
休日出勤には割増賃金が必要?休日の種類と割増の条件について解説
業務が立て込んでいるときには、休日出勤を従業員に依頼することがあるでしょう。しかし、従業員の権利と安全を保護するため、休日出勤も法的に規制されています。本記事では、休日出勤の定義から給与への影響、割増賃金の発生条件、計算方法まで詳しく解説。休日出勤に関する正しい知識を身につけることで、コンプライアンスを守り、会社を成長させるための一助となれば幸いです。
休日出勤とは
休日出勤とは、本来休日とされている日に従業員が出勤して仕事を行うことを指します。通常のルーティン業務に煩わされないため、集中できてアウトプットのスピードが速くなる一方、従業員にとっては負担が大きくなる可能性があるでしょう。休日出勤が発生する主な理由としては、業務の繁忙期や緊急対応、プロジェクトの締め切りなどが挙げられます。
企業側は必要に応じて休日出勤を要請することが認められていますが、従業員の健康や負担に見合った対価を考慮しなければなりません。したがって、労働基準法では、休日労働に関する規定があり、適切な割増賃金や代休の付与などが定められています。
【参考】法定労働時間と割増賃金について教えてください。/厚生労働省
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休日の種類
休日出勤の法律を理解するには、前提として休日の種類を抑えておく必要があります。なぜならどの種類の休日に出勤するかによって企業側に課せられる義務も変わってくるからです。休日には主に以下の5つの種類があります。
法定休日 | 労働基準法で定められた休日 |
所定休日(法定外休日) | 会社が独自に定めている休日 |
振替休日 | 休日出勤の代わりにあらかじめ定めた別日の休日 |
代休 | 休日出勤完了後に定めた別日の休日 |
祝日 | 国民の祝日に関する法律で定められている日 |
休日出勤を理解するために、上記5つの休日をまず覚えておきましょう。
休日出勤により給与は変わる?
休日の種類によっては、休日出勤の際に通常の勤務日よりも高い給与を支払う必要があります。労働基準法では、法定休日に労働した場合、通常の賃金に加えて、35%以上の割増賃金を支払うことが定められています。一方、所定休日の場合は法律上、休日出勤の割増賃金の定めはありません。ただし、所定休日に勤務する時間が時間外労働になる場合には、時間外労働として25%の割増賃金が発生します。
また、法定休日に出勤する場合でも、振替休日が適用できる場合は割増賃金が発生しないこともあります。休日出勤による給与の変動は、労使間の取り決めや就業規則に基づいて決定されるため、詳細は各企業の規定を確認することが重要です。
【参考】法定労働時間/厚生労働省
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休日出勤の割増賃金が発生するケース
休日出勤において割増賃金が発生する原則は、以下の通りです。
- 法定休日に休日出勤する場合
- 所定休日に休日出勤する場合で、時間外労働が発生する場合
原則的には出勤した日が法定休日かどうかで割増賃金の有無が決まります。また、所定休日に出勤する場合には休日出勤の割増賃金は発生しませんが、8時間または週40時間を超えて労働する場合には、超過した労働時間には時間外労働の割増賃金が発生します。
休日出勤の割増賃金が発生しないケース
休日出勤の割増賃金が発生しないケースは以下のような場合が考えられます。
- 所定休日に出勤した場合で、時間外労働が発生していない場合
- 管理職の休日出勤の場合
- 法定休日に休日出勤する場合で、振替休日が適用できる場合
振替休日とは、休日に勤務した分を別の日に休日として振り替えることを指します。この場合、労働時間の調整が行われるため、割増賃金は不要です。ただし、振替休日は前もって労働日と休日の振替を決めておく必要があります。予定になかったのに急に休日出勤をして、事後にもともとの労働日を休日に充てるのは「代休」と言い、この場合には割増賃金が発生することに注意が必要です。
【参考】管理職の労働時間・休日について/埼玉県
【参考】しっかりマスター労働基準法/厚生労働省
割増賃金が発生する場合の計算方法
休日出勤の割増賃金が発生する場合、その計算方法は労働基準法に基づいて行われます。通常、休日労働の割増賃金率は35%以上です。
たとえば、時給1,500円の従業員が休日に8時間勤務した場合、通常の賃金12,000円に加えて、割増分4,200円(12,000円×35%)が支払われ、合計16,200円となります。また、深夜労働(22時から翌5時まで)と重なる場合は、さらに25%の割増が加算されます。正確な計算には、個々の労働条件や会社の規定を確認することが重要です。企業として賃金コストを重視されるのであれば、休日出勤は割増賃金が発生する代休申請より、事前に振替日の計画を立ててもらう振替休日を推奨すべきでしょう。
【参考】法定労働時間と割増賃金について教えてください。/厚生労働省
まとめ
休日出勤は会社の成長に必要な一方、コンプライアンスにも関わる問題です。休日出勤を依頼する際は、従業員の権利と法律を理解し、適切な対応をしましょう。従業員の健康と生活を保ちつつ、休日出勤を依頼することが重要です。労使双方が休日出勤について正しく理解したうえで実施することが望ましいでしょう。
*UnderhilStudio / shutterstock