登録

会員登録いただけると、

  • メールマガジンの受け取り
  • 相談の広場への投稿 等

会員限定のサービスが利用できます

登録(無料)を続ける
TOP > 記事一覧 > 総務・法務 > テレワークは続けるべき?テレワークガイドライン改定を踏まえた規程作成のポイント
テレワークガイドライン

テレワークは続けるべき?テレワークガイドライン改定を踏まえた規程作成のポイント

2022.01.11

コロナ禍で一気に広まったテレワーク。これを機会にテレワークを制度として取り入れたいと考えている企業もあれば、一時的な措置としてのみテレワークを実施している企業もあります。経営者の方のなかには、テレワークを続けるべきか悩んでいる方も多いでしょう。

テレワークに関する課題もさまざまあるなか、制度化を成功させるためには、テレワークの社内ルールを整備することがポイントとなります。

そこで本稿では弁護士の筆者が、2021年3月に施行された『改定テレワークガイドライン』を踏まえたテレワーク規程作成のポイントを解説します。

※最終更新:2022年1月

2021年3月「テレワークガイドライン」が改定

2021年3月、『情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン』(以下『旧テレワークガイドライン』)が改定され、『テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン』(以下『改定テレワークガイドライン』)として公表されました。

もともとコロナ禍の前から政府はテレワークの推進を図っており、主に次のようなメリットがあるとしていました。

(1)家事、育児、介護といった事情を抱える人材の獲得・定着
(2)自分の作業に集中できる時間を作ることによる生産性向上
(3)ワークライフバランスを重視する人材の獲得・定着

労働生産年齢人口が減少し、今後ますます人材獲得が困難となることが予想される中小企業にとっては、テレワークのような柔軟な働き方ができる仕組みを用意しておくことが重要となってくるでしょう。

「テレワーク」にはおおきく3種類

まず、一言で“テレワーク”といっても、大きく3種類があります。

(1)在宅勤務:社員の自宅で行う
(2)サテライトオフィス勤務:通常のオフィス以外に設けられたオフィスを利用して行う
(3)モバイル勤務:外出先のカフェ等で臨機応変に行う

コロナ禍では、不要不急の外出を控えることが要請されていたことから、在宅勤務が広がりましたが、今後は、通勤時間が削減でき、作業環境も整っているサテライトオフィス勤務の活用も増えてくるでしょう。

【こちらの記事も】テレワークで残業が減り個人の時間が増える!企業にもメリットがある理由

テレワークの課題

コロナ禍で急速にテレワークが広がる一方で、課題見えてきました。よく挙げられる課題としては、以下のような課題があります。

(1)仕事の状況や労働時間の把握・管理が難しい
(2)テレワークが可能な業務が限られている
(3)社員間のコミュニケーションが不足する

上記の他には、仕事の評価が難しいということや、人材育成が難しい等の運用上の課題が挙げられます。

今回は、主に(1)の課題に焦点をあてて、テレワーク規程作成のポイントを紹介しましょう。

改定テレワークガイドラインを踏まえたテレワーク規程作成のポイント

2021年3月『テレワークガイドライン』の改定は、コロナ禍でテレワークが急速に拡大する中で見えてきた課題の解消を図り、テレワークを定着させることを目的としています。

そのため、『改定テレワークガイドライン』では、『旧テレワークガイドライン』と比べて大幅に項目が追加されており、労務管理だけでなく人材育成や人事評価等のマネジメントの点についても指針を示しており、運用上も参考となる情報が記載されています。

法的に気を付ける必要がある労務管理面での『改定テレワークガイドライン』のポイントとしては、次の点が挙げられます。

(1)テレワークの可否についても均等・均衡待遇規定(いわゆる同一労働同一賃金)が適用されることを明確化
(2)自己申告による労働時間の把握管理を緩和
(3)中抜け時間の把握管理を緩和
(4)事業場外みなし労働時間制度の活用場面を明確化

以下では、改定テレワークガイドラインの内容を踏まえ、テレワーク規程を作成するポイントを解説します。

ポイント1:テレワークの目的を設定

まずは初めに重要なのは、テレワークの目的の設定です。例えば、人材の獲得・定着のために積極的に認めていくのであれば、対象者は広く設定し、労働時間制度にも裁量のある制度を設計することになります。

他方で、育児・介護と仕事の両立を目的とするならば、対象者は育児・介護の必要性のある者に限られ、労働時間制度も通常通りの労働時間制度とすることが考えられます。

このように、テレワークの目的は、具体的なテレワーク制度を設計するうえでの指針となりますので、まずは目的を明確にしておきましょう。

ポイント2:テレワーク対象者の決定

テレワーク対象者については、上記のようにテレワークの目的に応じて設定することができます。

ここでの注意点は、テレワークが可能か否かという点にも、『均等・均衡待遇規定』(いわゆる同一労働同一賃金)が適用されることです。『改定テレワークガイドライン』においても、この点が明記され、雇用形態“のみ”を理由にテレワーク対象者に相違を設けることは認められないとしています。

