労働実務事例
[ 質問 ]
上司と意見が対立し、席を蹴って帰宅した社員がいます。その後も、言い争いの都度、職場離脱・無断欠勤するという状況が連続しました。当面、減給の制裁で対応したいのですが、欠勤分を控除すると、計算の元になる金額が小さくなります。通常の賃金1カ月分の10分の1まで減給可能と考えてよいのでしょうか。
長崎・C社
[ お答え ]
制裁には、懲戒解雇、降格、出勤停止、減給、譴責等の種類がありますが、労基法では減給に限って明文により具体的な上限を示しています(労基法第91条)。1事案については平均賃金の半額、複数事案については1賃金支払期ごとに賃金総額の10分の1が上限です。
職場離脱という場合、まず労務の提供がなかった時間に見合う賃金カットが可能です。それにプラスして、懲戒事由に該当すれば、労基法で定める範囲内で「労働者が受けるべき賃金(既に賃金債権が発生している賃金)」のなかから一定額を差し引くことができます。
1賃金支払期中に複数の事案が発生した場合、1事案につき平均賃金の半分を上限に減給額を加算していきますが、その総額は当該支払期における賃金総額の10分の1を超えることはできません。
しかし、1賃金支払期の総額は、時間外割増・精皆勤手当等の変動、欠勤控除等により、増減します。お尋ねのケースのように、1カ月内に早退(職場離脱)・欠勤が繰り返されれば、1カ月の賃金総額は小さくなります。この場合、10分の1の上限を計算するベースは、通常の労働時間を満勤したと仮定した賃金か、または増減後の賃金かという疑問が生じます。
行政解釈(昭25・9・8基収第1338号)では、「賃金総額が欠勤、遅刻等により僅少となった場合でも、現実に支払われる賃金総額の10分の1を超えてはならない趣旨である」と説明しています。逆にいえば、残業が続き、受取額が多くなった月は、減給制裁のボーダーラインも引き上げられるという結論になります。
職場離脱を事由として減給制裁を実施するのに、離脱の事実により減給の限度が低くなるのは不合理なようにもみえます。しかし、「10分の1の限度を超えて減給の制裁を行う必要が生じた場合には、その部分は次期に延ばす」措置が認められます(厚生労働省労働基準局編「労働基準法」)。賞与による清算も可能です(昭63・3・14基発第150号)。
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