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TOP > 記事一覧 > 経営・財務 > 中小企業がターゲットに…実際にあった契約がらみの「詐欺まがい商法」と対処法【弁護士が解説】
中小企業を狙った詐欺まがい商法への対応

中小企業がターゲットに…実際にあった契約がらみの「詐欺まがい商法」と対処法【弁護士が解説】

2021.07.28

詐欺まがいの商法は、世間にあふれています。消費者保護の法律が充実してきている中、実は詐欺師たちはターゲットを、中小企業に移してきていると耳にすることも。

本記事では弁護士の筆者が、実際に複数の中小企業の方から相談うけた詐欺まがいの商法をその対処法とともにお伝えします。

解約フォーマットはどこ?解約させない巧妙な手法

これから紹介するトラブルは、筆者の事務所で3つの異なる企業の方から相談を受けた内容になります。

求人広告を出すことになった際に、業者から”従業員募集広告を3ヶ月間無料で掲載します”と言われたそうです。その業者によると、「3ヶ月の無料期間が終わった時点で効果に納得いかなかければ、解約のフォーマットに記載して提出することですぐに解約できる」とのこと。役に立たないなら解約すればよいだけですから、特にリスクは少ないはず……。いずれの企業も、そう考えて契約をしてしまったのです。

ところが、案の定、3ヶ月経っても全く広告の効果が出ません。そこで、解約を希望する旨を当該業者に伝えると、フォーマットに記載してくれないと解約できないと言われるのだそう。問題はそのフォーマットなるものがどこにあるのかわからないとのこと。その業者にフォーマットを送るように依頼しても無視されます。

そうこうしているうちに時間が過ぎて、「もう解約はできない」とその業者から通知が来ます。そして、相当高額な代金を請求されるという手口です。

無視していると大変な事態にも…

詐欺まがい業者は、何度もしつこく請求をし、内容証明郵便なども送ってきます。気の弱い経営者や、面倒ごとが嫌な人など、この段階で支払ってしまう人も出てきているようです。

これらの支払いに応じないと、最終的には支払督促命令というものを裁判所を通じて送ってきます。これが来ても無視をしていると、今度は相手方の主張が裁判所によって認められてしまうことになります。詐欺まがい業者は、裁判所のお墨付きのもと、強制執行までできる権利を取得してしまうのです。ひとたびそのようになってしまうと、それを覆すためには非常に大変な労力が必要になります。

このような悪質な商法に引っかかってしまった経営者のために、法的に妥当な対応について説明します。

どのように対応すれば良いのか?

悪徳業者からの請求が来たとき、無視するというのは正しい判断です。しかし、裁判所から支払督促の通知が来たり、裁判所からの書類があったときには、無視し続けるわけにはいきません。

この場合には、裁判所に対して、相手の主張は認められないということで”異議”がある旨を通知する必要があります。

多くの事案で、異議まで出しておけば、悪徳業者もそれ以上は対応などしてきません。このことは、多くの類似事案について情報交換している弁護士達の共通認識となっています。

何回も請求を繰り返して被害を受けた企業が機械的に”無視”していくように仕向け、”無視”し続けると最終的に請求が確定してしまうような巧妙な手法。相手もかなり考えた手法を取ってきているので、引っかからないように注意が必要となります。

法律上保護のない中小企業がターゲットに

実はこのような悪質な商法は、かなり広く行われています。弁護士会の中でも問題視され、各弁護士が情報を提供しているので、弁護士達の間ではかなりの情報が共有されています。

これが詐欺まがいの商法だということは間違いありません。しかしながら、明確に詐欺だと言えるかというと微妙な事案です。だからこそ、法的対応が難しいともいえます。

また、このような怪しい商売は、消費者相手ではよく見かけられました。そこで、消費者保護法をはじめ様々な法律が制定されて、詐欺まがいの商法から消費者を守る仕組みができています。

もし似たようなことが消費者に対して行われた場合には、このような契約は無効だと簡単に結論付けられます。しかしながら、中小企業などの事業者は、消費者と違い法律上保護されていません。

そうなると、原則として契約書の内容に沿った解釈により、どちらが正しいかが決められることになります。契約書に”一定のフォーマットに従った解約通知が必要”と記されていたら、それが当事者間でのルールになります。詐欺まがいではあるけれども、法的に全く無効と言えるかは難しいところがあります。だからこのような業者が、ビジネスを続けてきているわけですね。

詐欺被害にあわないために

実際にあった詐欺まがい商法と被害にあった際の対応について説明してきました。しかしそもそも、このような詐欺事案に最初から引っかからないようにするのが一番です。

詐欺事案を持ち掛けてくる会社には特徴があります。まず、会社名が有名企業にとても似ているということです。うっかりしていると、有名な会社そのものか、少なくともその関連企業ではないかと誤解してしまいます。有名企業なら詐欺まがいのことなどしないだろうと信頼してしまうわけです。

また、全くリスクがなく、一見おいしい話のように持ちけてくるのも詐欺まがい商法の特徴です。世の中そんなにうまい話はないと注意することも必要でしょう。

これまでこのような詐欺事案について経験のない経営者にとって、いきなり自分たちだけで対応するのはかなり大変かもしれません。おかしいかもと思ったら、予め弁護士など専門家への相談することも、考えてよいかもしれません。

*プラナ / PIXTA(ピクスタ)