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労働実務事例

提供:労働新聞社

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4月1日の基準日に在籍し退職予定でも法定日数の年休付与か

「労働新聞」「安全スタッフ」(2009年1月~12月掲載文)
法改正等で現在の正確な内容と異なる場合があります。

[ 質問 ]

 育児休業を取得していた女性が職場復帰してほどなく、一身上の都合により突然退職することになりました。これから退職予定日まで1カ月以上あるのですが、年休を消化する予定にしているようです。4月1日の年休付与日に在籍していた場合は、退職することが確実でも労基法で規定されている日数を与えなくてはならないのでしょうか。

栃木・M社

[ お答え ]

 年次有給休暇の発生要件は、労働者が6カ月間(6カ月経過後は1年ごと)継続勤務し、全労働日の8割以上出勤することです(労基法第39条)。
 この「8割出勤」を算定する際、計算式の分母となる出勤率の基礎となる全労働日の日数は、就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいいます。したがって、休日労働をしたとしても、その休日は全労働日には含まれません。
 また、①使用者の責に帰すべき事由による休業の日、②正当な同盟罷業その他正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日(昭33・2・13基発第90号)も、行政解釈上は全労働日に含まないものとしています。さらに、慶弔休暇を取った日なども、除いて計算することが望ましいと解されています。
 一方で分子となる出勤日については、業務上の傷病により休業した期間、産前産後の休業期間、そしてご質問にある育児介護休業を取得した期間は、出勤した日としてみなされます(労基法第39条第7項)。
 退職予定だからという理由で年休を与えなくてもよいという条文も見当たりませんから、8割出勤の条件さえ満たせば、当然に付与しなければなりません。年休付与の時期が4月1日であれば、労働者に対しては労基法で定める法定の年休を与えなければなりません。
 本来、年休権の行使については、会社側に事業の正常な運営を保持するために必要あるときは、労働者の意に反する場合においても年休を与える時季を変更することができる、いわゆる「時季変更権」があります。行政解釈において、1月1日を基準として年休を付与しており、その者が1月20日付で解雇される場合について、「解雇予定日を超えての時季変更は行えない」(昭49・1・11基収第5554号)としています。
 つまり、退職予定日を超えてまでは、これを行使する余地はありませんので、法律的には労働者の請求を認めなくてはならないという結論になります。会社の実情を従業員に伝え、3月末で退職してもらうよう理解を得ることしか方法はないと思われます。
 なお、労基法第119条により、労働者に対し年休を付与しない場合は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。



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