労働実務事例
[ 質問 ]
「2009年問題」への対応策の1つとして、派遣契約を出向契約に切り替える案が浮上しています。しかし、「偽装出向」とみなされると、法的な問題が生じると聞きます。偽装出向とは具体的にどんな形の契約形態を指すのでしょうか。
京都・J社
[ お答え ]
製造業務等で派遣可能期間3年が満了した後、厚生労働省は直接雇用、受入への切替を推奨しています(平20・9・26職発第0926001号)。しかし、それ以外にも、例えばお尋ねにあるように出向への切替等を提案する人材ビジネス会社もあるようです。
労働契約法に関する行政解釈(平20・1・23基発第0123004号)では、「在籍出向とは、出向元と出向を命じられた労働者との間の労働契約関係が終了することなく、出向を命じられた労働者が出向先に使用されて労働に従事すること」と定義しています。
労働者を送り出す会社と労働者の間、受け入れる会社と労働者の間、双方に雇用関係が生じるタイプの人材スキームは、労働者供給事業の一種とみなされます。労働者供給事業とは、「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、派遣を含まないもの」と規定されています(職業安定法第4条第6項)。
ただし、「供給契約とは契約の形式をいうものではなく、実態によって判断」するのが原則です(労働者供給事業業務取扱要領)。出向契約という名称で契約を結んでも、供給事業に該当します。
労働者供給事業は、労働組合が許可を受け無料で行うほかは禁止されています(職業安定法第44条、第45条)。しかし、「業として行わない」限り、違法性はありません。次のような目的で出向を実施している場合、社会通念上、業として行っていないと判断されます。
① 関係会社で雇用機会を確保するため
② 経営指導や技術指導のため
③ 人材開発の一環として
④ 企業グループ内の人事交流の一環として
「営利目的か否か」は、直接の判断基準ではありません(業務取扱要領)。
しかし、派遣契約を出向契約に切り替え、以前と同様に人材ビジネス会社にコミッションを落とす形でスキームを組めば、出向の目的は①~④のいずれにも該当せず、偽装出向とみなされる可能性が高いでしょう。
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