労働実務事例
[ 質問 ]
業務上の災害のときは、障害年金が6年間支給停止されるという説明を目にしました。労災保険の場合、障害等級は1級から14級まであり、1級から7級は年金、8級から14級が一時金となっていますが、たとえ14級程度の軽い障害でも、障害厚生年金・基礎年金に影響が及ぶのでしょうか。
埼玉・D社
[ お答え ]
障害厚生年金・基礎年金は、初診日要件・被保険者要件を満たす被保険者が障害等級に該当する障害の状態にある場合に支給されます。
障害の事由に制限はなく、業務上の障害でも給付の対象になります。
しかし、労災保険による障害補償給付と社会保険(厚生年金・国民年金)による給付が両方満額で支給されるのは、セーフティ・ネットの重複で不合理です。
このため、調整規定が設けられていますが、給付形態が年金同士の場合、社会保険が優先します。具体的には、障害厚生年金・国民年金が満額支給され、障害補償給付が一定割合で減額されます。
お尋ねにある障害年金の6年支給停止とはこれとは別の規定で、厚年法第54条、国民年金法第36条では、「(障害厚生・基礎年金)の受給権者が当該傷病による障害について、労働基準法の規定による障害補償を受けることができるときは、6年間、その支給を停止することができる」と定めています。
労基法第77条では、障害等級1~14級に該当する障害が存するときは障害補償を行うよう義務付けていますが、労基法で定める障害補償はすべて一時金で、年金はありません。しかし、労基法第82条に、「使用者は、支払能力のあることを証明し、補償を受けるべき者の同意を得た場合においては、6年にわたり毎年補償することができる」旨の規定を置いています(分割補償)。
これを受ける形で、障害厚生年金・基礎年金を支給停止する条文が設けられているのです。
ただし、労基法第84条では、「災害補償の事由についてこの法律の災害補償に相当する給付が行われるべきものである場合には、使用者は補償の責を免れる」とあり、実務的には、ほとんど労災給付が行われ、労基法の障害補償規定の出番はありません。
労災保険から給付が出れば、業務上の災害による障害が障害等級の1~14級のいずれに該当するにせよ、厚年法第54条、国民年金法第36条は適用されません。
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