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離職率が高い会社の特徴と離職率を下げる方法

離職率が高い企業の特徴とは?計算方法と離職率を下げる対策をまとめて解説

2021.12.01

終身雇用の時代が終わり、働き方改革も叫ばれる中で、一つの企業に留まり続けることや一つの会社で与えられた仕事だけで生きていくことがスタンダードな考え方ではなくなりました。転職を繰り返す人や副業をする人も増えています。しかし、労働力の流動性が高くなると、経営者にとっては企業の戦力となるよう育ててきた貴重な人材を失う可能性が高くなり、教育という投資が大きな損失になってしまうリスクもあります。

そこでこの記事では、離職率が高い企業の特徴や、離職率低下のために取り組むべきことについてまとめて紹介します。

離職率とは?

実は“離職”という言葉も、離職率の計算方法も、明確に法律で定義はされていません。一般的に離職率とは“一定期間を定め、その期間内にどれだけの社員が離職したか?”を示した率とされていますが、“一定期間”の基準がないので、その期間の設け方は企業によってさまざまです。

離職率の計算の例

求人票などでよく使われている離職率の例を見てみましょう。

(例1)「新卒社員が3年以内に離職した割合」で考える場合
従業員数440名の企業で2018年4月は30名の新卒を採用した。
しかし2020年3月末(3年以内)までに15名が退職した。
15名÷30名×100=50%

(例2)「年度初めから1年間の離職者数÷年初の従業員数×100」で考える場合
従業員数440名の企業で、年度初めまでに1年間で40名が退職した。従業員数が400名となった場合。※当期間に新たに採用した人数は除く。
40名÷400名×100=10%

上記で分かるように、どの期間で区切るかによって実は離職率の見え方が変わります。そのため、離職率は、一概に高い、低いといった感想で終えず、期間や退職した層に着目しながら分析に使うことをおすすめします。

目的別でみた離職率の計算方法

例えば、次のように整理すると、数字から“なぜ辞めてしまったのか”“どうすれば離職を防げたのか”考察していくことができます。

・新卒の3年以内の離職率が高い(特に最初1年以内に辞めてしまう)=最初の研修内容、メンター社員との相性などに問題があり?

これは1年経った時点と3年経った時点、両方で下記計算をしてみると見えてくるかと思います。
離職率=新卒の離職人数÷新卒の従業員数×100

・エース社員の離職率が高い=面接時に伝えた内容と業務内容にギャップが生まれていないか?給料に不満?

これは年度別(毎年)の離職率を出した後に、離職者の内訳の表を作ると見える化しやすいでしょう。

【もっと詳しく】なぜ辞める?離職率の計算方法と人材流出を防ぐ「リテンション施策」とは

離職率が高い企業の特徴

多くの企業では退職者に理由を聞くかと思いますが、ネガティブな理由については口を閉ざす人が多いのが実態です。転職された企業側が把握している課題と、転職希望者の理由には乖離がある場合が多いです。表に出ない退職者の本音にスポットを当て、人材流出が高い企業の特徴を抽出します。

1:人間関係が悪い

人間関係の悪化は、退職理由の最も多い理由の1つです。一般的な企業では1日に8時間ほど職場で過ごします。リモートワークが主流となったといっても、仕事を共にする人間の影響はとても大きいです。

人間関係が理由での退職が多い企業には、“風通しが悪い”、“社員の愚痴を言う人が多い”、“部署間の対立がある”などの特徴が挙げられます。

さらに、見過ごせないのが、“マネジメント層との関係”です。単なる人間関係より、自分の評価決定者である上司への不満は退職意向へつながりやすいです。大手企業であれば人事異動で解消できるかもしれませんが、中小企業では上司への不満を解消するには退職という道しか残されていないこともあるでしょう。

2:労働条件が不満

労働条件の不満がある社員が、その改善を求めて退職をするというケースも多く耳にします。労働条件とは給与水準や労働環境のみを指すわけではありません。むしろ給与水準などはあらかじめ提示されているため、理解したうえで働いているはずです。

ここでのポイントは人事制度の“運用面”です。“給与が年功序列で成果に報酬があっていない”、“評価基準が不透明”、“フィードバックがない”などが人材流出しがちな企業の特徴です。

3:将来性が感じられない

将来性が感じられない環境を嫌う傾向は、若手層にとりわけ強いです。将来性は“企業の将来性”と“社員個人の将来性”を指します。

企業の将来性は、現在の業績だけを意味しているわけではありません。むしろ業績に対しての“姿勢”がチェックされています。業績が好調だったとしても、守りの姿勢が強すぎると将来性が感じられないと思われる場合もあります。また、業績が不調な場合も、今までのやり方に固執し現状打破する姿勢がないと、会社を見限る可能性が高いです。

社員個人の将来性は“個人の成長”と置き換えると理解しやすいでしょう。“上司の古いやり方を押し付けられる”、“個々人が勝手に動いていて組織知がない”など、会社にいてスキルアップが感じられないと、若手層は時間を無駄にしている感覚になり、もっと腕が磨ける環境を求めるようになります。

