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TOP > 記事一覧 > 給付金・補助金 > 大規模成長投資補助金の対象となる経費とは?中小企業の賃上げに向けた省力化を促進する補助金を解説
若い実業家とビジネスマンが質問を持つベクターイラスト

大規模成長投資補助金の対象となる経費とは?中小企業の賃上げに向けた省力化を促進する補助金を解説

中小企業などに対する支援事業のなかでも、令和6年3月6日に公募が開始された、工場などの拠点新設や大規模な設備投資に活用できる「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金(中堅・中小成長投資補助金)」が注目を集めています。

大規模成長投資補助金_1

【参考】中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金HP /TOPPAN株式会社 より作成

この補助金により、新規拠点の設立や設備投資などの費用のうち一部(上限50億円まで)をカバーすることができ、事業の拡大や企業の成長を促進することができるといったメリットがあります。

また、補助金は一度受給できれば返還する必要はありません。

それでは、大規模成長投資補助金が具体的にどのような補助金なのかを解説していきます。

大規模成長投資補助金とは

大規模成長投資補助金は、地域の雇用を支える中堅・中小企業が、持続的な賃上げを目的に、人手不足に対応するための省力化等による労働生産性の抜本的な向上と事業規模の拡大を図るために行う「拠点新設や大規模な設備投資」に対して、国が支援するものです。

大規模成長投資補助金に関する予算は、令和5年度(2023年度)補正予算案に1,000億円が盛り込まれ、令和8年までの予算を見込んだ国庫債務負担を含めると、総額3,000億円の規模となります。

内容について、もう少し詳しく見てみましょう。補助金の対象企業・補助額などの事業概要を下記の表にまとめました。

大規模成長投資補助金の概要

項目 内容
スケジュール 公募開始(1次公募):令和6年3月6日(水)
公募締切(1次公募):令和6年4月30日(火)17時
プレゼンテーション含む審査:5月中旬~6月中旬頃(予定)
採択発表:令和6年6月中旬頃(予定)
補助事業期間 最長 令和8年12月末まで
(※極力令和7年3月末までの投資計画)
補助対象者 中堅・中小企業
(常時使用する従業員数が2,000人以下の会社等)
※単体ベース
補助上限 50億円(補助率1/3以内)
補助事業の要件 ①投資額
10億円以上
(専門家経費・外注費を除く補助対象経費分)
②賃上げ
補助事業の終了後3年間の、対象事業に関わる従業員など1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が、事業実施場所の都道府県における直近5年間の最低賃金の年平均上昇率以上

【参考】中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金公募要領公募要領/中堅・中小成長投資補助金事務局 より作成

補足:補助対象者について

それぞれもう少し詳しく見ると、補助対象は、「日本国内に本社があり、日本国内に投資する」従業員数2,000人以下の企業・個人などが対象です。会社・個人以外でも、政策目的に沿った収益事業を行う法人(企業組合・協業組合・商工組合・一般社団法人・社会福祉法人・NPO法人など)は補助対象者となります。

ただし、発行済株式数の総数または出資金額のうち一定以上大企業が所有していなどの企業は「みなし大企業」といわれ、大企業と同じとみなされるため、対象外となります。

また、同一の公募において、同一の事業者は1件のみ申請が可能です。たとえば、親会社と子会社は同一法人とみなされ、どちらか1社のみでの申請しか認められません。

単体では以上のようなルールがありますが、申請は単体の企業だけでなく、数社で申請する、共同申請(コンソーシアム)も認められています。ただし、この場合にも満たさなければならない条件があり、条件は以下のとおりとなります。

数社で申請する共同申請(コンソーシアム)の申請条件とは

① 参加者の中で投資額5億円以上(専門家経費・外注費を除く補助対象経費分)の中堅・中小企業を少なくとも1者以上含むこと(10者以下)
② 連携による一体的な大規模投資を行い、単独より高い労働生産性向上・規模拡大を通じた賃上げを実現する連携計画を策定していること
③ 参加者が賃上げの要件を満たしていること

【参考】中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金公募要領公募要領/中堅・中小成長投資補助金事務局 より作成

補助の対象となる経費とは

次に、補助の対象となる経費にはどのようなものが当てはまるのかを見ていきましょう。

対象となる経費

区分 対象となる経費
(1)建物費 事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他成長投資計画の実施に不可欠と認められる建物の建設、増築、改修、中古建物取得に要する経費
※建物費等は、単価 100 万円(税抜き)以上のもの
(2)機械装置費 ①機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作、借用(補助事業期間分のみ)に要する経費
※機械装置等は、単価 100 万円(税抜き)以上のもの
※リース会社と共同申請が可能②上記と一体で行う、改良・修繕、据付け又は運搬に要する経費
(3)ソフトウェア費 ①専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用、クラウドサービス利用(補助事業期間分のみ)に要する経費
※ソフトウェア等は、単価 100 万円(税抜き)以上のもの②上記と一体で行う、改良・修繕に要する経費
(4)及び(5)の合計額は、(1)~(3)の合計額未満
(4)外注費 補助事業遂行のために必要な加工や設計、検査等の一部を外注(請負・委託)する場合の経費
(5)専門家経費 本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費

【参考】中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金公募要領公募要領/中堅・中小成長投資補助金事務局 より作成

