労働実務事例
[ 質問 ]
営業職を対象に、事業場外労働みなし制を適用しています。若手社員のうち2人がよい意味のライバル意識を持って、競い合っています。しかし、2人のうち1人は仕事の段取りが悪く、いつも遅くまで残っています。実情を考慮し、各人の「みなし労働時間」に差を設けるといった措置が必要でしょうか。
広島・U社
[ お答え ]
従業員が事業場外で働き、労働時間を算定し難いときは、労働時間の「みなし処理」が認められています(労基法第38条の2)。「所定労働時間働いたものとみなす」のが原則ですが、実情に応じて別様の定めをすることも可能で、この場合、「通常の状態でその業務を遂行するために客観的に必要とされる時間」を基準としてみなし労働時間数を定めます(昭63・1・1基発第1号)。
厚生労働省労働基準局編「労働基準法」では、「各日の状況や従事する労働者等によって実際に必要とされる時間には差異があるが、平均的にどの程度の時間が必要か」を考慮すると述べています。「労働者個々人に着目するのではなく、通常の労働者にとって平均的な労働時間をいう」(安西愈「採用から退職までの実務」)と解するのが、オーソドックスな立場といえるでしょう。しかし、「労働時間の管理・算定は平均人を問題とするのではなく、個々人の労働時間を問題とする以上、個々人ごとにみなすと本来は考えるべき」(外井浩志「実務解説労働基準法」)との指摘は傾聴に値します。
平均値と捉えれば、営業職2人の「個々人ごとの平均労働時間」の差は、捨象すべきという結論になります。「取扱い商品、担当地区等によって差異があれば、それぞれごとに時間数を定める」(厚生労働省労働基準局編「労働基準法」)ことになります。実務的にいえば、少なくとも同一セクション内では各人に適用するみなし労働時間を統一するほかないでしょう。個々人ごとに数値を設定すれば、同じ仕事をしていても、遅くまで働く労働者ほど、受け取る賃金額が高くなるという矛盾が生じます。
単一のみなし労働時間を適用するのなら、逆に、「個々人ごとの平均労働時間」に差異が生じないように、仕事の配分面で配慮する必要があります。一番分かりやすいのは、職務・職能資格の違いに関係なくみなし労働時間を同一とし、資格ごとに与える業務量を変える方法です。業務量の違いは、資格・評価を通じて賃金にフィード・バックされます。
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