労働実務事例
[ 質問 ]
小売業の会社に勤務していますが、安全衛生業務などを担当することになりました。一般の健康診断に関して、実施からその後に行うべき事項についてご教示下さい。
千葉・O生
[ お答え ]
健康診断は、労働者が健康で働けるように、労働者の健康状態を把握し、適切に健康管理を行っていくために重要です。また、労働者の健康状態から職場の有害要因を発見し、その対策を進めるうえでも必要です。
屋内作業場で有機溶剤を取り扱う業務など有害な業務に従事する労働者を除き、常時使用する労働者に対して実施すべき健康診断は次のとおりです。
(1)事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければなりません(労働安全衛生法第66条第1項、労働安全衛生規則第43条)。
①既往歴および業務歴の調査、②自覚症状および他覚症状の有無の検査、③身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査、④胸部エックス線検査、⑤血圧の測定、⑥血色素量および赤血球数の検査、⑦GOT、GPTおよびγ-GTPの検査、⑧LDLコレステロール、HDLコレステロールおよび血清トリグリセライドの量の検査、⑨血糖検査、⑩尿中の糖および蛋白の有無の検査、⑪心電図検査
(2)事業者は、常時使用する労働者(深夜業を含む業務、著しく暑熱な場所における業務など一定の業務に従事する者を除く)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、前記(1)の項目(④胸部エックス線検査にあっては、④胸部エックス線検査および喀痰検査)について医師による健康診断を行わなければなりません(安衛法第66条第1項、安衛則第44条)。
(3)事業者は、深夜業を含む業務、著しく暑熱な場所における業務など一定の業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置換えの際および6カ月以内ごとに1回、定期に、前記(1)の項目(④胸部エックス線検査にあっては、1年以内ごとに1回)について医師による健康診断を行わなければなりません(安衛法第66条第1項、安衛則第45条、第13条第1項第2号)。
なお、前記(2)および(3)に係る検査項目については、③、④および⑥から⑨までおよび⑪の項目については、例えば、身長の検査にあっては20歳以上の者というように厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができます(安衛則第44条第3項、第45条第3項)。
健康診断を実施した後に事業者が実施すべき事項は、次のとおりです。
① 事業者は、前記(1)から(3)までの健康診断(次の②から④までにおいて同じ)の結果に基づき、健康診断個人票(様式第5号)を作成して、これを5年間保存しなければなりません(安衛法第66条の3、第103条第1項、安衛則第51条)。
② 事業者は、健康診断の結果に基づき、当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者の健康を保持するために必要な措置について、健康診断が行われた日から3カ月以内に、医師の意見を聴き、健康診断個人票に記載しなければなりません(安衛法第66条の4、安衛則第51条の2第1項)。また、事業者は、聴取した医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設または設備の設置または整備、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会または労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければなりません(安衛法第66条の5第1項)。
なお、当該措置について、厚生労働大臣は、「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」を公表しており、事業者は、医師の意見に基づいて、就業上の措置を決定する場合には、あらかじめ当該労働者の意見を聴き、十分な話合いを通じてその労働者の了解が得られるよう努めることが適当であるとされています。
③ 事業者は、健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければなりません(安衛法第66条の6、安衛則第51条の4)。
④ 事業者は、健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師または保健師による日常生活面での指導、健康管理に関する情報の提供などの保健指導を行うように努めなければなりません(安衛法第66条の7第1項)。
⑤ 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、前記(2)および(3)の定期の健康診断を行ったときは、遅滞なく、定期健康診断報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません(安衛則第52条)。
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