労働実務事例
[ 質問 ]
従業員本人が家族手当の申請を怠っていたため、2カ月遅れで昇給を実施しました。申請漏れの原因は、ここ数カ月ほど本人業務が非常に忙しかったためで、残業代も多額に上ります。仮に随時改定に該当する場合、2カ月前に昇給したとみなして、手続きを採るのでしょうか。
静岡・B社
[ お答え ]
固定的賃金に大幅な変動があった場合、従前の標準報酬月額をそのまま用いるのは不都合です。このため、固定的賃金の変動後3カ月連続して賃金支払基礎日数が17日以上あり、かつ3カ月の報酬額の平均と従前の標準報酬月額に2等級以上の差が出ることを条件に、随時改定する仕組みが設けられています。
家族手当の増額も、固定的賃金の変動に該当します。しかし、一般的に家族手当はそれほど高額ではなく、配偶者手当でも平均が1万3000円程度、子どもは5000円程度です(平成18年関西経営者協会「標準勤続者賃金と諸手当調査」)。
ですから、それだけで随時改定の要件を満たすとは考えられませんが、残業代などの変動により随時改定に該当する可能性を否定できません。ですから、チェックが必要になります。
本人が残業に追いまくられて申請を忘れていた結果、本来なら2カ月前に昇給すべきところ、遅れて手続きが実施されたということです。形式上、2カ月前に遡って昇給を実施したという場合でも、2カ月前を変動月とみなし、随時改定のチェックを実施するわけではありません。
健保では、実際に昇給額が支払われた月を、変動月として処理します。ですから、今月以降、3カ月の賃金支払状況をみて、随時改定の要否を決定します。
2カ月前に現実に昇給していれば、残業代の影響で、随時改定が必要という結論になったかもしれません。しかし、昇給月が遅れたら、その月を基準にチェックを実施します。お尋ねのケースでは、残業のピークが過ぎ、今後、残業代の支払が減れば、随時改定に該当しない可能性もあります。
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