労働実務事例
[ 質問 ]
平成20年7月から改正最低賃金法が施行され、産業別最低賃金が特定最低賃金に変わりました。特定最賃には、罰則が適用されないという話ですが、違反者には本当にペナルティーが科せられないのでしょうか。「民事的効力のみを有する」とは、どのような意味でしょうか。
新潟・S社
[ お答え ]
先に、「民事効」の説明を済ませておきましょう。改正最低賃金法第4条(第5条から移動)第2項では、「最低賃金額に達しない賃金を定めた場合、その部分は無効とし、最低賃金と同様の定めをしたものとみなす」と規定しています。
民法の一般原則では、契約が法律により無効とされる場合、全部を無効とします。しかし、最低賃金法では、労使双方が合意していても、最賃額未満の賃金しか支払われなかったときは、自動的に(強制的に)最賃額との差額支払いを使用者に義務付けています。
次に罰則の適用ですが、改正法では違反パターンを5種類定めています。
① 労基署等への申告者に対する不利益取扱いの禁止(新設、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)
② 最賃の不払い(50万円以下の罰金)
③ 周知義務違反(30万円以下の罰金)
④ 労基署等への未報告、虚偽報告(30万円以下の罰金)
⑤ 立入検査拒否等(30万円以下の罰金)
このうち、②と③のみについて、「地域別最賃・船員の特定最賃に限る」というカッコ書きがついています。つまり、一般の特定最賃については罰則が適用されません。
しかし、それ以外はカッコ書きがなく、たとえば特定最賃違反の申告者に対し不利益取扱いを行えば、罰則の対象になり得ます。
さらに、特定最賃の不払いについても、すべて罰則の適用が排除されるものではありません。改正最低賃金法第6条では、特定最賃と地域別最賃が競合する場合の処理基準を定めています。「特定最低賃金が適用される場合でも、地域別最低賃金額未満の賃金しか支払わなかった使用者については、不払い(50万円以下の罰金)として処罰することが可能」(平20・7・1基発第0701001号)という結論になります。
さらに、改正法に関する厚生労働省パンフレットでは、「特定最賃の不払いについては、労基法第24条の全額払違反の罰則(30万円以下の罰金)が適用される」と解説しています。
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