4:事業の収益性が低い

会社が儲かっていないと、どうしても給与が低くなります。業界ごとに給与水準があるので、職業によって給与水準はある程度決まります。

そのような中でも、業界内で相対的に低い給与を払っている会社は離職率が高くなる傾向にあります。他業種への転職となるとハードルが高いですが、同じ業界内での転職ならばハードルが低いため、自社の給与水準が業界平均よりも低いと、退職者が増えます。

また、法律を守るためには、法律を守るコストが必要です。会社が儲かっていないと、サービス残業など違法行為に手を染めざる得ない経営者もおり、法律を守りきれなくなることがあります。その会社の従業員はいつか自分が勤務している会社がおかしいことに気づき、その職場を去ることになります。

【もっと詳しく】人材流出が止まらない!社員が次々と辞めていく中小企業の3つの特徴と改善策

離職率低下のために取り組むべきこと

対策1:退職理由を聞く

現状を分析しなければ、正しい対策ができません。中小企業の場合、退職者に退職理由を聞くのは、社長自身が否定されたような気分になり、気持ちの良いものではないでしょう。

それでも退職理由を聞くことは、非常に重要です。退職理由を聞いたら「今後も勤務したかったが、実はハラスメントがあり退職を決断した」などの新事実が発覚することもあるためです。退職理由を聞くのが難しい場合、退職理由のヒアリングを代行してくれるサービスもあるので、検討してもよいでしょう。

対策2:コミュケーションが促進される仕組みを導入する

コミュケーションは人間関係の構築において重要です。しかし「明日からコミュニケーションを活性化させましょう!」と大号令を打っても、活性化することはないので、仕組みを作って活性化させましょう。

具体的には、上司と部下が一対一で面談する「1on1」、先輩と後輩を結びつける「メンター制度」、従業員同士で感謝を伝える「サンクスカード」などコミュニケーションを活性化させる方法がたくさんあります。自社にあった仕組みを導入し、会社が主導して“仕組みを作りコミュニケーションを活性化させる”ことです。

対策3:利益率を上げる工夫をする

事業会社にとって当たり前ではあるものの、離職率低下には会社が儲けていることが最も重要です。会社が儲かっていないと、「給与が低い」「法律を守れない」「福利厚生が少ない」「業務改善する時間が確保できない」「いつまでも生産性があがらない」という負のスパイラルから抜け出せません。

儲けるための方法論はたくさんあります。儲からない中小企業の特徴としては「自社商品(サービス)と価格が定まっていない」というものが多いと思います。自社の商品(サービス)と価格が定めることは「誰に何を売るのか」を明確化することです。裏を返せば「何を売らないのか」「誰に売らないのか」を明確化することだといえます。

中小企業の社長から「依頼された仕事はすべて受ける!」という言葉をよく聞きます。「依頼された仕事をすべて受ける!」というのは、すなわち不得意な仕事や儲からない仕事まで引き受けることになります。これは従業員にも負荷がかかり、会社の収益性も圧迫します。「依頼された仕事をすべて受ける!」は離職率の高い会社を作る悲劇の始まりなので、避けたほうがよいでしょう。

会社の儲けと離職率は表裏一体です。会社が儲かれば離職率は下がり、離職率が低い会社は儲かります。どちらか一方にとらわれず、離職率が高い本当の原因を考えて、離職率が低く生産性の高い会社を作りましょう。

【もっと詳しく】離職率の高い会社ができてしまう悲劇の始まりとは?

これからは「テレワーク」環境の整備も重要に

企業側では、今後も社員が安心して働くことができ、離職を選択しないための職場環境を整えていく義務があります。その中でも、今、最も力を入れるべきポイントは“テレワーク(リモートワーク)環境の整備”でしょう。

毎日出勤をするということが当たり前ではなくなった昨今では、時間や場所を問わず仕事を進めることのできる環境が必要不可欠になりつつあります。

在宅勤務やテレワークを進めている企業の中では「必要な仕事を効率良く進められるようになった」「無用な人間関係トラブルが減少した」などの声もみられます。その一方で「直接コミュニケーションが取れず寂しい」などの不満を持つ社員が存在することも事実です。

このような状況に対応するため、企業側では「いつでも・どこでも・安心して」コミュニケーションを取りながら仕事を進められる環境づくりを心がけなければなりません。オンライン方式も活用しながら、定期的な社員のストレスチェックや面談を行うことで、「今後もこの会社で頑張ろう」と考える社員を増やすことができるはずです。

【もっと詳しく】だから離職する!離職率を下げるためのすべき3つの工夫

 

離職者の多い会社の特徴や、人材の流出防止、離職率を下げるための対策についてご紹介しました。

人材流出は放置しておくと、退職者が退職者を呼ぶような“負の連鎖”まで事態は悪化してしまいます。離職率、面談から上がってきた声、社内アンケートなど定量、定性的な情報を総合的に把握していく必要があります。現在は、そういった社内の声を拾い上げて分析するフィードバックサービスや、社員のモチベーションを分析しマネジメントに活かすツールもあるので、適宜活用しながら有効なリテンション(=人材の流出防止、引き留め)施策を行ってください。

※この記事は『経営ノウハウの泉』の過去掲載記事をもとに作成しています。

*yu_photo、)xiangtao、Mills、Blue flash、Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)