リース会社と共同申請も可能

事業再構築補助金でも認められていた、リース会社との共同申請ができます。リース会社がリース料を減免することで、リース会社に補助金を出すという制度になっています。

一方、それぞれの区分の中でも補助対象外となる経費がありますので、注意が必要です。対象とならない経費について、以下で説明します。

対象とならない経費

区分 対象とならない経費
(1)建物費 ・土地代
・構築物(物(門、塀、フェンス、広告塔等)
・撤去・解体費用
(2)機械装置費 ・「構築物」、「船舶」、「航空機」、「車両及び運搬具」に係る経費
・補助対象外設備に関する経費(据付け、運搬等)
(3)ソフトウェア費 ・自社の他事業と共有する場合
・パソコン・タブレット端末・スマートフォンなどの本体費用
(4)外注費 ・応募申請時の成長投資計画の作成に要する経費
・外注先が機械装置等の設備やシステム等を購入する費用
・外部に販売・レンタルするための量産品の加工を外注する費用
・事業者が行うべき手続きの代行
(5)専門家経費 ・専門家経費支出対象者には、外注費を併せて支出することはできない

【参考】中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金公募要領公募要領 / 中堅・中小成長投資補助金事務局 より作成

補足:そのほか補助の対象とならない経費

これらのほかにも、汎用的で通常の業務にも使えるような経費は補助対象外です。たとえば以下のような場合です。

  • 事務所等にかかる家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費
  • 電話代、インターネット利用料金等の通信費
  • 自動車等車両など

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補助金の申請書を記載するにあたって注意したいポイント

2つの申請要件に当てはまるかをチェック

この補助金は、経費のほかにも注意する点があります。上記の概要においても記載しましたが、申請要件が以下2件あることです。

  1. 投資規模が10憶円以上であるということ
  2. 事業終了後3年間の持続的な賃上げが必要である

具体的には、補助事業に関わる従業員及び役員の一人当たりの給与支給総額の年平均上昇率が、補助事業実施の都道府県における直近5年間の最低賃金の年平均上昇率以上(下の表参照)となる必要があります。

 

給与支給総額の確認には、法人は、補助事業に関わる従業員分の賃金台帳で判断されます。未達の場合は補助金を返還する必要がありますので、ご注意ください。

補助金は、申請すればもらえるものではなく、計画について審査され、より点数が高いものが選ばれます。そのため、申請する審査についてもよく調べておく必要があります。

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補助金の審査内容と事前に確認しておきたいこと

審査で重要視されるポイント

事務局による審査は、一次審査として「書類審査」が行われ、一次審査を通過した申請について「プレゼンテーション審査」が行われます。

採択にあたっては、以下の5つの点を中心に審査が行われます。投資額や賃上げ率といった数値的なもののほか、自社の外部・内部環境の状況をきちんと把握したうえで長期成長ビジョンが具体化された事業内容になっているか、どのような成長につながるかなどといったものが見られます。

  1. 経営力
  2. 先進性・成長性
  3. 地域への波及効果
  4. 大規模投資・費用対効果
  5. 実現可能性

申請前に確認しておきたいこと

gBizIDプライムアカウントの取得

申請は電子申請で行われ、そのためには、「gBizIDプライムアカウント」の取得が必要です。発行までに2週間程度かかりますので、余裕をもって取得手続きを行っておきましょう。

取得手続きは『gBizID』の公式ホームページにて行うことができます。また、そのほかgBizIDでできる電子申請について解説した記事がございますので、よろしければ以下を参考にしてください。
【参考】【社会保険手続きも】もう役所に行かなくてOK!「gBizID」でできる電子申請を徹底解説

補助金は後払い

どの補助金も同じですが、補助金は後払いです。補助事業実施期間内に事業を実施し、お金を支払い終わってから、証憑書類を提出し、認められてようやく入金となります。

要件として10億円以上の投資規模が必須で、多くの自己負担が必要です。そのため、申請にあたっては、資金調達を含めた入念な計画を立てましょう。

提出書類

中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金公募要領』に定められた書類を提出する必要があります。

成長投資計画書が35ページ以内で、内容も審査項目に合ったものを記載する必要があります。また、ローカルベンチマーク(経済産業省が提供している経営状況を把握するツール)の提出が必須となっており、ほかの補助金よりも準備に時間を要すると考えられますので、早めに準備を行っていきましょう。

成長投資計画書について、書類の形式の指定はありません。ただ。作成例として公募要領に掲載されている成長投資計画書がパワーポイントでつくられている点と、事務局によって行われる二次審査がプレゼンテーション審査である点から、成長投資計画書はあらあかじめパワーポイントで作成するとよいでしょう。

加点項目

地域への波及効果というところから、下記の2つのサイトにあてはまる事業者は加点を受けられます。

  1. 地域未来けん引企業
  2. パートナーシップ構築宣言

さいごに

採択されたあとの注意点となりますが、交付決定より前に契約(発注)した経費は、補助対象になりません。必ず採択後、交付決定が下りてから発注しましょう。

また、大規模成長投資補助金の事業目的にありますように、「地方において持続的な賃上げを実現すること」にポイントが置かれています。

自社の長期成長計画をもとに、補助金の趣旨と合致しつつ、投資したい時期と合った補助金かどうか一度検討してみてはいかがでしょうか。

*Barks, hidamarineko, ori1515, RURI BYAKU / shutterstock

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