労働実務事例
[ 質問 ]
高卒新入社員がケガをし、悪くすると障害が残るおそれがあります。厚生年金の被保険者ですから障害厚生年金を受けられるはずですが、「20歳前の障害基礎年金」の規定とどういう関係になるのでしょうか。基礎年金だけは、20歳になるまで受け取れないのでしょうか。
秋田・G社
[ お答え ]
厚生年金の加入者がケガをして、障害が残れば障害厚生年金を受けられるのは常識です。障害の程度に合わせて、3段階の等級(1~3級)が設けられていて、等級に応じて支給される年金額が異なります。
一方、国民年金法では、「初診日において20歳未満であった者」を対象に、障害基礎年金(1~2級)に関する特例規定を設けています(第30条の4)。
一般に、疾病・負傷が発生した場合、すぐに障害基礎年金が支給されるわけではありません。症状の固定(ち癒)を待って、障害等級を決める必要があります。しかし、あまり長期にわたって認定を遅らせると、本人がこうむる不利益が大きいため、次のいずれか「早い日」を障害認定日とすると規定しています(国民年金法第30条)。
・障害がち癒した日
・初診日から1年6カ月を経過した日
ですから、疾病・ケガが生じた時点では20歳未満であっても、障害認定日にはすでに20歳を超えているケースもあり得ます。状況に応じ、20歳前の障害基礎年金については、年金の支給開始月が2とおりに分かれます。
① 障害認定日が20歳前のとき………………20歳到達日の属する月の翌月
② 障害認定日が20歳到達日以降のとき……原則どおり障害認定日の属する月の翌月
つまり、どちらに当てはまるにせよ20歳到達日の属する月以前には、障害基礎年金を受け取ることができません。 しかし、この規定が適用されるのは、20歳前で国民年金の被保険者でない人に限られます。障害基礎年金の受給要件の一つに、「初診日において被保険者であること、または被保険者であった者で日本国内に住所を有し、60歳以上65歳未満であること」が挙げられています。
20歳前で被保険者でない人は、この要件をクリアできないため、以前は障害基礎年金を受けられませんでした。この不合理をなくすために、国民年金法で特例を設けたのです。
厚生年金の被保険者は、同時に国民年金の第2号被保険者になります。「初診日において被保険者であること」という要件を満たすので、2級以上に該当すれば、20歳前であっても「障害認定日の属する月の翌月」から障害基礎年金(+障害厚生年金)を受給できます。
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