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労働実務事例

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退職時と引越し先の判断別だが、じん肺いつの管理区分で請求か

「労働新聞」「安全スタッフ」(2009年1月~12月掲載文)
法改正等で現在の正確な内容と異なる場合があります。

[ 質問 ]

 私の会社には粉じん作業があり、じん肺健康診断を実施していました。
 最近退職者の1人が、退職時には管理2であったのが、肺結核にかかり療養が必要となりました。そこで、労災保険を受給するため退職後に引越先の労働局で検査を受けたところ管理1となり、合併症として労災保険は受給できなくなりました。こんなときには以前の管理2として処理してもらうことはできないのでしょうか。

香川・L社

[ お答え ]

退職者の管理区分決定
 ご質問のようなことが生じたのは、おそらく退職者だったからではないでしょうか。じん肺法第15条第1項をみますと、「常時粉じん作業に従事する労働者又は常時粉じん作業に従事する労働者であった者は、いつでも、じん肺健康診断を受けて、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県労働局長にじん肺管理区分を決定すべきことを申請することができる」と規定されています。
 以上の規定を受けて、じん肺法施行規則第20条第1項は、じん肺法第15条第1項の規定による申請は、常時粉じん作業に従事する労働者であった者にあっては、その者の「住所」を管轄する都道府県労働局長に提出することによって行うものとすると、規定しています。
 おそらく、ご質問のあった労働者であった方は、退職後に引越された住所を管轄する都道府県労働局長と、在職されていた当時の就業場所を管轄していた都道府県労働局長が違っていたのでしょう。
 都道府県労働局長が違っていれば、管理区分の決定を事実上行っている地方じん肺診査医も当然違っているはずです。したがって、在職時の管理区分が管理2だったのが、退職後何年かしてから管理区分が管理1ということも、あながちあり得ないことではないかもしれません。
 しかし、それにしても管理2と管理1とは大きな違いがあります。すなわち、じん肺法第4条第2項に示されているじん肺管理区分の表をみますと、管理1は「じん肺の所見がないと認められるもの」です。つまり、じん肺については健常者であるということです。管理2は「エックス線写真の像が第1型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの」です。エックス線写真の像が第1型というのは、じん肺法第4条第1項の表によれば、「両肺野にじん肺による粒状影または不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの」です。
 以上によれば、管理1であっても、両肺野に「じん肺による」粒状影または不整形陰影が少数あるものは入っていることになります。
 また「じん肺による」著しくない程度の肺機能障害があっても管理1には含まれています。しかし、管理2からみれば著しく軽いといえます。そうしますと、治療方法がなく、悪化することはあっても軽快することはないはずのじん肺が、退職により軽快したのでしょうか。
 決定の変更
 では、管理2と決定されていた時代もあったのだから、退職後の住居地を管轄する都道府県労働局長の裁量で、管理1を以前と同じ管理2に変更してもらうことはできないものでしょうか。残念ながらそれはできないのです。どうしてかといいますと、管理区分の決定手続等について定めたじん肺法第13条第2項に、「都道府県労働局長は、前条の規定により、エックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他厚生労働省令で定める書面が提出されたときは、これらを基礎として、地方じん肺診査医の診断又は審査により、当該労働者についてじん肺管理区分の決定をするものとする」と、規定されているからです。
 厚生労働省労働基準局長通達は、以上の規定について「第2項の『地方じん肺診査医の診断または審査により』とは、都道府県労働基準局長(現在は都道府県労働局長)の決定が地方じん肺診査医の診断または審査の結果に拘束され、それと異なる内容の決定を行なうことはできない趣旨であること」(昭53・4・28基発第250条)と説明しています。
 したがって、退職後の住居地を管轄している都道府県労働局長であっても、じん肺法第13条第2項に規定する手続きにより管理区分決定を行った以上は、それを自由に変更することはできません。
 では、どうすればよいかといいますと、多少手続きなどが面倒ではありますが、じん肺法第18条に定めるところにより、行政不服審査法に基づいて不服の申立てを行うということになります。それでもなお希望が通らなかった場合には訴訟を提起することになります。



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