テレワーク対象者の選定を行うためには、具体的な業務内容の相違などから違いを設けるようにしましょう。

【こちら記事も】2021年4月施行!定年後再雇用者の「同一労働同一賃金」問題とは

ポイント3:労働時間の管理方法

普段タイムカードや視認によって労働時間の把握・管理を行っている会社では、テレワークの場合これらの方法を採ることができず、自己申告させる方法によって労働時間を把握・管理することとなります。

厚生労働省が2017年1月20日策定した『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずるべき措置に関するガイドライン』では、自己申告による場合には、申告された労働時間が正確なものであるか、実態調査を行い補正を行うこと等が求められています。

この点、『改定テレワークガイドライン』では、テレワークの場合においても、基本的にこの考え方に立ちつつ、申告された労働時間が実際の労働時間と違うことをメールの送信記録等により使用者が認識していない場合には、当該申告された労働時間に基づき割増賃金等を支払っていれば足りるとしています。

【こちらの記事も】思わぬ落とし穴も!? 義務化された「管理職の労働時間把握」罰則と勤怠管理法を解説

ポイント4:中抜け時間の取扱い

テレワークの目的にもよりますが、仮に育児・介護の必要のために一時的に仕事から離脱する“中抜け時間”が発生することがテレワークの特徴です。

このような中抜け時間については、『改定テレワークガイドライン』では、把握しても、把握せずに始業と終業の時刻のみを把握することとしてもいずれでもよいとしています。

ただし、中抜け時間を把握しない場合には、始業と終業の時刻の間の時間について、休憩時間を除き労働時間として取り扱う必要があります。つまり、中抜け時間も働いたこととして扱う必要があるということです。

他方で、中抜け時間を把握する場合には、中抜け時間を休憩時間として扱い、終業時刻を繰り下げるか、時間単位年次有給休暇として取り扱うこととなります。

これらの中抜け時間の取扱いについても、テレワーク規程で明記しておきましょう。

ポイント5:事業場外みなし労働時間制などの柔軟な労働時間制度の活用

労働時間制度とは、以下の表に挙げたような、フレックスタイムや変形労働時間制などの制度のことです。現行法上、テレワークに特別な労働時間制度はありませんので、以下の表の挙げた現行法における仕組みを活用していくこととなります。

テレワークを人材獲得・定着のために積極的に進めていく場合には、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度、フレックスタイム制度等、柔軟な労働時間制度を活用することが有効です。

また、『改定テレワークガイドライン』では、テレワークの場合でも、次の要件を満たすことで、事業場外みなし労働時間制*を活用することができるとしています。

(1)情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
(2)随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

なお、上記(1)の要件では、「通信機器が繋がっていると要件を満たさないのではないか」との誤解が広がっていました。そこで、改定テレワークガイドラインでは、通信が繋がっている場合であっても、社員がパソコンから任意に離れることができ、応答のタイミングに裁量が認められているような場合には、(1)の要件を満たす旨の例示を明確に示しました。

裁判例は、仕事の内容や報告の程度等を総合的に考慮して判断されていますが、裁量の有無がポイントとなる点は『改定テレワークガイドライン』と同様といえます。

事業場外みなし労働時間制度は、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度等と異なり、事業場外みなし労働時間制度は職種や収入による限定がなく、広く活用できるというメリットがありますので、活用を検討してみましょう。

*事業場外みなし労働時間制・・・労働者の事業場外労働について、使用者の労働時間に係る算定義務を免除し、その“特定の時間”を労働したとみなすことのできる制度。対象となるのは、労働者が業務の全部または一部を事業場外で従事し、使用者の指揮監督が及ばないために、当該業務に係る労働時間の算定が困難な業務。

できるところからテレワークを始めてみる

現状、新型コロナウイルス感染症の感染者数が減少していることから、一旦導入したテレワークを中止することを検討している企業も見られます。

テレワークを導入するといっても、業務内容によってテレワークが難しい業務もあり、必ず全ての社員に適用しなければならないわけではありません。

テレワークやめるか、続けるか、といった議論に終始するのではなく、まずは可能なところから始めてみるのはいかがでしょうか?

【あなたにおすすめ】企業の存続にかかわる?中小企業こそ「働き方改革」を進めるべき理由と残業削減以外の施策

【参考】
テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン』 / 厚生労働省

* kouta、Taka、kou、Kana Design Image / PIXTA(ピクスタ)