労働実務事例
[ 質問 ]
派遣労働者が業務上ケガ等をした場合、派遣先が責任を負うケースもあると聞きます。平成20年3月から労働契約法が施行され、安全配慮義務が明文化されました。それに伴い、派遣元・派遣先の責任分担に変更があるのでしょうか。
新潟・S社
[ お答え ]
派遣労働者は、派遣元(人材ビジネス会社)と雇用契約を結びますが、現場で使用する機械・設備等の設置・管理を担当するのは派遣先(製造派遣ならメーカー等)です。このため、派遣法では、派遣先に主要な安全確保措置の履行責任を課しています。具体的には、「派遣先の事業を行う者を、派遣労働者を使用する事業主とみなして、安衛法○条を適用する」といった読替え規定を置いています(第45条)。
一方、労働契約法では、労働者の安全確保に関して「使用者は、必要な配慮をするものとする」と規定しています(第5条)。行政解釈(平20・1・23基発第0123004号)でも、労働者が派遣就業する場合の扱いに触れていません。
しかし、同条の趣旨は、「労働者は使用者の供給する設備、器具等を用いて労働に従事するものであることから、使用者は当然に安全配慮義務を負うことを規定」(前掲行政解釈)した点にあります。この法理は判例の積み重ねにより確立したもので、労働契約法はそれを明文化したものですが、行政解釈では、次の2つの判例を参考に挙げています。
① 陸上自衛隊事件(最判昭50・2・25)
② 川義事件(最判昭59・4・10)
このうち、①では「安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、法律の付随義務として、信義則上負う義務として一般的に認められる」と述べています。
その後、「特別な社会的接触の関係」を認め、元請に安全配慮義務を課した判例(三菱重工神戸造船所難聴事件=最判平3・4・11)があり、派遣類似のケースで「事実上直接労働契約を締結したのと同様の社会的接触関係があった」として、受入会社の責任を認めた判例も出されています(三広梱包事件=浦和地判平5・5・28)。必ずしも、直接の雇用者と労働者の関係に限定せず、安全配慮義務の存在が肯定されています。
読替え規定により安衛法が課している措置義務に違反した場合、従来どおり、派遣先が安全配慮義務違反に問われることになります。
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