労働実務事例
「労働新聞」「安全スタッフ」(2009年1月~12月掲載文)
法改正等で現在の正確な内容と異なる場合があります。
[ 質問 ]
以前、パート社員から「私達には、なぜ退職金が出ないんですか」と突き上げられた経緯もあり、パート就業規則の整備が課題と認識していました。しかし、改正パート労働法で、雇入れ時に昇給・賞与・退職金の有無を文書明示するよう義務付けられたので、雇入通知書に「退職金なし」と記載すればトラブルを防止できると考えてよいのでしょうか。
長野・S社
[ お答え ]
お尋ねの状況を放置しておくと、「雇入れ時の約束」と「就業規則で定める労働条件」が一致しない(少なくとも、就業規則ではパートの退職金の有無が明確でない)という問題が残ります。
労働契約と就業規則の関係については、以前は労基法第93条が根拠条文でしたが、現在は労働契約法第12条に移されています。両者が異なる場合、「就業規則の基準に達しない労働契約は無効、その部分は就業規則で定める基準による」という形で処理されます。一方、労働契約法第7条では、「労働契約で就業規則と異なる合意をしていたときは、第12条に該当する場合を除き、労働契約優先」と定めています。第12条の「就業規則の基準に達しないとき」を除くのですから、就業規則と同等、またはそれを上回る労働契約は有効という結論になります。
改正パート労働法では雇入れ時に、労基法で定める契約締結時の文書明示事項のほかに、次の3種類の特定事項を明示する義務を課しています(第6条)。
① 昇給の有無
② 退職手当の有無
③ 賞与の有無
違反者には10万円以下の過料が課せられます。
しかし、特定事項を文書で明示したとしても、その内容が就業規則の基準に達しない限りは、労働契約法第12条の規定が効力を持ちます。
退職金支給に関するトラブルに巻き込まれないためには、やはりパート就業規則を整備し(あるいは本体の就業規則の中でパートの労働条件を明らかにし)、不支給ならその旨を明文化しておくべきです。
改正パート労働法では、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」を対象として、職務関連賃金以外の退職金も含め、差別的取扱いを禁止しています。しかし、それ以外のパートについては、パート指針(平19・厚生労働省告示第326号)で、「通常の労働者との均衡等を考慮して定めるよう努める」よう要請しているにとどまります。
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