められる状況ではデメリットとなるでしょう。
3. 採用期間の長期化
一般的な求人広告やエージェントを通じた採用では、応募者がすぐに集まることが期待できますが、リファラル採用では社員の人脈を頼りにするため、適切な候補者を見つけるまでに時間がかかることがあります。また、紹介された候補者がすぐに転職を考えていない場合、その人が動き出すまで待つ必要があるでしょう。これらの理由から、リファラル採用は採用スケジュールの長期化を招く可能性があるのです。メインの採用手段としては考えないほうがよいでしょう。
リファラル採用を成功させるためのポイント
リファラル採用を成功させるには、社員満足度の向上、紹介者の発言制限の緩和、そして試験的な導入から始めることが重要です。
1. 普段から社員満足度を高める
まず、社員が自社を誇りに思える環境を作ることが重要です。自分の知り合いを紹介するのですから、自信を持って紹介できる会社でなければなりません。
とくにオフィス環境は社員満足度において重要な要素です。たとえば、オープンスペースや共有エリアは社員同士のコミュニケーションを促進し、良好なチームワークを生み出します。これは仕事の質を向上させ、社員が職場に満足する一因となります。また、自然光の取り入れやカフェスペースの設置は、社員のストレスを減らし、満足度を高めます。快適なオフィス環境は、社員が企業に長期間勤める意欲を高め、離職率を低く抑える効果があります。オフィス環境を整えることが、リファラル採用を成功させ、社員を定着させるためにも重要なのです。
2. 紹介者の発言や意見を過度に制限しない
紹介者が自由に意見を述べ、自身の経験を共有できる環境を提供することで、よりリアルで説得力のある情報が求職者に伝わります。また、紹介者が企業のよい面だけでなく、改善が必要な点も含めて正直に伝えることも重要です。そのほうが求職者は企業のリアルな姿を理解し、入社後のミスマッチを防げるからです。自社の課題点はつい隠したくなりますが、入社後のミスマッチを減らすほうが企業にとって有益な結果をもたらすでしょう。
3. まずは試験的に小さく始める
新たな採用方法を全社規模で一気に導入すると、予期せぬ問題が発生した場合に対応が難しくなります。初めての試みであれば、部署単位やプロジェクト単位での導入を考えるとよいでしょう。また、この試験的な導入期間を通じて、リファラル採用のメリット・デメリットを自社の状況に照らし合わせて評価し、必要な改善策を見つけ出すことも重要です。
まとめ
現在は人手不足が顕著な時代であり、とくに高度なスキルや専門知識を持つ人材の確保が課題となっています。この状況でリファラル採用は非常に有用な手段といえますが、効果的に運用するにはいくつかの注意点と押さえるべきポイントが存在します。成功のためにはこれらの要素をしっかりと考慮しつつ導入する必要があるでしょう。
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